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Episode8 - PP


「……で、何が解禁されたって?」


【SC製作機】を作ろうと作業台へとアクセスした際に流れたログ。

メインの目的が違った為にスルーしたものの、何が解禁されたのかは気になる為に調べてみると、


「……『紫煙人形』ぉ〜?」


また何か変な物が造れるようになっていた。

使用素材に特に特異な物はなく、今の手持ちでも造れる物ばかり。

この際だ、という事で必要素材を造って製作を開始してみると、


【製作には煙質の選択が必要です】

【使用煙質を選択してください】


「煙質を使うタイプかこれ」


変な事になっても困る為、【狼煙】を選択してみると。

特に止められる事もなく、『紫煙人形』なるものを造ることが出来た。

……なんか、人型のプラモデルみたいな形してるなぁこれ。

大きさは私と同じくらい……標準的な女性の身長と同程度だろうか。

メウラの使う紫煙外装の人形とは違い、今製作したこれには骨格しか存在していない。

まるで最近戦ったスケルトンのようだ。


【Tipsが追加されました】


「ふむ?」


『紫煙人形』を造ったからか、追加されたTipsを読んでいくと……私は思わずため息をついてしまう。

嘆息ではない。面白い物が出来てしまった事に対する喜びの息だ。


「オッケーオッケー、じゃあ少し弄っていくか」


『紫煙人形』の仕様は簡単だ。

これまで得てきた素材を使い、この骨格に肉を付け。

核となる物を埋め込む事で、戦闘時に共に戦い、支援してくれる存在を得る事が出来る。

使える素材は敵性モブからボスまで幅広く、当然使う素材の質が良ければ良い程に『紫煙人形』の戦闘能力は高くなる。

そして核はと言えば、


「作れはするけど……こっちも選択可能な訳だ」


『四重者の指輪』。

もはやお馴染みとなった、私の従者であるルプスを召喚する為の装備アイテムではあるものの。

『紫煙人形』の核としても設定出来るようだった。

だが、問題が1つ。

……これ、どう見ても消費型だよねぇ。戻ってこないのはちょっと辛いな。生産的な意味で。

ルプスが居なくとも、一応マイスペース内の生産行動は私1人で賄える。

紫煙や酒気の操作や、【擬似腕】を使う事で1人で数人分の労働力を確保出来る為だ。

だが、それは確保出来ると言うだけでやりたいわけではない。


戦闘中とは違い、より精密な操作を求められ、尚且つそれを複数違う作業でこなすと言うのは……中々に辛い物がある為だ。

幾ら【多重思考】による補助があるとしても、精神的な疲れまではケアしてくれないのだから。


「指輪も作れなくは無いけど……やっぱり質が良いのでやりたいよねぇ」


だが、今の私では既に上層のノーマルモードのMVP報酬は得る事ができない。

紫煙外装の等級が問題となってくるのだ。


「仕方ない。いくか……ハードモード」


まさか1番最初にハードモード攻略へと乗り出すダンジョンが【四道化の地下室】になるとは思わなかったが……それも流れという物だろう。

適当に準備を終わらせ、私はマイスペースを後にした。




--【世界屈折空間上層】


ハードモードに挑んだ事は実の所何度かある。

というのも、ハードモードのマノレコの素材を定期的に入手する為に【峡谷】には入っているのだ。

だからこそ、ハードモードの概要と言うのは大体ではあるが把握も出来ている。


まずまずとして、ハードモードでは既存の敵性モブ達が強化……というよりも。

本領発揮してくる、と言った方が正しい。

マノレコのように空を飛び、炎を吐くようになったり。

フュルのように、雷撃を放つようになったりと、ノーマルモードでの攻略方法はほぼ通用しなくなると考えたほうがいいだろう。


「ま、マノレコ達は中層モブくらいの強さになってたわけだし……影道化が怖いくらいかなぁ」


【四道化の地下室】に出現するモブで厄介だった記憶があるのは影道化だ。

時間と共にその数を増加させ、どれが本体なのか分からなくなっていく。

当然、今の私に範囲殲滅用の手札や、【心眼】などと言った必要な情報を得る事が出来るスキルを持っている為、それだけならばすぐに本体を打倒できるだろう。

問題は、その影道化がどのような能力を得たかだ。

……攻撃系の能力だけは持たないで欲しいなぁ。

延々と増えていく敵性モブが、それなりに強い攻撃能力を持ってしまったらただの地獄だ。

幾ら範囲殲滅が出来ると言っても、そんな相手と戦いたいとは思わない。


「……よし、覚悟決まった。行こう」


今回は事前に具現煙のみの使用。

昇華に関しては相手を見て、使用した方が良さそうならば使う程度にしておく予定だ。

最悪、杯形態の紫煙駆動を使う事で乗り切れば良い。

コストは使ってなんぼ、貯めておいても上限が決まっているのだから超過分は無駄になるだけなのだ。


一息。

少しだけ高鳴る胸の鼓動を抑えるようにしながら、私は【四道化の地下室】へと繋がる門へと近付いていった。


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