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Episode23 - B?2


自身の手に怨念が纏わりついていないのを確認してから、耳元のピアスに触れる。

今回はほぼ何もなく終わったようなものだが、それでも気掛かりではあったのだ。

あの時聞こえてきた声のようなものもなく、本当に杞憂でしかなかったようだが。


「レラ、アレはいつまで続くんだ?」

「んー私のST次第かな。今も吸って回復はしてるけど……ふぅー、まぁそこまで長くは続かないだろうし、拘束自体も私だけで大丈夫」

「成程な……聞きたいけど聞けねぇ事が増えちまったな……」


恐らく、メウラ的には拘束時間よりも【怨煙変化】や【狼煙】についての方が聞きたいのだろう。

一撃自体が大きかった私が、それを補強するように使っている代物だ。

だが、メウラも近いうちに……というか。

早ければ今日中に知る事が出来る概念ではあるのだから、それを早く教える意味も薄い。

プレイヤー自身のプレイスタイルが関わってくるのだから、私と同じようなものを得る可能性だって低いのだから。


……あ、【怨煙変化】見せちゃったけど……2人の煙質修得に影響出たり……しないといいなぁ。

どちらかと言えば、私が心配すべき事柄はこちらだろう。

ほぼ確実に、【怨煙変化】を修得した背景には『想真刀』が……怨念という概念が関わるコンテンツに触れたからという理由が存在しているのだから。

後で2人にはそれとなく【魔煙操作】の修得を勧めておく事にしよう。

アレがあるかないかで確実に怨念に関わるものの利便性が変わってくるのだから。


「それにしても、レラさんの紫煙外装の能力凄いですね……電気ですか?アレ」

「電気だね。形が変わってるのはスキルで無理矢理。色についてはー……まぁメウラくんはあと少し、音桜ちゃんは他のダンジョンもクリアしてきてねって感じで」

「ぁー……成程?ダンジョンクリアに関係するコンテンツってわけだな」

「情報規制の対象の1つでしょうね。こればかりは気になっても、自身で足を進めないと仕方ありません」


ほぼ雑談のような状態にはなっているが、私達は別に気を抜いているわけではない。

私は言わずもがな。

メウラは紫煙駆動を一度解除したのか、紫煙外装の人形を3体程出現させ、いつでも攻撃出来るように『切裂者』を包囲している。

そして音桜は音桜で、私のスキルによって抵抗されている事に気が付いたのか、紫煙の障壁をボス本体から離れた位置……怨念の影響を受けない位置まで下がらせた上で多重に展開している。

いつ、どういう風に動いても問題ないように、各々が準備している結果、ほぼやる事が無い状態が生まれているだけなのだ。


……でも、ま。もう終わりかな。

紫電、そして怨念によって削られていく『切裂者』のHPはもう残り少ない。

このままでも問題なく倒す事は出来るだろう……ものの。念には念を、という事で。

私は手斧の羽根を1枚千切り、軽く構えた上で【過集中】などのスキルも発動させ投擲した。

瞬間、手から離れると同時に手斧が2つに分裂し『切裂者』へと到達し……その頭部であろう部分の靄に命中する。


【『切裂者』を討伐しました】

【MVP選定……選定完了】

【MVPプレイヤー:メウラ】

【討伐報酬がインベントリへと贈られます】


「……ん?」

「俺かぁ?」

「これは……どういう事でしょうか?」


ログが流れ、『切裂者』が消えていくのは別に良い。

しかしながら、内容が問題だ。

明らかに、というか。ボス戦での貢献度的な話をするのであれば、途中までは確かにメウラがMVPで合っているだろうが……ほぼ後半にかけては私が削り切ったようなものだ。

だというのに、私がMVPではなくメウラがそれに選ばれている。


「んー……考えられるのだと……メウラくん、今回使った素材って?」

「そりゃ余りに余ってる影道化だな」

「じゃあ素材の線はない……ってなると、後考えられるのは……」

「……あ、紫煙外装の等級とかじゃないですか?」

「「あ」」


紫煙外装の等級によって、MVPを取れるか取れないかが決まる。

あり得ない話ではないだろう。

今回のあっさりとした戦いも、私の手斧の性能自体が向上していたからこそ相手に基本何もさせずに終わらせる事が出来たのだ。


それに、今挑んでいた【霧燃ゆる夜塔】は等級強化前に挑むダンジョン。

そこに等級強化後のプレイヤーと強化前のプレイヤーが共に挑んだら……まぁ、今回と似たような事になるのは明らか。

これでも私の紫煙外装の攻撃性能はあまり高いとは言えないのだから。


「MVPを1プレイヤーに集めすぎないとか、そういう類の措置かな?」

「それか、等級が上なんだから1人で余裕で倒せるだろ?って感じかもな。バフ系付与とか回復系でも等級強化されてりゃ問題ないくらいにはなるだろ」

「私の紫煙外装でも倒せますからね」

「……ま、これについては後で運営に問い合わせておこうかな。仕様にしてもバグにしても、どこにも明記されてないしねー」


あっさりしていても、終わりは終わり。

メウラは再度消耗品などを整えた後、【世界屈折空間】の扉へと向かうらしく解散。

音桜はまだ私に付いてくるようだったので、どうせならと私のマイスペースへと招待する事になった。


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