目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
Episode17 - D1


--【酒気帯びる回廊】3層


【酒浸りの親衛者を討伐しました】

【討伐報酬がインベントリ内へと贈られます】


「いよっし、試運転終わり。全体的に使い易くなってて助かるなぁ」


右には手斧を、左手には『想真刀』を持ち、周囲に散った紫煙と酒気をアクセサリー状に固め直す。

現在居るのは【酒気帯びる回廊】の第3階層。

酒浸りの親衛者を相手に、どこまで戦えるのかを確かめていたところだ。

一度倒した事のある相手ではあるものの……あの時と今では色々と私のスペックが変わっている為、試運転も兼ねている。


「基本的なデザインは変わってないけど……うん、良いね。流石メウラくんだ」


スキル数はイベント中の模擬戦前にラーニングしてから変わっていないものの、そこから変化した物が多くある。

例えば、装備。

以前までは【世界屈折空間】の上層にあったダンジョンボス達の素材から作られたものであったが……その全てを、イベントボスである『黒血の守狐』の素材と怨煙鉄を使う事で強化したのだ。


――――――――――

『黒血狐のボディス』

作者:メウラ

耐久:100/100

種別:防具・上

品質:C+

効果:防御力上昇

   非戦闘時耐久回復効果

   怨念に対する耐性効果

   『黒血狐』シリーズ複数装備時、液体系操作スキルにボーナス(中)

説明:赤く染色された布を用いて造られたボディス

  黒血狐の加護、そして怨念を帯びた鉄によって補強されている

――――――――――


基本的なスペックは元の装備と似たものだが、シリーズを『黒血狐』に統一した事によってボーナス効果を最大まで引き上げている。

それに加え、私が作った怨鉄のピアスよりも怨念に対しての耐性を全身で引き上げた形。

他の部位も同じように強化してもらった為か、度々『想真刀』を扱う度に起きていた軌道阻害が起こらないようになった。


……まぁ1番は、やっぱりスキルの熟練度関係かな。

そして個人的には大きく、変わったのがスキルの熟練度の段階だ。

元より、ゲーム側のバグで熟練度の段階が上がらなかったものの。

事前の告知通り、イベント終了と共に修正された結果……私の修得していたスキルの大半が性能を向上させた。

想定外だったのは、イベント中に何度もルプスとの模擬戦を繰り返した為か、直近でラーニングした【刀の心得】なども段階が上がった事だろうか。


「1番変わったのは……なんだかんだ言って、【観察】だなぁ」


――――――――――

【観察】

種別:汎用

段階:3

熟練度:32/100

効果:対象の細かな動きが分かるようになる

   HPバーが表示されるようになる

   10秒以上対象を観続ける事で『弱点把握』を付与

――――――――――


『弱点把握』。

簡単に言えば、『相手を観続けていればダメージの通りやすい位置が分かるようになる』という効果だ。

これによって、今まで当たれば幸いとばかりに適当に投擲、射出していたものをその位置へと集中させる事が出来るようになった。

……酒浸りの親衛者とか、割と弱点だらけだったし……最初より楽なぐらいだったなぁ。

印象的だったのは、酒飲みだからなのか凡そ肝臓があるであろう位置に『弱点把握』が付与された事だろうか。

やはり、ゲーム内とは言えど酒の飲み過ぎには気を付けなければならない、という事なのだろう。


「……よし、行こう」


消耗品の確認も終わり、私は次の階層へと足を進めた。



--【酒気帯びる回廊】4層


辿り着いた先は、2層の湿地帯に酷似している場所。

しかしながら様子が異なる所もしっかりと存在している。

それは、


「……マングローブから、液体?」


生えているマングローブの樹皮から、様々な色をした液体が流れ出ているのだ。

……【酒精操作】が反応してる、って事はアレ全部お酒か。

熟練度段階が上がった影響で、触れていない対象も操作できるようになっている【酒精操作】。

それによって操作が出来るという事は、その液体にはアルコールが含まれているという事。


「面倒かもしれないなぁ……」


それに加え、酒の匂いも濃くなっている。

普通に嗜むのならば絶対に嗅ぐ事のない、強いアルコールの匂いが周囲から漂ってきている為についついしかめっ面になってしまう程だ。

これは早く次の階層、もしくはダンジョンボスの居る階層まで降りてしまった方が良いかもしれない。

そう考え、一歩目を踏み出した瞬間、


「なッ?!」

『キヒヒィ!』


足が沈む。

否、私の目の前に足1つ分の落とし穴が設置されていた為に、体勢を崩してしまう。

そして私の前方……右斜め前に位置するマングローブの木の上から、嘲笑うような甲高い声が聞こえた。

そちらへと視線を向けてみると、そこには。

トンボのような透明な羽根が生えた、小さな人型の敵性モブがこちらを見て笑っている。

……早速エンカウントか……!

どういう能力を持っているかは分からない。

だが、


「嘗めすぎッ!」

『!?』


体勢を崩し、前へと倒れつつも私は周囲の酒精……足元や木々から滴り落ちる酒を操作する事で、槍を作り出し射出する。

戦闘開始だ。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?