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Episode19 - BR2


「えぇーっと。追加の能力と、なんか可能性が云々って言われてたよねぇ」


【過集中】は、【観察】などと同じ様にほぼ最初期から持っているスキルではあったものの。

その発動条件的にも、そこまで熟練度が稼げていなかったスキルでもある。

というか、ほぼパッシブのような形で発動している【観察】の方がおかしいのだ。

私はスキルの修得一覧を呼び出し、


「……おっと、もう違うなぁ」


いつもと違う表示がされている事に気が付いた。

というのも、だ。【過集中】だけが赤くハイライトされ目立つようになっているのだ。

流石にここまでされて、何もない……普段と同じ、熟練段階が上がっただけとは考えられない。

……まずは先に何が変わったのかは見ておかないとね。

だが、それを確かめるのは後だ。

重要なのは、【過集中】を使う上で使い勝手が変わっていないかどうかという点。

操作系スキルのように、手を触れずとも対象を操れるようになったりとスキルによっては大きく変わる点でもあるのだ。

ここを確かめておかないと後が怖い。


――――――――――

【過集中】

種別:汎用

段階:2

熟練度:3/100

制限:一定以上の集中レベル時のみ発動

効果:全ステータス上昇

   軽度の『視野狭窄』状態付与

   敵対対象1体に『攻撃集中』状態付与

――――――――――


「『攻撃集中』ぅ……?」


これまた聞いた事のないものが出てきた為、ネットの集合知掲示板を頼ってみると。

どうやら、それが付与された相手が居る場合、どんなに他に敵が居たとしても付与された相手しか狙う事が出来なくなるデバフらしい。

これだけならば、タンク職が使いたくなるバフでしかないのだが……これが付与されている間、受けるダメージがある程度増加し、反射神経系の反応も悪くなるとの事。

つまるところ、攻撃が当たりやすくなり脆くなる。なのに集中狙いされる、というデバフなのだ。


「……どっちかっていうと弱体化には近そうだなぁ、これ」


複数敵が居る時に【過集中】は発動しない。

というのも、発動する程度に1体相手に集中してしまっていたら、急な不意打ちなどに対応できなくなってしまうからだ。

仲間がいるならば任せる事も可能だろうが……私は基本的にはソロプレイヤー。

リスクは出来る限り減らしておきたい。


「で、こっからが本題っと……ふぅん?」


新たな可能性、とやらを確認する為に【過集中】の詳細を更に詳しく見ていくと。

私の目の前に新たに2つのウィンドウが出現した。


「スキルもそういう感じになっていく、と。成程ね」


そこに表示されていたのは、それぞれアイコンのようなモノだ。

1つは目のアイコン。その近くに鳥が飛んでいるのは何かの隠喩だろうか。

そしてもう1つは開いた本のアイコン。こちらには本の中に何かを書き込む羽根ペンがセットになって描かれている。

……紫煙外装の強化と似たような……っていうか、ほぼ同じだね、コレ。

脳に過るのは、これまで2回やってきた紫煙外装の強化時の選択。

こういう時、結局考えた所で答えが出ない事を知っている私はフィーリングで選ぶ事にした。


【可能性αが選択されました】

【【過集中】の新たなる可能性が開花していきます……】

【開花完了】

【名称が【過集中】から【紫煙の眼吹】へと変化しました】


「おぉう、名前が変わっちゃったよ」


予想はしていたものの、名称が変わるまでの変化となってしまうと中々思う所もある。

先程熟練段階については見たものの……流石に改めて確認した方が良いだろう。

……これ、元々の熟練度とかはどうなってるんだろう。

どういう経緯で【過集中】がこうなったかは分からないままではあるものの。

もしも、今まで【過集中】で稼いできた熟練度が全て消えてしまっているのであれば……少しばかり悲しい所がある。

元々のスキル自体はラーニングし直せばいいものの、やっとの事で追加能力を得るところまで行ったのだ。

出来ればそうなっていてほしくないと思いつつ……私は【紫煙の眼吹】の詳細を表示させた。


――――――――――

【紫煙の眼吹】

種別:特殊・開花

段階:1

熟練度:0/100

制限:一定以上の集中レベル時のみ発動

   周囲に一定量以上の紫煙が存在

効果:全ステータス上昇

   紫煙による追加行動状態付与

   攻撃時、一定確率で『疫病』付与

――――――――――


「いや強いな」


何度同じ感想をしたかは分からないものの、素直な感想として口から出たのがそれだった。

というのも、書いてある事が普通に強いのだ。

単純に【過集中】の時よりも倍率のあがったステータス強化に加え、どこまでの範囲かは分からないものの……紫煙による追加行動。恐らくは私の行動に追従する何かが発生するのだろうと思うものの……それだけでも十二分に使い勝手が良いとは思う。

そして最後に、デバフである『疫病』の付与だ。

『猛毒』、『出血』などのようなHPに持続的なダメージを与える類のデバフであり、放置しておくと重症化する可能性がある厄介なデバフ。

デメリットとしては、それが付与された相手が近くに居ると確率で自身も疾患する可能性があるぐらいのもので、上薬草の具現煙を良く使っている私にとってはあまり関係のないものだ。

……うん、十分良いね。

見れば、ラーニング可能スキルの中に【過集中】もある。

後でラーニングし直しておけば、戦闘中に集中するだけで2重のステータス強化が入るようになったと考えると……中々に私のステータスは壊れてしまったのかもしれない。


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