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Episode22 - S


「……あるもんだねぇ」


スキル修得用の一覧を開き、探してみると。

酒に関係するであろうスキルは容易に、それも数個ほど見つける事が出来た。


「【酒造】はまんま生産系で良いとして……【酒蔵構築】は……よくある工房制作系?ダンジョンとかでも作れる様にってこと?」


ダンジョン内で酒蔵から作る本格派を通り越して狂人にはなりたくはないし、別に私の目的はそんな本格的に酒を造る事ではないため、一旦はスルーしておく。

……えぇっと、多分【魔煙操作】と似たような命名規則なはずだから……これかな。

【酒精操作】。

アルコールを操るのか、酒自体を操るのかは分からないものの……それらしいスキルはこれしか見当たらない為、これを修得する事にする。

素材は……どうやら酒浸りの眼球1つで問題ないようだ。


「よし、修得。……試してみようにもお酒なんて持ってないな。……ルプスー?」

「はい、なんでしょうか?」

「お酒持ってる?さっき渡した奴以外で」

「少々お待ちください……あぁ、菜園の方で水の代わりに与えたらどうなるのか、と実験する為に買っておいた発泡酒ならありますよ」


どうやら私の知らない間に【簡易菜園】を魔改造しているようだ。

面白そうなので、今度私も混ぜて欲しい。


「うん、それでいいや。コップ1杯分持ってきてくれる?」

「……飲まれるので?」

「いんや、ちょっと実験」


訝しみつつも、コップに発泡酒……ビールを入れて持ってきたルプスに礼を言った後、口に含む……なんてことをするわけもなく。

試しに人差し指で触れてからスキルの発動を意識してみると、


「おぉ、出来た出来た」

「これは……また珍しいスキルを」

「あは、宴会芸じゃないけどこういうの出来ると色々便利じゃん?」


コップの中から独りでにビールが宙へと浮かび上がる。

試しに様々な形を模らせてみると、出来る形と出来ない形がある事に気が付いた。

……複雑な形や動きは難しい……紫煙みたいにデコイとかは作れないなこれ。

犬や猫、馬などの形を作る所までは問題なく出来る。

しかしながら、そこから動かそうとするとどこかしらが破綻して、最終的には破裂するかのように形が崩れてしまうのだ。

しかしながら、海賊が使っていたカットラスのような形状や、紫煙でも良く使う槍などの武具の形状には簡単に変える事が出来た。


「戦闘特化、それも攻撃と防御用かな」

「攻撃は何となく今のを見ていたら分かりますが……防御ですか?」

「うん。液体ってのはやっぱりある程度勢いとかを削いでくれるからね。複雑じゃなくても簡単に……こうやって、空中に渦を作り出すだけでも物理攻撃には強くなると思うよ」


今は試しという事で、コップ1杯分のビールのみで色々とやっているものの。

実際に戦闘で使うならば、もっと多くの酒精を扱う事になるだろう。

……早めに熟練度上げて触れてなくても操作できるようにならないとなぁ。

バグによって熟練度の段階が進まないのが中々に悩ましいものの、それを抜きにしても中々悪い使い方が出来るスキルだ。


「よぉーし、スキルの確認は終わり。イベントの準備をしていこうかな」


次のイベントはエデンが舞台となる、敵性モブからの襲撃戦。

今まではプレイヤー達がダンジョンへと赴いていたのが、逆に敵性モブ側から襲い掛かってくる類のイベントだ。

出来る準備はしておいた方がいいし、何ならいつも以上にアイテムの消費は嵩む事だろう。

ルプスに任せるだけではなく、久々に私も煙草の製作などを行わねば安心できる量を用意する事は難しい。


私の持病好奇心を刺激してくれる敵はいるかな……居ると良いなぁ」


まだ見ぬ敵に夢を馳せながら、私は着々と準備を開始した。




――――――――――

プレイヤー:レラ

状態:魔煙術後遺症軽度:昇華煙


・紫煙外装

『外装二式 - 亜器型一種』


・所有スキル

【煙草製作】、【観察】、【フィルター加工】、【背水の陣】、【回避】、【過集中】、【魔煙操作】、【隠蔽工作】、【複製】、【状態変化】、【投げ斧使い】、【多重思考】、【酒精操作】


・装備

赤き信仰のボディス、赤き信仰のドレススカート、赤き信仰のグローブ、赤き信仰のロングブーツ、赤き愉悦の外套、『信奉者の指輪』、『四重者の指輪』、『真斬のピアス』、『解体者の指輪』、『切裂者の指輪』


・煙質変化

【狼煙】、【怨煙変化】

――――――――――

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