「えーっと、まずは何が作れるかの把握から……」
設定画面自体は一旦置いておいて。
私はこの作業台で作れるモノについて確認する事にした。
何と言っても作業台、何かを作るための施設なのだ。それを把握しなければ正しくかどうかは分からないが、使うこともままならない。
スクロールバーを下へと動かしていくと、大きく分けて2種類のモノが作れる事に気がついた。
1つは、これまで使っていた消耗品類の上位互換品。
素材として相応のSTと実物が求められるものの、確実に効能が高まったモノを得られるのが魅力だろう。
そしてもう1つは、
「……素材、だなぁ。それも中間素材ばっかり」
素材とSTを組み合わせて作る、中間素材類だ。
煙草製作を例に挙げるならば、フィルターや中に入れる葉の代わりなど、それらを作り出す事が可能。
しかしながら、自由に、何の中間素材でも作れるわけではない。
「成程。対応してる生産スキルがあった方が良いわけだ」
例えば、鉄のインゴットとSTを組み合わせて作り出せる煙鉄のインゴット。
これを安定した品質で作り出すには、【鋳造】や【金属加工】などといった関係のあるスキル群を修得している必要がある。
無論、修得していなくとも作り出す事は可能だ。
しかしながら、毎度毎度品質にかなりのブレが出てしまうようだった。
「……1個目に作ったのは品質がCなのに、2個目はF-……振れ幅大きいなぁコレ」
私の場合、持っている生産系のスキルは【煙草製作】と【フィルター加工】の2種類のみ。
ちょくちょく菜園の方を弄って農耕系のスキルが生えないか試しているものの、未だ生えてきていない。
……受付さんが言ってたのは……ガスマスクだっけ。
ガスマスクを作るには、仮面のようになっている部分に加え、空気中の有毒物質や粉塵などを除去出来る吸収缶と呼ばれる部品や、物によっては呼吸を助ける吸気用の装置なども必要となってくる。
このゲームがどれ程まで現実に即した生産過程を踏むかはきちんとは知らないものの、それらが必要無いとは思えない。
「これは……中間素材は私で作って、組み立てとかはメウラに任せた方が良さそうだねぇ」
掲示板で色々と調べてみると、中々に複雑ではありながら様々な種類のそれを作る事が可能らしい。
その中でも私は、今手元にある素材で作れそうなものを選ぶことにした。その分、顔全体ではなく下半分……鼻と口だけを覆う形にはなってしまうのだが。
「あ、デザイン系の人もいるんだ。……どうせ周りに見える部分だし、統一感欲しいよねぇ……」
メウラに外見部分のデザインを任せても良いのだが、流石に組み立てからデザインまで任せてしまったら中々に悪い気がしてくる。
こういう時に
生産職向けに流用出来るデザインを載せている掲示板を見ていると、
「『お困りでしたらご連絡ください』か。良いじゃん」
丁度良く、というかなんというか。何個かのデザインを載せているプレイヤーの書き込みを発見する事が出来た。
デザインも私好みのモノが多く、頼めば今の装備に合うデザインを考えてくれそうだ。
……連絡は……中間素材作り終わったらしておくか。
掲示板経由で、そのプレイヤー……『音桜』に対してのメッセージ画面を開きつつ。
私は手元の作業台へと視線を向けた。
中間素材と言っても、かなりの種類が存在している。
その中でも、やっぱりネックになってくるのは吸収缶の部分だろう。
フィルターの作り方なんて知らない私にとって、必要素材を見ただけではどう作るのかも分からない。
「……いや、待って?なんで素材に煙草用のフィルター使ってるんだコレ?」
ふと疑問に思い、きちんと必要素材に目を通してみれば。
そこに書かれていたのは布などの想像しやすい素材ではなく、私のインベントリ内に入っている昇華、具現用のフィルターなどの煙草に使う為のフィルターだった。
それも1つ、2つなどの数ではなく、10本単位で必要とされている。
「あ、あー……もしかして、紫煙が第一の世界だからそういうのも除去できちゃうって事?……変にリアルな部分とこういうファンタジーみたいな所があって混乱するな……」
何にせよ、分かりやすくはなってきた。
必要だった素材……煙鉄のインゴット数個と、煙草用のフィルターを数十本、そしてSTを消費する事で目の前の作業台が稼働を開始する。
独りでにインゴットが形を変化させていき、光の球となったフィルターがそれに吸収されていく。
最終的に紫煙がそれらを覆って……何故かきちんとした缶のような形へと変化して完成だ。
【『中間:
恐らくこのクラフトの流れをどれほど省けるかによっても品質云々が変わってくるのだろう。
インゴットを缶の形に変化させたり、最後は無理矢理に綺麗な形にしたりと、ST……紫煙が担っている部分が現状多すぎる。
……こういう所で必要になってくるのが、対応してるスキル群なんだろうなぁ。
金属を加工する事が出来るスキルがあるならば、インゴットをそれらしい形にしてから製作を開始出来るはずだ。
既に加工されている昇華用、具現用のフィルターが素材として選択出来たのだから、それが出来ないとは思えない。
「いやぁー……やっぱり一通りは出来るようになっておいた方が良いかもしれないなぁ……それか、メウラくん以外にも生産職の知り合い増やすか……」