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Episode7 - F


『……失礼ですが』

「うん」

『ご主人様、何かお忘れでは?』


一連の流れをルプスに話した結果。

私はマイスペース内の椅子に座らされていた。

『四重者の指輪』に関係する事柄の為、修得に使う前に話しておかねばならないと思っていたのだが……一体私が何を忘れていると言うのだろうか。


「忘れてる事?……あっ、特殊戦利品の詳細確認?」

『それではなく……ボス素材を使って、指輪を作れるのでは?』

「あっ」


以前、『信奉者の指輪』を得た時の事。

MVP報酬の物に比べ、少し質は落ちるものの似たような効果を持った指輪を作る事が可能である、と掲示板から情報を拾ったような記憶がある。


「そういやそうだったねぇ……うん、本当に忘れてた」

『指輪は装飾品ですから……メウラ様ですか?』

「頼むとしたらそうなるね。ログイン……してるね。よし」


MVP報酬でなくても問題がないのであれば、中々救いがある。

それこそ、『信奉者』と『四重者』は素材が有り余る程度にはストックしてあるし、他2体に関しても足りていない部分を集めれば良いだけの事。

他プレイヤーの出店などを回れば物々交換で買い取ることも可能だろう。


「いやぁ、ありがとう。これで問題なかったら色々余裕が出来るよ」

『いえ、サポートするのが役目ですから』


こちらに頭を下げるルプスに礼を言った後、私は娯楽区へと移動した。



--紫煙駆動都市エデン・娯楽区


「ふむ……これなら指輪1個ずつ造るくらい余裕だな」

「あ、『解体者』と『切裂者』の素材も大丈夫?」

「問題ない。他の装備を造るってんだったら足りねぇが、指輪1つに使う素材の量はそこまで多くはねぇからな」


素材を手渡し、造ってほしいものを依頼すると意外な答えが返ってきた。

と言っても、私はこのゲームの生産系コンテンツには煙草か作物系にしか触れていない為、本当にどれくらい使うのかよく分かっていないだけなのだが。


「で、どうしてまた普通の方の指輪なんて造る必要が出てきたんだ?MVPの方全部持ってんだろ」

「……どうだろ、通じるのかなコレ」

「……あー、そういう事か?」

「そういう事そういう事。多分縛りの範囲内だと思う」


【紫煙技術】が本当に情報共有の縛りの範囲内なのかは分からないものの。

そうじゃないと決めつける事も出来ないだろう。何せ、この話題が出てきたのは私が【世界屈折空間】の扉を攻略?して、管理区の受付で話を聞いてからなのだから。

それこそ、今少しばかり掲示板を覗いてみたが……今まで見た事のないスレッドが何個かあるのを確認出来てしまっている。

……メウラが察し良くて助かるな本当。


「だから、今は何も聞かないで造ってもらえると助かるね」

「了解。代わりに俺の攻略手伝ってくれよな」

「……あと何処残ってるんだっけ?」

「【夜塔】だな」


聞きたくなかったダンジョンの名前が出てきてしまった。


「おい露骨に嫌そうな顔するなよ」

「いやぁー……【夜塔】、【夜塔】でしょー……?私そこで死にかけてるんだけど……」

「でも勝ったんだろ?」

「勝ったと言えば勝ったし、負けたと言えば負けたと言うか……」


正直、『切裂者』には勝った実感は未だに無い。

あれは特殊な状況が重なって起きた偶然の勝ちであり、運は実力の内を信じる私でもアレは自らの実力だとは言い難い状態なのだ。

……まぁ、『切裂者』にはどっかのタイミングで挑もうかと思ってたから、丁度良いっちゃ良いんだけど……。


「よく分かんねぇな」

「私もよく分かってないんだよ。……1回、ソロで挑んでみて、ダメだったら私呼ぶとか大丈夫?」

「まぁ1回くらいは自力でのチャレンジはするつもりだけどよ……そんなにか?」

「そんなにだよ。私ちょっとトラウマになりかけてるよ」


ほぼ歯が立たなかった上に、両腕まで切断されたのだ。そりゃあトラウマにもなるだろう。

散々自分で、このゲームの戦闘難度の高さについて考えていたのにも関わらず、『解体者』が余裕だったのもあって少し調子に乗ってしまったのだ。多分。

これからは十分油断無しに、好奇心には従って戦っていきたい。

……まぁ、でも。多分初戦闘とは全然違う感じにはなると思うけどね。指輪もあるし。


『切裂者』本人から得た指輪。その効果によって、今の私は危険な場所が分かるようになっている。

反応速度さえ間に合えば、『切裂者』の斬撃全てを避ける事も可能だろう。

問題があるとすれば、初戦は過剰供給状態の昇華煙に加え、【過集中】などのスキルでステータスを盛っていたのにも関わらずボコボコにされている所だろうか。

もう少し簡単にステータスの増強が出来る何かを用意しないといけないのかもしれない。


「ま、何にせよ少し待ってくれ。4つってなると……多分明日くらいには出来上がってるからよ」

「了解。じゃあ適当に待ってるよ。こっちも確認作業が溜まってるからさ」


その後、他愛無い会話を煙草片手に交わした後、私とメウラは解散した。

……次はやっと、特殊戦利品の確認かな。


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