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Episode19 - SW1


『いやぁー皆!お疲れ様ァ!現時刻をもって【紫煙奇譚外伝 亜獣掃討】の終了を宣言するよー!』


マイスペースに居るにも関わらず、運営の遠野によるアナウンスが聞こえてくる。

が、しかし。

私はそれを聞き流しながら、目の前の4人に対してどう反応を返すべきかを考えていた。

メウラ、音桜の2人はまだ分かる。

普段から共に動いているパーティメンバーであるし、今回のイベントでも大部分を共に動いたのだ。大物の討伐が終わった後の祝勝会でもしに来たのだろう。

だが、それについてくるように現れたスリーエスと伽藍ドゥの方が問題だ。


「えぇっと?先に聞いとくけど、昨日の話?」

「伽藍ドゥはそうやな。ワシはタダ酒貰いにきただけや」

「帰ってもらって良いかな?」

「そんな冷たい事言わずに、な?」


スリーエスにマイスペース内で保存しておいた試作品の酒飴玉を投げつけつつ。

私の視線は、居心地が悪そうにマイスペースの床に胡座をかいている伽藍ドゥへと向けられる。

彼は苦笑を浮かべつつ、軽く頭を下げながら、


「いや、すまない。本当はリーダーが来るべきだったんだが……色々と面倒ごとに捕まっていてな」

「成程?」

「主に、最後の……鼠都だったか?あれの足止めをしたプレイヤーは誰なんだ?とか、うちのグループがあのプレイヤーを護っていたのは何故なのかとか質問攻めでな」


主に私の所為だった。

だが、あれくらいなら同じスキルを持っていて、尚且つ同じ練度ならば出来なくはない芸当だ。

そこまで話題になるような事ではない……はずだ。


「ん、なんでそんな事でって顔しとるな嬢ちゃん。言っとくが、アレ出来るのウチのグループには1人も居らんで」

「あ、それについては俺も補足するぞ。少なくとも俺の顧客の中で、【魔煙操作】の練度があそこまで高いのってお前くらいだからな?レラ」

「えっ」


と、ここでスリーエス並びに味方だと思っていたメウラから刺されてしまった。


「でも紫煙の操作だよ?他の……それこそ水とか炎を操るよりは材料が多いじゃん?エデンなら」

「ちゃうんよ。そもそも、【魔煙操作】なんてもんを取ってんのがまず少数なんや。紫煙を操るなんてのは……まぁ言っちゃえば紫煙外装で間に合ってるんよ。普通は」


基本的に、紫煙外装は紫煙を使い何かしらの現象、結果を引き起こすものだ。

私の手斧ならば、巨大な紫煙の斧を生み出し追従させる事ができる。

メウラの紫煙外装は少し特殊かもしれないが、あれだって紫煙を元に巨大な人形を生み出す……なんて事をやっていた。

私達2人の例だけでも、紫煙を扱うという点だけ見れば十分に紫煙外装だけで間に合っている。

だが、それでも疑問に思う事はある。


「でも、殲滅能力を上げるなら……あ」


そこまで言って、気付く。

要らないのだ、殲滅能力を向上させる手段など。

単体への攻撃性能も、集団への攻撃性能も。

どちらも、紫煙外装というユニークであり強力な武装がある為に間に合ってしまっている。

だからこそ、他を……私ならば紫煙駆動によって発生させることが出来る紫電など、そちらを操り、強化する方向にスキルのビルドが進んでいくのだ。


「納得したかな」

「……納得はしたけど、だからってそんな1YOUくんが質問攻めに遭うくらいに目立つ事かなぁ」

「いんや、実際あれは凄かったで?あんだけデカい鼠1匹をほぼ1人で抑えたんや。それもほぼ誰も使ってないようなスキルで、や」

「そうだ。そんな芸当が出来るプレイヤーがウチと繋がっているかもしれない……ってだけでも、ゴシップ好きだったり、他のグループからは気になるモノだよ」


彼らの言う事は分かった。

この場に1YOUが居ない事についても、だ。

その後の、私の芸当、練度の高さについては……まぁここで否を唱えたとしても聞いてはくれないだろう。

……私、そんな大層な技術は持ってないと思うんだけどねぇ。

思うだけならタダ、という事にしておいて。

本題へと移っていこう。


「で、専属の話だよね」

「あぁ。丁度君達のパーティメンバーが全員居る事だしタイミングは良いだろう。――どうだろうか?」

「あは、先に聞かせてもらっても良い?」


私のその言葉に、伽藍ドゥは浅く肯定し、スリーエスが視界の隅で姿勢を変えたのが観えた。

戦闘体勢に近いモノではなく、話を聞く体勢にだ。


「私達に求めるものは何かな?」

「技術を、そして力を求めよう」

「その答えだと、私達を戦力としても見るって言ってるようなモノだけど?」

「肯定する」

「そっか。じゃあ私達を使って何をする気だい?……あぁ、これはスリーエスくんに聞こうかな?」


そう言うと、伽藍ドゥは再度苦笑し。

スリーエスは溜息を吐いた。

まるで、私がそう言うのを分かっていたかのように。


「おい伽藍ドゥ。ワシゃ腹芸なんか出来んからな?」

「ここまで来ておいて今更だろうに。……良いぞ」

「あー……そうか。――俺達、『Sneer Wolf』は外界の大規模攻略に乗り出すつもりだ。その手助けとして、嬢ちゃんらの力を借りたい」


凡そ予想通りの回答に、今度は私達が苦笑してしまう。

その様子をじっと、冷笑の狼達は見つめていた。


「ごめんごめん。私達の答えはもう決まっててさ。そっち側の要求が予想通りだったもんでつい。――うん、良いよ。私達のパーティは君達『Sneer Wolf』と専属の契約……いや」


一息。

ここはハッキリと、しっかりと言葉にするべきだろう。


「君達『Sneer Wolf』と、協力関係になろうじゃあないか」


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