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Episode7 - R2


次いで気になったのは、


「瓢箪の破片か」


酒呑鬼の瓢箪片という名前の、陶器の破片のようなものだった。


――――――――――

酒呑鬼の瓢箪片

種別:素材

品質:B-

説明:酒呑鬼の持っていた瓢箪、その破片

   酒を無尽蔵に生み出す力を持っていたが、破片となった今は機能していない

――――――――――


説明文を読む限りは、今は特別な力がないただの破片なのだろう。

……もしかして、これ破片集めて瓢箪の形にすればまた機能するって事?

わざわざ『今は機能していない』と書かれているのだ。

既に私は自身の紫煙外装で似たような事が出来るものの、アレは杯形態限定の能力であり。

他の装備でそれが出来るならばそれに越した事はない。


「でも今回だけで破片は……3個。メウラくんや音桜ちゃんに手伝ってもらうにしても……この大きさ的に3回くらいは『酒呑者』倒さないとダメそうか……?」


問題は、1回の討伐報酬で手に入った破片がそこまで多くない点か。

私1人で何度も挑むのは良いが、確実に途中で飽きが生じるだろうし安定もしないだろう。

今回倒せたのも、相手が私としっかり近接戦闘を行ってくれたからだ。

前回のように酒の竜巻などを作られていたら……確実に同じことの焼きまわしだったに違いない。

……まぁ流石に行くけどね。有って損するものじゃないだろうし。

それに、今回の戦いで再度新しい戦闘スタイルを思いついた。

それに必要なスキルも足りているし、後は練度を積むだけではあるので丁度いいだろう。


「他は……特に、かな?骨系は粉にすれば煙草やら肥料に使えるだろうし、血は……ルプスに任せるかな」


討伐報酬についてはこんな所だろう。

丁度近くに来ていたルプスに素材類を渡した後、私は最後の……久方ぶりのMVP報酬に手を付ける事にした。


「えぇーっと……前回から考えると……MVP報酬自体は『人斬者』とか『切裂者』辺りが最後?それ以外はストーリーに関係なかったりそもそも取れてなかったりしたからなのかな」


MVP自体はそれなりに取っている……というか。

私のパーティ的に、私が取らなかったら色々と破綻してしまっている為、必然的にそうなってはいるのだが……それでも時折取れない事もある。

直近で言えば、スリーエスが臨時でパーティに入っている時とかだろう。

流石に戦闘特化型、それも単体性能特化ともなってくると、基本1体で出現するボス相手の貢献度争いは白旗を挙げるしかない。

……ま、ここら辺詰めていくと辛くなるだけだから、私は私のやりたいようにやるだけだけど。

楽しめればそれでいいのだ。

あまり深く考える必要も無いだろう。


「さて、今回のMVP報酬は……また指輪か」


実体化させてみると、液体をそのまま指輪の形にしたかのような美しいものだった。

これでボス系の指輪自体は5個目となるのだが……煙草燃焼用の指輪も含めると、片手では収まらなくなってしまった。

……指輪の効果を保ったまま、別の形に変えたり出来ないかな。

ネックレスのように出来たら嵩張らないし良いのだが……後で調べてみる事にしよう。


「綺麗……だけど、どことなくお酒の匂いがするな……やっぱりあのダンジョンの報酬はそういうのになってしまうのか……」


美しいのにも関わらず、酒の匂いがする。

ちょっとばかし勿体ないと思いつつも、詳細を覗いてみる事にした。


――――――――――

『酒呑者の指輪』

耐久:100/100

種別:指輪

品質:EX

効果:浄化系スキルの効果上昇

説明:『酒呑者』が身に着けていた指輪

   清められ、奉納された酒は、水よりも聖なるものに近しくなる

――――――――――


「あっちゃー……これ私じゃなくて音桜ちゃん向けだ」


酒と浄化については決して関係が無いわけではない。

それこそ、神酒なんかは神への捧げ物として古来から贈られてきたものであるし、それらに悪い気を祓う効果があるとされてきた。

そんな効果を持った指輪を鬼が持っているというのは中々に皮肉ではあるが……寧ろ、コレを着けていたからこそ、あの小さい祠だけで封印出来ていたのかもしれない。


「そう考えるとハードモードじゃこの指輪を着けてない『酒呑者』と戦う可能性もあるのか……やだなぁ」


未だ、上層のハードモードにすらしっかりと挑んでいない身ではあるが……流石に【酒気帯びる回廊】のハードモードは後回しにさせてもらおう。

下手に危ないと分かっている藪を突いて、蛇以上に危険なモノを出現させる意味もないのだから。


「ま、良いか……とりあえずこれで音桜ちゃんを誘う口実は出来たし、暫く瓢箪の破片集めに専念かな。外界は……一旦後回しで」


【SC製作機】のおかげで外界にも行きやすくはなったものの。

今それを行ってしまえば、恐らく私は他の全てを放って外界の探索を始めてしまうだろう。

少ししたらまたイベントも開始するのだ。

流石に今は自身の戦力増強などに努めておきたい時期ではある。

……ま、ゆっくりやっていこうか。

あまり急いでも何かをミスしたら意味がない。

ゆっくりと、確実に。着実に前へと進んでいこう。


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