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Episode6 - PT&R1


--マイスペース


元より、私が【酒気帯びる回廊】に挑んでいた理由は1つ。


「かなーり回り道しちゃったなぁ」


【SC製作機】なる、ガスマスク用の拡張パーツを作る為だ。

煙草を液体化し燃焼させ吸引する為の機構。

それを作れれば、外界でのST供給を今以上に楽に出来るのだから。

……でもまぁ、うん。外界を今以上に楽に探索出来るってなればこの前の遺跡みたいな所も見つけやすいだろうしなぁ。

言ってしまえば、煙草を液体化するのに特別な機構は私にとって必要無い。

【状態変化】を使えばいつでもどこでも出来てしまうからだ。


「……規格が違うとか、そっちに特化してるとかなのかな。燃やすってプロセスが必要とか?」


『酒呑者』の数ある討伐報酬の中から、酒呑鬼の血液というアイテムを取り出し紫煙技術用の作業台へとアクセスする。


【一定種類の素材を確認……一部アイテムの製作を解禁します】


何やら気になるログが流れたものの。

元々作業途中であった為か、すぐさま【SC製作機】の製作が開始され、


「おぉー……なんかカセットっぽいなこれ」


2つの、四角い鋼色の箱が出来上がった。

それぞれにガスマスクへと接続する用の端子のようなものが付いており、試しに接続してみると。


【ガスマスクに拡張パーツ【SC製作機】が接続されました】

【STの貯蔵を開始……完了。動作テスト開始】


私の目の前に半透明のウィンドウが出現した。

そこには、現在私のインベントリ内に入っている煙草全種類と、


「燃焼器……あぁ、この指輪の事か」


このゲームを初めて1番最初に貰った指輪が表示されていた。

試しに、在庫だけは大量にある上薬草の煙草1本と指輪を選んでみると。


【選択確認……液体化を開始】


ガスマスクに取り付けた【SC製作機】が淡い青色の光を放つ。

それと共に、私の視界……煙質のバーの下に、新たに試験管のようなメモリの付いたバーが出現した。

その内側に灰色の液体が溜まっていくのが見える。


「成程、これが液体化した煙草の残量って訳だね。うん、やっぱり【状態変化】とは違うベクトルみたいだ」


その後、凡そ1分程度だろうか。

試しに入れた上薬草の煙草の液体化が終わったらしく。

ガスマスクを着けるよう指示された。


【液体化完了……燃焼開始】


「ッ!?……うわぉ、慣れるまではビックリするなこれは」


次の瞬間、ガスマスク内に独特な匂いを伴った紫煙らしきものが放出された。

当たり前だが毒では無いらしく。

少しずつ吸い込んでみれば、STが回復していくのが分かった。

……成程、1本分はこうやってガスマスク内に放出されるわけだ。で、放出中も燃焼は可能と。

今も試験管の中身が沸騰したかのように泡立ちながら減っていく。

試しに新たに何本かの煙草を液体化させてみれば、その分だけ液体が増える。

分かりやすく、扱いやすい。

問題は、


「えーっと、これ燃焼中って指輪じゃ煙草に火を点けられなくなるのか……」


同時に、自らの手で煙草を吸う事が出来なくなる点だろう。

燃焼自体はこちらの意思一つで止められる為、そこまで大きな問題にはならないが……もしもガスマスクが外界で破損した時が怖い。

機能不全に陥り、燃焼機能が暴走……なんて事にならないよう祈るしかないだろう。

……良いね、予想以上に煙草の液体化も出来るし……コストがSTだから、最初のランニングコストさえ払えれば実質ノーコストで使える。

容量は大体20本程度だろうか。

ボス系との戦闘では心許ないと思ってしまうものの、雑魚戦などでは切れる心配がない。


「後はデザインだけど……こっちは後で音桜ちゃんに任せれば良いし終わりかな?」


変にデザイン関係で音桜を通さなかった時の方が怖い。

彼女の性格的に、確実に何日間はそれについて言ってくるか落ち込むかの二択だろう。

……さて、今回の報酬とかの確認にいきますか。

面倒な未来を考えるよりも、手に入れた過去を確認していく事にしよう。


『酒呑者』から手に入れた討伐報酬の多くは、いつも通りの生物範疇系の汎用素材。

『酒呑鬼の』という名が付いている事から、他の敵性モブなどから手に入れた物よりは質は良いはずだが……結局の所、今回作った【SC製作機】のように使う機会が無ければ煙草に回される事だろう。


「えぇっと……うわ、メウラくんに話した冗談が冗談じゃなくなっちゃったよ」


言って、インベントリ内から取り出したのは角の生えた小さ目の頭蓋骨だ。

何処か酒臭くもあり、これがあの鬼の頭蓋骨だと雰囲気で伝えてくる。

まじまじとそれを見つめていたら、作業をしていたルプスがこちらの様子に気が付き驚いていたものの……まぁ良いだろう。


――――――――――

酒呑鬼の頭蓋骨

種別:素材

品質:B-

説明:何処か酒の香りがする鬼の頭蓋骨

   世界を溶かし、呑みこんでいく鬼を討った証拠であり、勲章である

――――――――――


「……これはメウラくんへのお土産で」

「……趣味悪くありません?」

「いや、メウラくんが言ってたんだよ。ダンジョンに挑む前に、鬼の首を取って来いって」

「そういう意味ではないと思いますが……」

「あは、分かってる」


冗談はここまでにして。

この頭蓋骨を使うならば、適当に頭装備に回すしかないだろう。

下手に胴体等に回した所で素材のポテンシャルを十二分に活かせないだろうし、何ならコレを少しだけ加工してそのまま被っても問題はないだろう。

上層のボスくらいまでなら、コレだけで十分な筈だ。多分。

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