目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
Episode5 - OWI4


「お疲れー。ごめん、遅れちゃった?」

「いんや、寧ろ早いくらいや。俺らが気合入れ過ぎてるだけやな」

「気合は幾ら入れててもいいからねぇ。……じゃあお願いしても良い?」


私はガスマスクを外しつつ、背後から近寄って来ていた1YOUに話を振る。

彼はSTの補給用であろう長い煙草を吸いながらも、皆を見渡して、


「まずは、今日集まってくれて感謝する。既に道中で経験したとは思うが、あの大群に我々だけで挑むのは中々に骨が折れるから大変助かるよ」


一礼し、ウィンドウを出現させた。

バーでも見た外界のマップ、だが今回のは少しだけ注釈のような形で丸などのマークが付けられている。


「さて、此処からは事前に決めたように移動。それぞれが配置に付いた所で遺跡へと攻め入る形だ。その時、遺跡内へと入り中を探索する突入班と、外の敵性モブ達が中へと入り込まないように妨害する防衛班へと別れる形となる」


突入班は説明通り、遺跡内部の探索がメイン。

戦闘はほぼ確実に起きるであろうし、もしかしたらボスも居る可能性があるため、ある程度戦闘能力があるメンツがここに割り振られている。

何故か私のパーティも突入班となっているのは中々に気が重いのだが。

そして防衛班。こちらは説明通りでしかなく。

擬似的な拠点や、局所的に守るのが得意なプレイヤー達のパーティがここに割り振られる。

……私は兎も角として、メウラくんや音桜ちゃんは防衛の方が良いとは思うんだけどなぁ。

何かしらの考えがあるのだろう。例えば……私の抑え役とか。

ならない様に注意はするものの、何かの間違いで完全体修羅モードになってしまう可能性だってあるのだ。

その時にHP全損させてしまうものの、比較的安全に抑えられる音桜のスキルはあって損はない。

メウラに関しても、紫煙外装の特性を考えるに、自身が中に入ったとしても外で数体は人形を自動で動かせるだろうし……何なら探索にも人形を回す事ができるはずだ。

その上で考えると……戦闘に特化している私は中に入るプレイヤー達の護衛的側面が強いのかもしれない。


「――さて、ある程度のおさらいはこれで終わりだ。各班には『Sneers wolf』のメンバーを1人から2人ほど付けて連絡役にする。無論、この場にいるメンバーの誰かに連絡役を変わってもらっても構わない。……特にスリーエスが居る班はそうなるかもな」

「おいおいリーダー!ワシを信用してへんの!?」

「信用してるからこそだ。何ならお前にはこっちに付けたい伽藍ドゥまで付けてるんだぞ」


ひとしきり笑い合いつつ。

ここでブリーフィングは終了し、それぞれの班単位で集合、移動することになった。

私の班は突入班という事もあって数自体はそこまで多くはない。

私を含めたパーティメンバーと、『Sneers wolf』から2人のみの最低人数だ。


「っと、お待たせ。自己紹介は終わった?」

「お、終わったわ……中々戦闘中の相性は悪そうだけど」

「あは、患猫ちゃんとうちのメンバーは確かに悪そうだねぇ」


今回私の所に来てくれたのは、怨念関係で色々アドバイスをしてくれた患猫と、修羅となった私を止めてくれたキヨマサだ。

キヨマサ自身に探索系スキルは無いようだったが、そこは患猫がどうにでもするのだろう。

彼女の持つ怨念系の武具はかなりの数になるだろうから。


「メウラくんは準備できた?大変だろうけど」

「一応な。半自動と完全自動、手動で3つの部隊に分け終わった所だ。主に遺跡内で使うのは完全自動以外の2部隊になるだろうな」

「おっけー、武装は?」

「邪魔にならない様、一応斥候型をメインにしてある。弓とナイフだな。変えるか?」

「中はそれで良いや。外に出るのは前衛型の盾と槍持ちに変えて良いよ。多分そっちの方が周りの人もやり易いだろうし」

「了解」


彼の紫煙外装は中々に融通が効く。

それこそ、今では彼の造った武具類をインベントリ内から自由に取り出せるようにもなっている。

今までは、私や音桜が余った素材などを回してやりくりしていたものの……『Sneers wolf』と協力関係になってからは、彼らの使わなくなった武具や、失敗作を回してもらえている為に戦力がそれなりに向上しているのだ。

私がそれなりに派手に前に出る為、今まで目立っては居なかったが……実の所、私達のパーティ内で1番戦闘能力が高いのはメウラだったりもする。


「お姉様、私はいつも通りに?」

「うん、私が昇華で索敵しない分を任せるよ。後、大変だろうけど通った道の擬似聖域化も」

「畏まりました。リポップ対策ですね」


だからと言って、音桜の能力が低いわけではない。

以前外界を探索した時も行った、目視での索敵や、『黒血の守狐』との戦闘での領域掌握。

方向性が違うだけで、彼女も彼女でここまでただ着いてきているわけではないのだ。

……こうなってくると、やっぱり私が目立ってるだけなんだよねぇ。

目立つ見た目、目立つ技。そしてパーティのリーダーという立ち位置であるが為に、他のプレイヤー達からの目を集めやすい。

いつの間にか呼ばれる様になっている『紫煙頭巾』なる呼び名も、人の前に立つからこそ付けられた通り名なのだろう。

個人的には、通り名なんて付けてもらう程に実力があるわけではないと思ってはいるのだが。


「……ま、気にしても仕方ないか。さて、そろそろ時間だし行こう!遺跡までは私とキヨマサが先頭で!」

「「「了解」」」

「善処。宜しく」


今回の外界侵攻……その第一歩が、今始まる。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?