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Episode2 - F


--紫煙駆動都市エデン・管理区


「はい、確認しました。ではこちらが『調査任務許可証』となります。これを持った状態で中央区の門へと触れれば、外に出るか【世界屈折空間】へ行くかの選択ができるようになります」

「ありがとう。ちなみに、調査任務での目標とかって聞いても良いかな?」


以前、私の担当をしてくれた受付NPCにガスマスクをつけた状態で会いに行くと。

そのままスムーズに話が進んでいく。

共に来たメウラ、音桜も別の受付へ行っている為、話が終われば合流は可能だろう。


「目標は様々ですね。危険生物の駆除、現地での遺跡等の調査に始まり、もしも現地に住んでいると思われる住人が居た場合、その方との交流も目標となります」

「それは……エデンの発展、というよりは移動しなくても済む可能性が出てくるからかな?」

「そうなります。一定期間以上、同じ場所に留まるのが危険だからこそ、この移動都市が在るのですから」


危険生物の駆除、そして遺跡の調査は分かる。

片方は、もしかしたらエデンや他の……イベントの時に訪れたマヨヒガのような移動都市にとって危険な存在は、早々に片付けておかねばならないから。

そしてもう片方は、プレイヤー的な思考で考えるならば、このゲームのストーリーに関わるモノだからだろう。過去を知る、と言うことは未来に戦うべき敵の像を明確に出来る可能性があるのだから。


しかし、交流はまた別だ。

何せ、私達プレイヤーですらガスマスクなんて代物を作ってまで出ないといけない外で生きている住人なんて、どう考えても厄ネタかそれに繋がる何かでしかないだろう。

……私達が出会ってもスルーか、敵対くらいしか考えられなさそうだなぁ。

相手が友好的に接してきたとしても、それを返すように対応することはできない。

所謂、未知の病原体などを持っている可能性も無いとは言えないのだ。

警戒はどれほどしても足りない。


「うん、了解。ありがとうね」

「いえ、ではご活躍をお祈りします」


受付と別れた後、事前に待ち合わせをしていた場所へと向かうと。

既に私以外の2人が待っており、何やら困惑したかのように話をしているようだった。


「お待たせ。どうしたの?」

「いやな。ガスマスクのタンクなんだが……」

「これ、煙質も入れられるようなんです」

「……成程?」


私と同じように、【世界屈折空間】での戦闘を終えた2人は既に煙質を手に入れている。

どちらも、私が見せてしまったからか【怨煙変化】を手に入れてしまっているようだが……それとは別に、1種類ほどは獲得できていた筈だ。

……【狼煙】とか入れたとしても……自分の肺に入れるわけだから、あんまり意味ないよねぇ?


「どうして煙質が入れられるのか、って所だね?疑問点は」

「そうなるな。紫煙の加護ってもんがどんなもんかきちんと分かってはねぇが……それにしたって煙質なんてもん入れる意味は薄いだろ?普通のSTで事足りるんだから」


メウラ達の疑問は尤もだ。

私の様な使い方をしない限り、基本は煙質を操る事はしないし、したとしても先程私が疑問に感じたように吸う意味もない。


「ガスマスクの拡張要素かもね。今後のアップグレード次第で活きるのかも。……まぁ今考えてても仕方ないところではあるよ」

「ですね。……行きますか」

「だな。折角の外だ、楽しんで行こう」


疑問はそのままに、というよりも。

今考えても仕方がないことではある為に、先延ばしにして。

私達はそのまま中央区へと……そこにある門へと向かう事にした。



--紫煙駆動都市エデン・中央区


「パーティ募集ー!こっち前衛1の後衛2!」

「斥候担当でソロの人いませんかー!」

「後衛!後衛にならないか!なぁ君後衛だろ!?後衛になろう!」


中央区へと辿り着くと、何やらいつも以上に賑わっている様で。

門の周り以外でも大量にパーティ勧誘をしているのが目に取れた。

私達はと言えば、既に3人で固まっているし……何なら全員、管理区からガスマスクを付けた状態で来ている為か、話しかけられすらしない。


……一番は音桜の見た目だろうけどね。

何故か彼女の紫煙外装である御札が私達の周りに浮遊しているし、何ならいつの間にか雑面に描かれていた図形が般若のようになっている。

たまに通行人のプレイヤーが軽い悲鳴をあげている程だ。


「結構賑わってるねぇ」

「あれじゃねぇか?近いうちにイベントがあるだろ?それの為に連携とか深めときたいんだろ」

「防衛戦ですしね。私達は……普段通りやれば問題ないでしょうが、ソロや数が少ないパーティの人達は大変でしょう」


と言っても、私達も3人でしかない。

出来れば私と同じ前衛が1人欲しい所ではあるが……今更、ソロのプレイヤーを見つけるのも難しい。

どちらかの知り合いで良い人が居れば、と思っていたのだが……どちらも元々生産系。

あまり戦闘に重きを置いているわけではないプレイヤーなら居るようだが……そんな人に前衛を任せる程、私も性格が悪いわけでは無いのだ。


「ん……?」

「どうした?」

「いや、気のせいかな。いこう、ちょっと混んでるしサクっと」


そんな中、門へと向かって近づいていると。

私の感覚的な部分スキルが、何かを感じた。――否、何も感じなかったのだ。

視線等の五感系の感覚ではなく、もっと本能的に……いつもあまり深くは考えずに動かしているモノの感覚。

……【魔煙操作】とかかな。でもエデンの中だし、紫煙なら大量にあるし……気のせいだよねぇやっぱ。


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