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Episode10 - D2


その後、1階層の探索は順調に進んだ。

というのも、三色道化の戦闘力自体は然程高くなかった為だ。

初見は流石に焦ったものの、結局は普通の敵性モブ。

急所である首や頭を斬り飛ばせばすぐに倒れてくれるし、何なら【隠蔽工作】によるステルスアクションも出来るために戦闘自体少なく進む事ができた。

そうして探索していく事暫し、


「おっけ、階段だ」


下へと繋がる階段を見つける事ができた為、そのまま降りていく。


--【四道化の地下室Hard】2層


そして辿り着いたのは、1階層とほぼ変わらない迷宮のような通路だった。

だが、明確に違う点も存在する。

それは、


「……怨念じゃんこれ」


空気中に見慣れた赤黒い靄が漂っているのだ。

それに加え、何処か腐ったような臭いも充満していた。

以前、ノーマルモードの2階層を探索した時は、子供の白骨死体を見つける事が出来たりと中々に闇の深いダンジョンだったのだが……どうやらハードモードになってそれらが表に出てきているらしい。

……道化師は……来てないかな。

HPバーの表示は近くには観えない。

だが、狩道化の能力を使っていた場合、観えないだけで居ないと判断する事は出来ない。


「【隠蔽工作】」


一応、探索用に【隠蔽工作】を発動させた後。

私はそのまま通路を進んでいくと、複数の扉を発見する事が出来た。

以前はこの扉の先に白骨死体やちょっとした素材があったのだが……今回の場合はそうであるとは限らない。

……一回は入っておくか。

生憎と、私の紫煙や酒気を操る能力では触覚が伴わない為に部屋の外からの探索は行えない。

音桜やメウラのように、自身が近付かずとも視界共有系のスキルで様子を伺えるスキルくらいは取っておくべきだろうか。


「……御開帳ぉ〜」


小さく呟きつつ、私は扉をゆっくりと開ける。

木の古い扉であるが故に、少しばかり音が立ってしまうものの。

出来る限り丁寧に開ける事で最小限の音に抑えつつ、中を覗いてみると。

……げっ。

そこには、1体の小さい白い人が居た。

否、人では無い。つい最近も相対した、白く、そして斃れない白骨死体がそこには立っていた。

遺跡のスケルトンとの違いは、装備を一切付けていない点だろうか。

代わりと言わんばかりに、身体の各所に怨念が纏わりついているのも印象的だ。


『カカカッ……』


ゆっくりと、出来るだけ音を立てずに扉を開けたからだろうか。

スケルトンはこちらに気が付く事はなく、部屋内で虚空を見つめ続けている。

……子供サイズ、ってことは……前にノーマルの方で見つけたのが動き始めた感じか。

追加の敵性モブの種類としては、私と相性がそれほど良くはない。

スケルトンの親玉のようなボスも倒してはいるものの、それとこれとは話が違うのだ。

物理的に倒せる相手ならば兎も角、特殊な方法を使わねば倒せない相手など相手にしたくない。


だがここに出現するスケルトンが、あの遺跡に出現したものと同じ特性を持っていると考えるのは早計だ。

あの遺跡は繋がっていた場所もそうだが、特殊な環境であった事には間違いない。

もしあの不死性が場の環境に左右されるものであるのならば……と、色々考えてみたものの。

結局の所、同じ様な手合いなのか気になって仕方がない為……酒気を適当に斧の形に変え、手首のスナップだけで投擲した。


『カカァッ!?』

「いやぁ、好奇心好奇心ってね!」


私に掛かっていた【隠蔽工作】が効果を失い、スケルトンがこちらを向いたものの。

その瞬間、私が投擲した斧が命中し、大きく身体を仰け反らせる。

HPバーは凡そ半分程削れ、身体を構成する幾つかの骨がその場に散らばっていくものの……倒れる様子も、修復されていく様子もない。

……やっぱり一度倒さないとかな。

扉を大きく開き、部屋の中へと跳び込みつつスケルトンに対しタックルを行う事で、思いっきり部屋内の壁へとぶつける。

それと同時、こちらの身体を掴もうとしてきたものの。

酒気を複数の小さなハンマーのような形へと変え、相手の身体を叩く事で弾き、砕き、再起不能へと追い込んでいく。


【キッズスケルトンを討伐しました】

【ドロップ:怨念の骨片×1】


「うーん、弱い」


周囲の紫煙、酒気を武具の形へと変え、バラバラになったスケルトンに近くに固めておいたものの。

そこから修復される事はなく、そのまま光の粒子となって消えていくのが見えた為にそれらを一度霧散させる。

これと言って注意点があるようにも、面倒な特性があるようにも見えず。

ハードモードに出てくる相手にしては中々に弱い部類ではないか、と思ってしまう程だった。

……何かしらの特殊能力持ち、だとは思うんだけどなぁ。

頭を捻らせても答えは出ない。

目に見える形で特殊能力を使っていなかったか、それとも私の攻撃力が高すぎて使う前に倒されてしまったか。どちらかだろうとは思うものの……調べるのは次出会った時で良いか、と部屋の外へと出ようとして、


「……は?」


気が付いた。

開け放たれた扉、そこから中の私の様子を伺うように子供サイズのスケルトンが何体も顔を覗かせている事に。


『カカ?』

『カカカ……』

『『『カカカカッ!!』』』

「ちょっと待てェ!」


瞬間、小さな部屋の中にスケルトン達がなだれ込む。

それと共に、私は周囲の紫煙と酒気をドーム状に形状を変え、即席のセーフティエリアを作る事で骨の雪崩から一時的に身の安全を得る事が出来た。

しかしそれも時間の問題だ。

既に部屋の内装は見えない程に、ドームの外には骨が集まって来ており……そのドームもドームで、骨の重さの所為か、所々に罅が入りかけていた。


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