【--Smoker's are Welcome--】

【外侵食の琥珀を確認……一部のアイテムの製作を解禁します】

「おっと、来たねぇ……」

作業台にアクセスすると、ログが流れ製作可能一覧に何個かのアイテムが追加された。

といっても、ほぼこれまで見たものとほぼ似た様な物ばかりで、そこまでの変化はない。

「……お、なんだこれ」

そんな中、見慣れない中間素材を見つける事ができた。

その名も、

「ガスマスク拡張用部品、ねぇ」

ここまで直球なネーミングもないな、と少しだけ笑みが溢れつつ。

私はこれによって何が作れるのかを掲示板で確認し始めた。

別段、何も情報を仕入れないで中間素材だけ作っておいても良いのだが、ガスマスクという外界での活動に直結する装備の拡張用となってくると、どのような物になってくるのかは調べておいた方が良いだろう。

これがずっとソロでの活動をしているのならば兎も角、共に活動する事も増えてきたメウラや音桜とパーティを組む事も考えると……好奇心だけで突っ走るのも中々難しい。

「へぇ、煙草の代わりになる拡張……良いじゃん。別の施設も必要になるっぽいけど」

作業台で中間素材を見たからなのか、調べてみるとあっさりとそれについて書かれたスレッドを発見でき。

数ある拡張機能の中に1つ、私が考えていたST回復がしやすくなる機能が存在していた。

……液体状にした煙草を熱によって蒸発、それを吸引……機構云々を考えると中々面倒そうだけど、そこは紫煙技術の出番って感じか。

この作業台で作れるのは、ガスマスクに拡張機能を追加する為のスロットのようなものを取り付ける所まで。

そこから煙草を液体状にしたり、スロットにセットする為のアイテムを作るのにはまた別の施設が必要となってくる。

だが、その施設も今まで通りゲーム内通貨で買うわけでは無く、作業台で中間素材を作って自ら組み立てる形式だ。

「ここに来てDIYみたいな事をする事になるとは……まぁ楽しいし良いんだけどね」

という事で、早速ガスマスク拡張用部品と、今回必要になる施設……【SC製作機】の製作を開始した。

ガスマスク拡張用部品の方は簡単だ。

煙鉄インゴットを数個を使い、複数の歯車を作り出し。

それらと外侵食の琥珀を組み合わせる事で出来る、琥珀によってメッキ加工をされた手のひらサイズの重なり合った歯車を再び作業台によって作り上げれば完成する。

【ガスマスク拡張用部品の存在を確認】

【紫煙技用初級クラフト台にて、ガスマスクとの融合が可能です】

「おぉう、融合とか出てきた。中々面白い言い回しするじゃん」

是否を問うウィンドウが出てきた為、そのまま承認すると。

手に持っていたガスマスク拡張用部品と、首に下げていたガスマスクが光の粒子となって作業台に吸い込まれ。

1秒もしない内に、再び私の首元へとガスマスクが戻ってきた。

パッと見の変化は特にはない。

「んー？……ルプスーちょっといいー？」

「はい、なんでしょうか？」

「このガスマスク、どっか変わった？」

「……そうですね、丁度両頬の辺りでしょうか。小さな琥珀色の穴が空いていますよ」

そう言われて、注意深く観てみれば確かに小さな穴が左右に1つずつ空いているのが見えた。

貫通しているような穴ではなく、正しく言うならば窪みだろうか。

何かを嵌める事が出来そうな窪みがそこに追加されていた。

「おぉ、コレか。ありがと」

ルプスに礼を言った後、続いて【SC製作機】の製作も開始――しようとしたのだが。

素材が足りず、煙鉄インゴットを使ったネジや歯車などを作った所で止まってしまった。

「えぇっと……任意の中層ボスの血液……あちゃ、ここで中層かぁ」

開放したは良いものの、まだ一度も踏み入れていない【世界屈折空間】の中層。

確実にこれまで挑んだダンジョンよりも難度が高いであろう事は予想されるものの……どれほどのモノかは分かっていない。

情報規制の対象となっているのか、掲示板で探してみてもそれらしいスレッドが発見できないのだ。

……まぁ、良い機会だし行くのも手か。

このままガスマスクの拡張を広げていくと、そのまま外界を行動の中心に据えてしまう。

それも悪くはないのだが……まだ見ていないものに対する興味というのは尽きないもので。

「うん、行くかぁ。今まではタスクが重なっちゃって行けてなかっただけでもあるしね」

こういう時、持病こうきしんは本当に役に立つ。

それらしい理由があってもなくても、単純に「好奇心で行きたくなったから」という事が出来るのだから。

私はルプスから出来上がっている消費品を受け取ると、早速エデンの中央区へと移動し【世界屈折空間】へと移動する。

メウラや音桜には悪いが、久々とも言えるソロでのダンジョン攻略だ。

少しばかり自由気ままに探索させてもらうとしよう。