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Episode6 - E5


外周部に戻った私は、パーティメンバーに対して得た情報の共有を行った。

一応スリーエスにも共有はしたものの……彼は外界に行くとなれば確実についてきてもらう事にはなるだろう。

敵性モブ達の大本なんて相手、タイマン特化の彼が居た方が楽に決まっているのだから。


「私はどちらでも構いませんよ。お姉様の行きたい方に」

「俺は……まぁ俺もどっちでも良いな。お前の持病次第じゃねぇか?」


音桜はいつも通りに、メウラはよく私の事が分かっている答えを返してきてくれた。

そう、結局は私の行きたい方に行くのが私達のパーティなのだ。

それは共に行動するようになった頃から変わっていない。

……持病次第、ねぇ。

私の持病こうきしんだけで言うならば、時間経過でも出てくるであろう大本に対して若干のフライング気味に挑む事が出来るというのは中々に唆るものがある。


「……オーケィオーケィ。じゃあそうだね。行こうか、外界」

「おっ、嬢ちゃん達行くんか?ここの護りはどうする?」

「そっちは伽藍ドゥくんに暇な人達回してもらう事にしてあるから大丈夫。スリーエスくんも私のパーティと一緒に行くよ」


外界に行く、と言っても前のように行くわけでは無い。

このイベント期間中だけは、特殊な……否。

思えば、こちらの方法の方が一般的だ、と思える方法でアクセスする事が出来るのだ。


……アイテムは……まぁほぼ使ってないから大丈夫か。

煙草を吸いつつも、今回外界で必要になりそうな消耗品の一覧を確認しておく。

前回外界に挑んでからそれなりの時間が経っている事もあり、自身の手……というよりも。

ルプスの手によってST回復薬などの、ガスマスクをしていても扱う事が出来る消耗品が増産され、尚且つ適当に私のインベントリ内へと放り込まれているのだ。

それに、私も私で興味本位で作ったものをそのまま入れていたりもする。


「……ん?レラ、お前なんだその白い飴玉みてぇなアイテム」

「あぁこれ?1個食べてみる?」

「食べれるのか?じゃ、遠慮なく……ってオイ。なんか視界がゆっくり回り始めたんだが?」

「ちゃんとST回復してるでしょ?」


メウラが少しだけ顔を赤くしつつ、こちらを睨むものの。

詳細を聞かずに口に含んだ彼が悪いと少し笑う。


「それはST回復薬だよ。飴玉型の」

「確かにSTは回復してるが……俺が知ってるのよりも回復量が多いし、何ならなんだよこの『酩酊』ってデバフは」

「あは、お酒だからねぇそれ」


飴玉型ST回復酒とでも称すればいいそれは、私がイベントまでの準備期間中に準備した消耗品だ。

ドランクイーターから手に入った狂酒の球結晶。

これによる液体の酒化は、2つの効果を元の液体に齎す事が分かった。

1つは、効能の強化。

酒は百薬の長、なんて言葉もあるからなのか……薬系の液体アイテムの効能が大体1.5倍程度には跳ね上がったのだ。


しかしながら、流石に強すぎるのかデメリットまで生じてしまった。

それが2つ目の効果である、『酩酊』の付与だ。

【酒気帯びる回廊】にて体験した事がある私は兎も角として、メウラはまだ足を踏み入れていなかったのだろう。その足取りは千鳥足のようになっているのが伺える。


「それ飴玉型にしてるから、舐めてる間はずっと回復するし『酩酊』も付与され続けるから注意してね」

「……これ使えるのか?」

「何も回復するだけがアイテムの使い方じゃないよ」


手のひらに1つ取り出し、【酒精操作】によって様々な形状へと変化させる。

立方体から四足歩行の動物、今も周囲で私の操る紫煙によって倒されていく敵性モブの姿など様々だ。


「生物系の相手だったら、これ体内に入れるだけでデバフが入り続けるんだから儲けものだよねぇ」


事実、私の想定している使い方は口の中に放り込む事ではない。

これは自身や相手の身体に突き刺す事で効果を発揮させる事を想定しているものだ。

今はまだ【酒精操作】の熟練度段階が上がっていない為、手放しにはその操作を行う事は出来ないものの。

現状でもそれだけでかなりの効果を発揮してくれるだけのポテンシャルはあるのが分かっているのだ。

……ルプスと一緒に検証したしねぇ。

酒に酔う事で、中々にルプスの性格……というか。言動が普段からは想像の出来ない状態になっていたのだが……それはまた別の話。


「それって神酒とかでも出来るんでしょうか?」

「お酒だし出来るとは思うよ?……神酒がエデンにあるのかどうか知らないけど」

「神酒なんて使うたら、アンデッド系には特攻取れるやろなぁ」


今後、その手の敵性モブが出てこないとも限らない。

一応何処かのタイミングで仕入れる事が出来そうなら仕入れておくのも視野に入れた方が良いかもしれない。


そんな事を話しながら準備をしていると。

じっとメウラが私の姿を見て、一言ぽつりと小さく零した。


「酒、煙草……それに女、か」

「……メウラくん?何かな、その私が中々に悪い男の三拍子を揃えてるような感じの言い方は」

「いやぁ……このゲームだからこそだが、まぁまぁにリアルで会いたくはねぇ属性てんこ盛りになってきたな、と思っ――ぶぁ!?」


瞬間、私の手のひらの上にあった飴玉の形状を変化させ、メウラの顔を覆う仮面のようにして黙らせた。

言って良い事と悪い事があるだろうに。

……まぁリアルでもお酒も煙草も嗜むけどさぁ。


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