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Episode14 - BR


--マイスペース


「まぁまぁお姉様。またお可愛らしくなって……」

「なりたくてなったんじゃないんだよー……」


音桜に頭を揉みほぐされながら、私は脱力する。

彼女の手には淡い水色の光が灯っており、私の頭に触れる度、髪から薬草の葉が落ちていく。

ルプスがそれを拾い集めながら、何やら「これは使えますね……」と呟いているのが聞こえたが気にしないでおこう。


今現在、私の装備は初期も初期。

ゲームを始めた時に装備している物だ。

というのも、やはり全身が燃えるなんて状態に至った為か装備自体がボロボロになってしまっており、メウラが急ピッチで耐久値を戻してくれている。

……どれくらいで仕上がるかってのは言われなかったしなぁ。

本当は『黒血の守狐』の素材も使って強化して欲しかった所だが、それをするのにも素材の特性やらなんやかんやを確認する必要がある。


「ま、気長に待とうか。イベント中には戻ってくるだろうし……あぁそうだ」

「?」

「はい、音桜ちゃん。お代の代わりになるかは分からないけど、今回行ってきたダンジョンで採れた奴」


そう言って、彼女に戯画獣の墨を全て譲渡する。

今の所使い道がない素材であるし、何だかんだ私が持つよりも彼女が持っていた方が良いだろう素材だ。


「あら、良いんですよ?」

「いやいや、こういうのはしっかりしておかないとね。それに、結構使うでしょ?こういう染料っていうか、インク系?」

「……そう言われてしまったら、受け取らない訳には行きませんね」


彼女は既に『Sneers wolf』の装備製作班に混じって作業を開始している。

そこで図面を引くのだって、素材が掛からない訳ではないのだ。

……ま、私の方も私の方で上位素材っぽいのがあるしね。

インベントリ内に存在している素材。

鷲や熊達の素材に始まり、当然のように『黒血の守狐』のモノも手に入っているのだ。


「さて、ちょっと色々確認するから、反応無くても気にしないでね」

「畏まりました」


言って、早速ボス討伐の報酬の確認を始める。

今回得る事が出来たのは毛皮、骨、肉、壺の破片、そして墨の合計5種類の素材だ。

まずは毛皮から。


――――――――――

黒血狐の毛皮

種別:素材

品質:C +

説明:『黒血の守狐』の黒く、艶のある毛皮

   この時点でもかなりの強度を誇り、並の刃では歯が立たない程度には頑丈

   特殊な加工をする事で状態を変化させる

――――――――――


……状態を変化させる、ってのが液体化の正体かな?

この性質を持っているからこそ、全身を液体へと変化させアメーバのように襲い掛かる事も出来たのだろう。

何なら、最初に行った濁流のような攻撃も身体の一部だったのかもしれない。

次いで、骨、肉を見ていくものの、名称と説明文が多少変わっただけで毛皮と変わらなかった為、割愛。

次いで確認するのは、気になっている壺の欠片だ。


――――――――――

黒血狐の壺の破片

種別:素材

品質:C+

説明:『黒血の守狐』が背負っていた墨壺の破片

   言わば本体であり、正しく復元すれば墨を無限に生む壺になる……かもしれない

   真相は謎である

――――――――――


……こっちはこっちで不穏だなぁ。

正しく復元するかは置いておくにしても、使い道はかなりある素材だろう。

先ほどの様に、数が集まったら音桜に渡しても良いだろうし、ルプスに渡す事でマイスペース内での記録を取る時にも使えそうだ。

私の装備としては……酒が生み出せる様に改変出来るのであれば、使えるかもしれない。

最後に確認するのは、墨。

戯画獣の墨に酷似しているものの、この状態からでも少しだけ圧のようなモノを感じる液体だ。


――――――――――

黒血狐の血墨

種別:素材

品質:C +

説明:『黒血の守狐』の血潮であり、肉体であり、全身を構成する一部

   混ざり切っている為、固形化したとしても別の何かに変わることはない

   たまに独りでに動き、消え、何か動物の様なものを描きだす

――――――――――


説明文を読む限りはほぼ戯画獣の墨と変わらない、上位素材だろう。

生憎と私には使い道は無いように感じるものの。

……1個調伏したからかな……観えちゃった。

本当に薄くはあるが、怨念が時折漏れ出るのが観えてしまった。

何が気に入らなかったのか、と考えればキリがないのだが……1番の理由は最初から私が本気では無かったからだろうか。

流石にこれは音桜には渡せない。

彼女も【怨煙変化】を扱えるものの、私のように怨念の込められた装備を持っているわけでは無いのだ。

もしも後方支援をしている最中に怨念に飲み込まれてしまったら……中々に悲惨な事にはなってしまうだろう。


「ふぅー確認終わり。……音桜ちゃん、なにやってんの?」

「あら、もう終わったんですか?早いですね」

「まぁ本当に確認だけだからね」


気が付けば、音桜が私の髪を短いながらも三つ編みへと変えていた。

元よりそこまで髪は長く無い為、自分でも似合ってないだろうと判断出来る程度にはミスマッチである。


「まぁいいや。とりあえず私は装備の修理が終わったらまたダンジョンいくけど……音桜ちゃんはどうする?」

「私はまた装備製作班に混ざろうかと。デザイン出来る人が今まで居なかったみたいで……」

「成程、じゃあイベント終わるまでは自由行動にしよっか」

「畏まりました。ではそのように」


そう言って、具現煙の後遺症が消え去ったのを2人で確認してから私達は解散した。

とりあえず……取るべきスキルをラーニングしていく事にしよう。


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