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Episode5 - OW3


結果から言えば、話を聞くことは出来なかった。

と言うのも、こちらが話しかけても無視するか、獣の様な唸り声をあげるだけで言語を話すような様子が一切なかった為だ。


「うーん……どう見る?」

「まぁ、順当に考えてこれ・・の所為だろ。確実に」


どうしようもない為、一度弓持ちを倒し、ドロップ品を確認した私達はお互いに顔を見合わせることとなった。

というのも、私と他2人では見え方の違うアイテムが存在していたのだ。


「そっちだと、ただの『種』って表示されてるんだよね」

「あぁ。お前みたいに『寄生樹の種』なんて物騒なもんには見えてねぇな」

「私も同じくですね。他のアイテムは変わりないようですが……」


そのアイテムが、これである。


――――――――――

寄生樹の種

種別:素材

品質:C

効果:不明

説明:不穏な気配の漂う種

   扱いには注意が必要だろう

――――――――――


ちなみに他2人の見えているアイテム詳細はと言えば、


――――――――――

種別:素材

品質:C

効果:不明

説明:植物の種

――――――――――


となっており、確実に何かの条件によって情報の隠蔽、開示が為されている。

……3人とも、スキルに鑑定能力のあるものは修得してない。となると……。


「ねぇ、2人ってマイスペースで何か栽培してたりする?」

「いや、してねぇ……ってそういうことか?」

「成程、コンテンツに触れているか否かによっての開示ですか?」

「恐らく?掲示板で調べたけど、私は【植物鑑定】とかのスキルは持ってないし、違いがあるとしたらそれくらいかなぁって」


【簡易菜園】を扱っているか否か。

あの菜園では、かなりの種類の植物を扱う事が出来る。

それこそ、私が手に入れた事のない植物でもゲーム内通貨を消費する事で生育する事が可能なのだ。

だからこそ、私が種や苗を選んでいる時にこの種も目録の中で見かけた事があるのかもしれない。

……知っていれば開示される、って条件ならこれで大体は合ってるはず。多分。


「どう?2人は見え方変わった?開き直してみて」

「畏まりました……変わりましたね。確定ですか?」

「こっちもだ。確定でいいだろうな」


と、情報の開示が3人共に為された所で問題が1つ。いや、2つほど存在している。

1つは、寄生樹の種なんて代物が発見されたこの森の中に居るという事自体。

そしてもう1つはと言えば、


「私達、これ普通に戻ったらダメなパターンじゃない?」

「……今回は種っていう分かりやすい状態だから分かったが……植物って花粉とかもあるよな?増えるのに」

「モノによっては、葉自体もマズいですね。……どれも危険物に見えてきました。焼き払います?」


私達の装備に、寄生樹の近縁種の何かしらが引っ付いてしまっている可能性だ。

もしも付着していた場合、このままエデンに戻る事は難しい。

先程、私達が相手をしていた敵性モブがどういう状態だったかを考えると分かりやすいだろう。

まるで病原体のキャリアのように、寄生樹関係の何かしらをエデン内へとばら撒いてしまい……エデンが低予算のパニックホラーのような状況になるのが容易に予想出来てしまう。


……寄生されてたら流石にデバフとして出そうだし、何ならHPも減りそうだけど……今は特になし。ガスマスクのおかげかな?

鉄のノズルに指を這わせながら考える。

どうやってエデンへと帰るか、ではなく。どうやってこの森を攻略するか、をだ。


エデンに帰る方法自体は簡単だ。

私か音桜の紫煙外装によって、全身が黒焦げになるレベルで焼却すれば良い。

先程の戦闘内容的に、寄生樹の種やその近縁種が高温に耐性を持っているとは考えにくい。

私は紫電を、音桜は火炎を扱う事が出来るのだから焼却を行う事自体はそこまで苦ではないのだ。


「この森、どこまで広がってるか……って所だよね。問題は」

「エデンからの転移がランダムスポーンだったとしても、広範囲に広がっていたらまた森の中から、って事態にはなりそうですしね」

「そもそも攻略とかそういう類なのか?これは」

「流石にゲームだし、親玉は居て欲しいって希望的観測かなぁ。それを倒したら森が無くなるとか、寄生樹の活動が低下するとか?」


分かりやすいボスが居てくれれば、それを倒せば済む。

しかしながら、ここはダンジョンではなくエデンの外。外界なのだ。

こうして森が広がっている原因が、1つの寄生樹の種が宿主を増やしに増やして出来てしまったモノかもしれないし、原因となっている個体が1体居るだけの可能性もあり得る。

様々な可能性が考えられるからこそ、手を打つ為の行動を模索しにくい……というのがプレイヤー達の現状なのだろう。

思えば、篝火の周囲に集まっていたプレイヤー達は何かを話し合っているようにも見えた。

彼らも彼らで、何かしらの解決法を考えているのかもしれない。


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