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Episode20 - PP1


「いやまぁ、驚くべきはこっからが本来の目的なんだよねぇ。……ルプスー!」

「はい、そろそろでしょうか?」

「うん、そうだね。一応こっちの指輪に変えて召喚し直すのも出来るけど……しとく?」

「よろしくお願いします。今作っていた薬草酒の仕込みが終わっていませんので」

「あちゃ、それは悪い事をしたねぇ」


言って、私は一瞬ルプスの召喚を解除してから『四重者の指輪』を外し。

『狂道化師の指輪』を装備してから、改めてルプスを召喚し直した。

すると、だ。

今まで彼女が持っていなかったはずの、手提げ袋のようなものを持って私の目の前に出現したのだ。


「えっと、ルプス。それは?」

「……どうやら、生産区へのアクセスが許可された影響ですね。従者専用のインベントリになっているようです。容量自体は小さいですが……買い出しくらいならばこれでも十分でしょう」

「成程ね……拡張は?」

「出来そうです。ただ、その為には同じように袋か何かを用意して頂かなければならないかと」

「オーケィ、了解。ちょっと考えとく」


何やらサブクエストのようにタスクが増えてしまったものの。

改めて私は大本の目的である『紫煙人形』へと向き直る。

……『紫煙人形』は、これまで私がゲットしてきた素材を使って肉付けしていく。

大まかに分けて5つ。

頭、腕、胴、足、そして核。これらを設定してやれば、『紫煙人形』の肉付けは終わり、本格的に動かせるようになる……はずだ。

そして頭部に関しては丁度良く手に入ったものが1つある。


「本当はメウラくんへのお土産だったんだけど……仕方ない仕方ない。どうせだったらまた取りに行けばいいしね」


酒呑鬼の頭蓋骨だ。

『酒呑者』の頭蓋骨であり、これだけでも酒精に耐性の無い相手だったら酔いが回ってしまうのではないかと思う程、酒の匂いが強い骨。

鬼を討ちとった勲章ではあるのかもしれないが、使える時に使わないのはゲームプレイヤーではないだろう。それにこれしか手に入らないわけじゃあるまいし。

……他の所には……うん、やっぱり肉系の素材が使えるわけだ。

そしてそれ以外には肉を。鉱石類の素材も使えるようだったが、如何せん私はその手の素材をあまり数多く所有はしていない為に、今回は生物由来の素材を使って良く事にする。


「ま、こっちも全部基本的には『酒呑者』でいっか。ポゴ=ハンリーからは肉取れてないし」


品質が良く、今インベントリ内にあるものと考えると結局の所『酒呑者』の素材になってしまう。

ポゴ=ハンリーから肉類が落ちていたならば話が変わっていた可能性もあるものの、どちらにせよ中層のボスの肉だ。品質関係なく今と同じ事になっていた可能性はなくはない。

……さて、後は核だけか。

それぞれの素材を設定すると、いつの間にか『紫煙人形』は骨格標本のような見た目から、無機質なのっぺらぼうのようなマネキンへと変化していた。

しかしながら、まだ動くことはない。核である指輪を選択していないからだ。


「よし……やってみよう」


簡素なウィンドウから『四重者の指輪』を選択し、核とする。

すると、だ。

虚空から『四重者の指輪』が出現し、マネキンの胸の中心へと溶けるように入り込んでいく。

そうして全て中へと入ると共に、少し離れた位置で短い悲鳴とガラスが割れるような音が聞こえ。

マネキンは周囲の紫煙を纏いつつ、その姿形を変えていく。

そうして出来上がったのは、


「……おっと、こうなるのか」

「……ご主人様?」

「あ、あは……今回は私も知らなかったから許してほしいかなって」


恥部を紫煙で隠した、ルプスの姿だった。


【オンラインヘルプが追加されました】


こちらを睨みつけてくるルプスを制止しつつ、私はそのヘルプを開き素早く頭の中へと内容を叩きこんでいく。


「よし、内容把握!ちょっと待ってルプス!」


言って、私は少し視界が白黒に染まりつつも自身の装備欄を開く。

そこには今しがた出来上がったばかりであろう『紫煙人形』専用の装備欄も出来ており。

インベントリ内から、何かには使えるだろうとメウラに預けなかった以前の私の装備を全て取り出し装着させた。

すると、だ。

目の前の全裸だったルプスの身体が淡く光り、私のお古の装備が装着された状態で出現した。


「……いやまぁ、うん。まじで知らなかったんだって。ほらルプスだって何もする予定ないのにマネキンに服とか着せないじゃん?もっと機械的かなって思ってたんだって」

「はぁ……ワザとではないのが分かっているので許していますが。どちらにせよ、『紫煙人形』とやらは成功したんですか?」

「うん、大成功。これでルプスをダンジョンに連れていけるようになったわけだよ。ただちょっと分かっていない事もあるから、一緒に確認して行こうか」

「畏まりました……では先にドゥオとトレスを呼んで、向こうで散らばっているであろうガラスの破片などの片づけをお願いしても?」


そう言われ、私はすぐさま残る2人の従者を呼び出し、ルプスが行っていた作業の続き、そして後片付けをお願いした。

これまでは大量生産をする時などにしか呼んでいなかった2人だが、これからはより多くの頻度で呼ぶ事になるだろう。


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