試しに【投げ斧使い】を見てみると、
【ラーニング可能なスキルです】
【前提スキル:【投擲】、【斧の心得】】
【必要素材が足りていません:????×5、????×1】
【前提スキルの熟練度を素材の代用として使用可能です】
「成程、熟練度消費。それに【投擲】と【斧の心得】か……」
予想通りと言えば予想通りだろう。
今まで、投擲という行動全般にボーナスがついていたスキルと、斧という得物を扱う事にボーナスがついていたスキル。
それらを組み合わせ、『斧を投げる』事に対してボーナスを得られる様にするスキル、という認識で良いはずだ。
ならば、と【狙撃手】の方を見てみれば。
こちらは【投擲】と【観察】が前提になっているスキルであった。
「んー、斧を投げる事に特化するか、遠くから狙う事に特化するかの二択ってわけだ」
どちらも私にとっては悪くないスキルであり、十二分にその性能を扱うことが出来るだろう。
しかしながら、
「ま、選ぶなら【投げ斧使い】だよね」
今までの戦闘内容を思い出し、どちらがより有用なのかは判っている。
しかし、これを修得する前に確認すべき事が何個かあるのも事実だ。
「えーっと……あったあった。『合成すると、元のスキルは消えてしまう』。熟練度はそのまま、修得から未修得になっちゃうわけだ」
スキルを合成するのに、スキルを素材としているわけだから十分予想出来ていたデメリットではある。
だが、素材さえあれば自由に修得できる環境である為に……まぁ、そこまで気にしなくても良いデメリットだろう。
「で、だ。……あー、成程?『現状、確認している不具合』……うん、あったねぇ」
そしてもう一つ。
ついこの間入ったアプデで発生してしまった不具合の中に、『熟練度が貯まっていてもスキルの能力追加が行われない』という項目が存在しているのを確認できた。
これが今回、私が知らず知らずのうちに巻き込まれていた不具合だろう。
……近日修正予定、って事はもうほぼ修正パッチは出来上がってそうだなぁ。
それも、早ければ今週中に修正されるもの。
つまるところ、ここで私が取れる選択肢は再び二つある。
一つ目は、このままスキルを合成した上で、再度【投擲】を始めとしたスキルを修得する。
二つ目は、スキルの修得を行わず、他の作業に従事する。
どちらもアリな選択肢であり、間違ってはいないだろう。
必要な素材に関しては……まぁ掲示板経由で確認、適当にプレイヤーと交換すればいいだけの事。
「……ま、どれくらいでパッチがくるか分からないしぃー……」
私は掲示板でそれらを調べた後、
【【投げ斧使い】をラーニングしました】
【【投擲】が未修得状態となりました】
【【斧の心得】が未修得状態となりました】
いまいちラーニングの方法が分からない【観察】を失うよりも、普段通りに戦っていれば再度ラーニング出来るであろう【斧の心得】を捨て、新たな力を手に入れる事にした。
と言っても、やろうと思えば今すぐにでも再修得出来るのだが。
「ま、【投げ斧使い】だけでどれくらい補正が掛かるか分からないし、一旦そのままにしとこう」
過剰火力は嫌いでは無いが、スキル単体の恩恵が分からないというのも
……おっと、危ない。確認はしとかなきゃね。
逸る気持ちを抑え、新たに得たスキルの詳細を開き、その内容を確認する。
これでいざ実戦時に【背水の陣】のような普段発動しない方が良い類の制限が付いていたら目も当てられないのだから。
――――――――――
【投げ斧使い】
種別:汎用
段階:1
熟練度:0/100
制限:斧使用時のみ発動
効果:投擲の
投擲時与ダメージ
投擲関係の行動に対してボーナス(中)
――――――――――
「うん、予想通りだ」
言ってしまえば、【投擲】と【斧の心得】を足して制限を加えただけの内容。
しかしながら、ここからこのスキルは強化されていくのだ。十二分に将来性はあるだろう。
「よぉーし……じゃあ熟練度貯めていこう」
能力の追加は今は起こらないものの、使用感を掴む程度は問題ないだろう。
それに、熟練度が低いスキルにはそもそも不具合とか関係ないのだ。
もう少しで熟練度が貯まりそうな【魔煙操作】や【状態変化】と違い、【複製】や【隠蔽工作】なんかは追加の能力次第では化ける可能性だってある。
今までは消費が多かったり、必要が無かったから使っていなかっただけなのだが。
【背水の陣】については……時間が解決してくれるだろう、多分。
「……って、もうこんな時間かよ。ルプス、今日はもうログアウトするから作業終わったら帰って来てー」
『畏まりました』
と、程よく良い時間だったため、今日のプレイはこんな所で終わっておこう。
恐らく明日になれば、メウラから各種指輪を受け取る事が出来る……はずだ。
そこからは紫煙技術関係、そしてダンジョンの攻略に再び本腰を入れられる。
……まずは、昇華煙と具現煙用の結晶集め。紫煙技術の内容によっては……そっちもありか。
道筋は決まっていない。
煙草を吹かしながら、適当に、その場の好奇心で決めていけばいいだろう。