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Episode24 - F


--マイスペース


「そういえば、誰かを招待するのってこれが初かも。メウラくんも入れた事無いし」

「あら、それは光栄ですね!」

「……テンション高いねぇ……」


やはりというかなんというか。

音桜のテンションは、先程と打って変わってかなり高い。

余程、知り合いの部屋に入るという出来事が楽しいようで、今も忙しなくマイスペース内へと視線が動いている。


……ルプスは……呼ばない方がいいな、多分。

従者が居る、というのを知られても問題はないだろうが、それを知った音桜が何をするかは予想出来る。

最悪、彼女がマイスペースから出てこなくなってしまう可能性すらあるだろう。

何せ、話も出来て此方をご主人と慕ってくれる存在が最大で3人も呼び出せてしまうのだから。


「あー、私は適当に確認とか消耗品の追加とかしてるから、そっちも適当にね」

「畏まりました」


音桜に何かしてもらう、というよりは。

彼女が満足するまでは此処に居てもらった方が、色んな意味で被害は少ないだろう。

ただの友達が少ない女の子が少し暴走してしまっているだけなのだから。

冷静になった時、彼女の頭の中がとんでもない事にならないと良いが。


……さて、と。私は確認作業……って言っても、今回はほぼ無いんだよねぇ。

そもそも新しく手に入れた物が今回はない。

目的だったガスマスク自体は、メウラが【世界屈折空間】から帰って来てからになるだろうし、それ以外に何か出来るとすれば……ボス戦の討伐報酬くらいか。

しかし、それも変なものがインベントリ内に入っている様子はない。


「んー……」


そして消耗品の補充、といっても。

今回使った『魔狼皮の煙草』も、別に今すぐ補充が必要というほど吸ってはいないし、そもそも戦闘自体を避けた上で攻略してきた為に、ほぼ回復アイテムすら使っていない状態なのだ。


……あ、菜園。

何かないか、と探した所……私の目についたのは【簡易菜園】だった。

普段から私も世話をしているものの、こうして呼べない状況でもない限り、基本はルプスが世話をしてくれている場所。

私の知らない何かが追加されていても、パッと見ただけでは気が付けない場所であり、こういう時間がある時に観ておくのも良いだろう。


「あれ、なんだろコレ」


上薬草を主に育てている私の菜園の中に、1つだけ知らない黄色の花があった。

手入れ不足によって、雑草でも生えたか?と思い抜いてみれば、


「げ、君そういう感じの奴か」


私の手の中で一瞬だけ怨念を纏ったのだ。

私だったから良かったものの、これがルプス達が雑草だと思って処理しようとしたらどうなっていたか。少しだけ怖い。


……えぇっと……それでこの花は……オトギリソウか。

今も手の中で怨念を纏おうとしては、どこかに霧散させてしまうそれは、現実でも存在している植物のオトギリソウ。

血止め草とも呼ばれる、薬に出来る植物のはずだ。


「で、花言葉は『恨み』、だっけ?怨念が集まって出来た感じかな、これ」


私自身にあまり影響が出ないように使ったとしても、こういう形で影響が出てくるのであれば……まぁ有効利用できるようにするしかないだろう。

怨念を纏う、という性質を使えば色々と悪さは出来るだろうから。


「よぉーし。色々作れるのを見てから判断するかぁー!……ごめんごめん、音桜ちゃん。待たせたね」

「いえ、大丈夫ですよ。問題とかありませんでした?」

「うん、全然問題ない。補充も後で大丈夫だったしね」

「それは良かった」


音桜の元へと戻り、適当な雑談をお互いに煙草を吸いながら始める。

行儀が悪いだとか言われてしまいそうだが……このゲームではこれが普通の光景なのだから。

途中私が上薬草の紅茶でも淹れようかと思い、適当にその場で作ろうとした途端、ルプスが勝手に出てきて大騒ぎになったのは……まぁまた別の時に。




――――――――――

プレイヤー:レラ

状態:魔煙術後遺症軽度:昇華煙


・紫煙外装

『外装二式 - 亜器型一種』


・所有スキル

【煙草製作】、【観察】、【フィルター加工】、【背水の陣】、【回避】、【過集中】、【魔煙操作】、【隠蔽工作】、【複製】、【状態変化】、【投げ斧使い】


・装備

赤き信仰のボディス、赤き信仰のドレススカート、赤き信仰のグローブ、赤き信仰のロングブーツ、赤き愉悦の外套、『信奉者の指輪』、『四重者の指輪』、『真斬のピアス』、『解体者の指輪』、『切裂者の指輪』


・煙質変化

【狼煙】、【怨煙変化】

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