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Episode24 - R1


--マイスペース


『お前、やる時は滅茶苦茶やるのどうにかしてくれ』

「あは、ごめんじゃん」


ある程度休憩した後、マイスペースへと戻ってきた私は、今回のボス2体の目ぼしい討伐報酬以外を全て、メウラへと送り付けていた。

グレートヒェンの時と同じく、どれがどのようなセット効果を生じさせるかを確かめてもらう為だ。

『Sneers wolf』の装備製作班の方に顔を出しても良いのだが、


「1番、私の装備を理解してるのってメウラくんしかいないんだよねぇ。困った事に」

『そりゃ作者だからな。……ったく、取り敢えず、グレートヒェンのが終わったら取り掛かるから……予定より時間掛かるぞ』

「良いよ良いよ。ここからあんまりボスとか攻略とかは急ぐ予定無いし」


実際、今の所はボスに挑もうとは思っていない。

否、新しいボスに挑むつもりがない、というのが本当の所。

『酒呑者』には挑みたい所ではあるのだが、紫煙外装の強化を最優先にした方が諸々が楽になると分かっている為だ。

……どんな強化になるかによっては……挑む所変えないとなぁ。

自身が酒類を扱うことも増えた影響で、紫煙駆動時の紫電発生能力を使う際に気を使わねばならなくなった。

火炎なんて生じる様になってしまったら……とんでも無いことになってしまう。


「じゃ、よろしくね」

『おう、長めに待っとけ』


メウラとの通話を切った後、私はインベントリ無いのアイテムを3つ実体化させる。

1つは既に確認した死骨の手鏡。

そして、あとの2つは今回手に入れた特殊戦利品だ。


「分かりやすいな……こっちの注射器がマギ=アディクト、こっちの……何だこれ。タブレット?がメアリー=シンドロームの奴でしょ」


一応、どの様な効果を持っているかは予想出来ているものの、それぞれの詳細を見ることにしよう。


――――――――――

中毒者の薬液

種別:特殊戦利品

品質:-

効果:紫煙外装の強化3/3

説明:極彩色の薬液が込められた注射器

   かつて、願うも届かず

   されど、追い求めた者の末路であり成果である

――――――――――


――――――――――

英雄症候群

種別:特殊戦利品

品質:-

効果:紫煙外装の強化3/3

説明:画面が罅割れたタブレット

   表情が、感情が、言葉がここに映り、人に伝わった

   されど、この持ち主はそれを良しとはしなかった

――――――――――


フレーバーテキストの内容が気になるものの、それを精査するのは私の仕事ではない。

……後続の考察班が追いついてきたら、スレッド漁るかな。

以前は三分の一と表示されていた部分も、ボスを倒し戦利品を得たからか、しっかり上限に届いていた。


「おっと、分かりやすくて助かるね」


それらを眺めていると、私の目の前に新たなウィンドウが2枚出現する。

次いで、虚空から手斧が独りでに出現し……その形を以前と同じ様にルービックキューブのように変えていく。

紫煙外装の強化が始まったのだ。


【『外装二式 - 亜器型一種』の等級強化を開始します】

【過去事変の到達及び、特殊戦利品3種の所持を確認】

【プレイ履歴を参照中……選択肢確定】

【新たなる可能性を選択する事が可能です】


前回と同じ様なものか、と思いつつ見てみれば。

今回は今回で分かりにくいイラストが描かれていた。


「えぇーっと……サックスと斧に、ぶどうと蔦か……前回よりも武器っぽさは減ってきたなぁ……」


テキストで選べない、というのは中々面白いものの。

フィーリングで選ぶにはちょっとばかりハードルが高いモノではあると思う。

……ま、今回は……最近の自分の行動にあやかりますか。

私は息を軽く吐きながら、ぶどうと蔦が描かれたウィンドウを選択した。

最近よく使う【酒精生成】によって作れる赤ワイン。今は『酒霊』など、ちょっとした応用でしか使わないものの、この強化によって使い道が広がってくれれば有難い。


【可能性δが選択されました】

【『外装二式 - 亜器型一種』の新たなる可能性が開花していきます……】


瞬間、黒いルービックキューブと3つの特殊戦利品が浮かび上がり、空中で混ざり合いながらその形を変えていく。

基本的にはこれまでと同じ手斧と同じデザインだ。しかしながら、刃の反対側に付いていた羽根が消え。

代わりに柄の持ち手側、その先端にぶどうの蔦で出来た冠がちょっとしたアクセサリーとしてぶら下がっていた。


【『外装二式 - 亜器型一種』の等級強化が完了しました】

【名称が『外装二式 - 亜器型一種』から『外装三式 - 杯器二種』へと変化しました】

【Tipsが追加されます。詳しい説明はオンラインサポートを――】


ログが流れ、私の手の中に手斧が戻ってくる。

……うわ、何だコレ。

手に持った瞬間、感じたのは強烈なぶどうの香りだ。

私が赤ワインを生成した時とは比較にならない濃さの香りが、手斧自体から漂ってきている。

そして、


「なんか出てきてるなぁ……ぶどうのアイコンかな、コレ」


ぶどうの房の部分だけが描かれたアイコンが、私の視界の隅に出現していた。

バフでもデバフでもなく、強化された手斧を所持した為に出現したものと考えられるものの……思い当たるものはない。

……一旦、確認してみないと分からないなぁ。

何にせよ、一度紫煙外装自体の詳細を確認するべきだろう。


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