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Episode2 - E1


「いらっしゃいませ!貴方達もダイビングに挑戦するのかしら?」

「あぁ、うんそうだよ。ここから潜れるのかな?」

「そうね。……【潜水】を始めとした水中行動系スキルは持っていないようだけど、どうする?初心者用のチュートリアルコースから、中級者用タイムアタックコース、上級者から探索者用の敵性モブが出てくるトレジャーハントコースがあるけれど」

「トレジャーハントコースで」


外周部の一画。

【世界屈折空間】へと繋がっているような門が2つある海岸に訪れた私達は、そこの案内NPCの話を聞いていた。


「成程成程……じゃあ潜水用のガスマスク拡張パーツを人数分……いえ、そちらのお嬢さんは『紫煙人形』ね?じゃあ2人分レンタル出来るけれど」

「お、仕様を教えてもらっても?」

「良いわよ。と言ってもそこまで難しいものでもないわ。ガスマスク内のSTを使って酸素を作り出すだけのパーツだからね。値段が張るけれど、高ければ高いほど変換効率も良くなるわ」


NPCが見せてくれたのは、【SC製作機】のような拡張パーツ。

種類にして3つあり、性能が上がっていくにつれ小型となっているのが特徴だろうか。

……頑張れば自分でも自作出来そうだねぇ……後で調べよう。

ルプスに目配せしつつ、


「ふぅん……音桜ちゃん手持ちは大丈夫?」

「問題ありませんよ」

「おっけ、じゃあ1番良いので」

「了解!じゃあ値段はこれくらい!」

「あいよーぅ」


受け取るとともに、ガスマスクが光を放ち拡張パーツが装着される。

空きスロットがあるか心配だったものの、今回はレンタルという形だった為か、その辺りは問題無いようで。

しっかりと装着されているのを確認した後、私達はガスマスクを装着した。


「では注意点を。まず1度潜ったらここに戻ってくるか、HPが全損するか、チェックポイントを見つけるかの3つの内どれかを達成しないと陸には上がれないわ」

「チェックポイント?」

「えぇ。なんていったって広大な海だもの。ルルイエ側で設置したダンジョンでいうセーフティエリアや、自然発生した安全地帯内の事をそう呼んでいるわ。それらの中であれば、基本的にはここへと戻ってくることも出来るし、逆にここからチェックポイントへと移動する事も可能よ」


パッと見えるだけでも、目印になるようなものがない広い海。

だからこそ、海の中には無数のチェックポイントが存在しているらしい。

だが、ルルイエ側で設置したのは海面に近い浅い位置のみであり、それより下では何処に何があるのかは分からない。


「それに加え、ここに戻ってきたとしても敵性モブを引き連れた状態だった場合……ルルイエ側から全力で攻撃されるのでご注意を」

「まぁ、それはねぇ……仕方ないというよりは当たり前だよ」


そして、ここまで敵性モブを連れてくる事は出来ない。

MPKというよりは、外周部に危険を持ち込ませない為の措置だろう。

……言い方的に、海の中だったらそういう事が出来るって意味だろうしね。

宝探しは基本的には早い者勝ち。

海中での戦闘は敵性モブだけではなく、他の同じ目的で潜っているプレイヤーとも発生するのだ。

紫煙外装の能力によっては、その手の行動が得意なプレイヤーも居る事だろうし……警戒はしておいて損はない。


「以上で注意点は終了ね。では楽しいトレジャーハントを」


一礼され、他のプレイヤーの案内へと移っていくNPCに手を振りながら、早速私達は海へと向かう。

群青色の、広大な海。

透き通っており、浅い位置に居る小魚なんかも目視出来る程度には綺麗な海だ。

一歩踏み出していけば、冷たい水が私の足へと触れてくる。


「さて、行こうか。準備は大丈夫?」

「私は既に。お姉様は大丈夫ですか?」

「まぁ大丈夫だよ。紫煙はあんまり使えないけど……もう昇華と具現はガスマスクの中に入れてあるからね」


こちらへとおっかなびっくり近付いてくるルプスを見て少し頬が緩むのを感じつつ。

私は海の中へと入っていく。

やはり現実とは違うのか、ゴーグル類がなくとも目が海水によって潰れるような事もない。

……うわぁ、すっご。

浅い場所であるのにも関わらず、周囲には様々な色が溢れていた。

海上からは確認できなかった、原生生物らしきイソギンチャクのような生物や、大小様々な魚達。

これだけ見れば、ただの観光目的ならば満足出来ていただろう。しかしながら、私達の目的は彼らを見る事ではない。


「あ、あー。テステス。……うん、喋れるけど結構ガスマスク内のST減るね。通話に切り替えるか」

「ルプスちゃんはどうします?」

「私は問題ありませんよ。生体系素材で作られていますが、生物ではないので呼吸などは必要ありませんし」

「じゃあルプスにはガスマスクのSTが確保しやすい私が指示出す形で」


声に出さずとも会話可能なパーティ通話に切り替えた後。

私達はそれぞれお互いの武器を取り出し、使用感を確かめる。

私は手斧を、音桜は御札を。そしてルプスはと言えば……普段から私の模擬戦相手をしていた為に、使い慣れてしまったメウラ製作の数打ちの刀を1本。

自身の身体から漏れ出た酒気を液体へと変え、纏うようにしつつ。

私達は奥へ……より深い部分へと潜っていった。


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