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Episode12 - OWBR1


「いやぁ、お疲れさん嬢ちゃん。最後の凄かったなぁ」

「お疲れ様。あは、それはスリーエスくんにも言えるっしょ」


討伐終了後。

皆から離れた位置に居た私の近くへと、功労者の1人が近づいて来た。


「ソロプレイヤーってアレのこと言ってたんだねぇ。凄いじゃん」

「ま、切り札みたいなもんやからな。あの場面で出し惜しみはしない性格なんや」

「あは、まるで私が出し惜しみしたみたいじゃん」

「したみたい、じゃなくてしてた、やろ?」


胡散臭い笑みを浮かべながら、彼は言う。

その視線は私の顔ではなく、耳元へ……ピアスの方へと向いているように見えた。

……流石に【怨煙変化】を使ったからなぁ。目ざとい人には気付かれちゃうか。


「……あー、いつから気付いたの?」

「ボス戦前やな。確信になったのは最後の赤色の紫煙が漏れた所や」

「あちゃちゃ……いやぁ、言わないでおいて。これ、手抜きってよりは制御出来ないと思うから使ってないだけなんだよ」


そう、嘘は言っていない。

スリーエスはまずは確実に『真斬のピアス』の事を言っているのだろう。

だが、これの力の象徴である『想真刀』については私自身分からないこともまだ多いのだ。

それに加え、あの時流れたログ的に……まず間違いなくアバターの制御が奪われたら良い方だろう。


「成程なぁ。……怨念関係やろ?面倒やなぁ」

「面倒だよ、面倒。何か対策とか知らない?」

「対策なぁ……生憎、ワシはそういうの疎くてな。うちのグループの誰かなら知ってると思うが、どうする?」

「あー、じゃあお願いしようかな」


『Sneer Wolf』は、スリーエスや伽藍ドゥのようなストリーマー以外にも、eスポーツのプロシーンで活躍するような選手が揃っている所だ。

情報収集ならば、私のような普通の一般人よりも多く、そして早くこなす事が出来るだろう。

……今回の1番の報酬は、ここの繋がりができた所かな?

『想真刀』の性能込みでも、相手が私の事を過剰評価しているようにも思えるものの。

それ自体はしておいてもらった方が色々とやりやすい所もある為、何も言わない。


「お姉様ー!帰りますよー!」

「おっと。じゃあ私は呼ばれちゃったからもう行くね。エデンの方でも会ったら仲良くしてくれると助かるよ」

「おう、フレンド申請はしておいたから承認しておいてくれや。またな」


遠くから音桜が私を呼ぶ声が聞こえた為、スリーエスと別れそちらと合流する。

初の外界での調査がこんな事になるとは思わなかったが……それなりに楽しめたから良いとしよう。

……次にここに来るのは……もうちょっと後かな?

次回までに、ガスマスクをつけていてもSTの回復や、昇華等の魔煙術が使えるような方法を考え付いておかねばならない。

最後に一度、森であった場所を見渡してから私達はエデンへと戻っていった。




--マイスペース


「よし、じゃあ確認作業だ」


精神的に疲れていたとしても、やらねばならない事はある。

特に、あんな性質のボスの討伐報酬なんて放置していたら何が起こるか分からなくて怖い。

ルプスに今回消費したアイテムの個数や、スリーエスから貰って結局使わなかったST回復薬を渡し、増産を頼んでおく。

今や、私にとって紫煙は武器であり、STを回復する為に使うのが少しだけ勿体ないなと思ってきてもいたのだ。


「今回はぁーっと……種類は少なめ、数多めの厄ネタっぽいの1つか……おかしいな、MVPじゃないんだけどなぁ……」


『樹葬の宿主』の討伐報酬は主に3つ。

蔦、樹皮、そして花だ。

それぞれが最低でも5個は手に入っている為、中々に量が多いものの……装備のアップデート等に使えるかどうかは分からない。

……誰か樹皮布とかそういうのかじってる人いるかなぁ……というか、繊維を取り出すとか出来るのか?このゲーム。

そしてもう1つ。厄ネタかもしれない報酬がこれだ。


――――――――――

外侵食の琥珀

種別:特殊戦利品・素材

品質:-

効果:特殊装備品を製作可能

説明:中に種のようなものが入っているように見える琥珀

   紫煙との親和性が高い

――――――――――


「厄ネタ、ではないかもしれない……?いやでも中に入ってるの、確実に寄生樹の種だもんなぁコレ」


それに特殊戦利品というカテゴリ。

私が見たのはこれが2回目ではあるものの、1回目が煙質開放用のアイテムだった事を考えると……それなりにレアではあるだろう。

しかも、別段特別な倒し方なんてした記憶もない為、なんでこれが手に入っているのかも不明だ。

一応音桜やメウラに連絡を入れてみた所、2人の所の報酬にも外侵食の琥珀が入っていたようなので、恐らくは外界のボスとの戦闘報酬のような立ち位置なのかもしれない。


「えぇっと……製作可能、って言われても。私が使える生産系の中で装備品作れるのって紫煙技術用の作業台しかないんだよなぁ……」


ガスマスクの次はこれか、とも思いつつ。

私は作業台の方へと向かっていった。


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