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Episode8 - OW6


「作戦は伝えた通り!このクソッタレな森を駆除するぞ!」

「「「了解!」」」


少し経ち、私達はセーフティエリアから出て森へと繰り出した。

戦闘には私、スリーエス、そして案内と罠、索敵役の伽藍ドゥ含めた支援、斥候型のプレイヤー数人。

その後ろに、後衛型や補給班が続く形だ。


作戦は単純。

この森の心臓部である寄生樹らしきボスの元へと侵攻し、倒す。

これだけだ。

と言っても、道中での戦闘やボスとの戦いなどを踏まえれば……難度はそこそこあると思われる。

……一応、外界のボスだしね。何してくるか分からないけど強いでしょ。多分。


「そういえば、スリーエスくんとか伽藍ドゥくんは外界でのボス狩りはこれが初?」

「いんや、ワシは2回目やな。だから伽藍ドゥに呼ばれたんもある」

「俺はこれが初だ。……これでも、俺は頭脳労働派だから戦闘面は他に任せたいんだが……」

「そんな言うても、リーダー来なかったんやから仕方あらへんやろ。ワシが来ただけでも良いと思っとき」

「成程ねぇ。私も初だから、基本は合わせるよ」


実際、外界での討伐経験があるかないかは重要だろう。

ボスを狩れれば、その分装備が良くなる。

装備が良くなれば、その分戦闘能力が向上して外界の探索がしやすくなる。

【世界屈折空間】の攻略を進める事でも戦力増強は行えるだろうが、外界の方が素材のランダム性が高い為、自身により合った素材を見つける事が出来るかもしれない。


……私に合ってる素材も探しておきたいしねぇ。

この作戦で手に入るのは、確実に私には合っていない素材だろう。

煙草の素材にするにも、装備のアップデートに使おうにも、寄生系の素材はそれに特化した能力を持っていないと腐ってしまう事が多々ある。

生憎と、私のスキルや手斧の能力にはそれを活かせるモノはない為に、死蔵するか欲しい人とトレードするくらいしか出来ないはずだ。


「そろそろ森の中心辺りかな?伽藍ドゥくん、どう?」

「待ってくれ……よし、こっから東に移動していけば広場が見えるはずだ。そこにでっかい樹が生えてる」

「見えへんけどなぁ……認識阻害とかその辺持ちやろか」


森の中を歩き、暫く。

道中の敵性モブは適当に投擲や、後ろの後衛班達が近付かれる前に倒してくれていた為に、スムーズに森の中心部近くまでやってきていた。

大元が近くにいるからか、様々な物が植物に侵食されているのが分かる。

人の亡骸や動物の亡骸は当たり前、以前誰かが住んでいたのか、民家の様なものや、水車の様なものまで蔦で覆われているのが中々に悲惨だ。


何かに見られている様な、そんな感覚を感じつつ、私達は進んでいくと……何やら薄く虹色に輝くベールの様なモノを発見する事ができた。

見えた瞬間に、スリーエスが警戒したかの様に黒い両刃剣を出現させた為、これがそう・・なのだろう。


「アレがボス戦用のエリアに繋がっとる扉みたいなもんや。あっこから先に進んだらすぐに戦闘が始まるから注意せぇよ」

「戦力分析用に何人か先行させるってのは大丈夫そう?」

「……いんや、やめといた方が良い。ワシん時はゴーレムが相手だったからソレでも良かったけど、流石に今回はリスキーやろ」

「あー……ボスと道中じゃ使ってくるスキルの強さとかも違うしね。じゃあ準備出来次第全員で突入か」


準備を整える、と言っても私とスリーエスが今更何かを準備する事はない。

強いて言えば、周りのプレイヤーが発生させた紫煙を自身の周囲に留めておくくらいだろう。

……最低限、これでSTは回復できる……よね?

試しに、ガスマスクの吸引口から紫煙を中へと入れてみれば。

普通に煙草を吸うよりも数段少ないものの、STが回復するのが分かった為、これでも問題は無いだろう。

最悪、戦闘中に他のプレイヤーからちょろまかせば何とかなるはずだ。


「あ、嬢ちゃん。これ渡しとくわ。必要やろ?ST」

「ん?……え、これ良いの?まだ数少ないんじゃなかった?」


そんな事をしている中。

スリーエスが1本の灰色の液体が入った瓶を投げ渡してきた。


――――――――――

ST回復薬

種別:消費

品質:C

効果:STを割合回復させる

説明:紫煙を発生させる特殊な薬草を加工した液体薬

   純度が低く、効果は低い

――――――――――


それはまだ素材の流通数が少ない為、数が作れないと補給班が嘆いていたものだった。


「えぇんやえぇんや。ワシはどっちかって言うとあんま使わん側やからな。使う嬢ちゃんが持っとき」

「ありがたいけど……本当に大丈夫?戦闘中に返してって言われても無理だよ?」

「言わんわそんな事」


そんな事を話していると。

どうやら他のメンバーの準備が終わった様で、それぞれが自身の紫煙外装や武器をもって立ち上がり始めていた。

いよいよ、と言う程にはこの森や外界に来てからの時間は短いものの。

敢えて言うべきだろう。


「いよいよだねぇ」


その言葉に無言で頷く彼らを見ながら、私は周囲に留めていた昇華の紫煙を身体に纏わせる。

過剰供給状態ではなく、全身満遍なく変化していき……まだ人の面影がある人狼に近い獣人、のような姿へと変化した。

スリーエスや伽藍ドゥを含めた、初めてそれを見た周囲のプレイヤー達は少しだけ驚愕していたものの。


「行くぞ!」


伽藍ドゥのその言葉に、歓声を挙げつつ。

我先にと淡い虹のベールの中へと駆けこんでいった。


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