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Episode6 - OR


言ってしまえば、ボスの指輪自体は一部を除いて再度取ってくるのは面倒ではない。

『信奉者』はたまにスパーリングに使っているし、『四重者』はメウラと共に何十体も倒した相手。

『解体者』は……まぁ適当にやってたら問題ないと言える程度だ。

しかしながら、『切裂者』だけは問題がある。


「『想真刀』が出てきたから勝ったようなものだしなぁ、アレ」


気になって掲示板で調べた所、人によって強かったと思うボスは違う様で。

私と同じ様に『切裂者』だったり、『信奉者』が一番辛かったという人もいる程度にはプレイヤー毎の認識に差が出ているのが現状だ。

検証班によれば、一番最後に攻略するダンジョンのボスは強化されて出現するのではないか?という推測がされているらしいものの……それを確定情報として扱うには情報が足りていないらしい。


……手斧、強化したしイケるか……?

勝てるか勝てないかと言われれば、恐らく勝てるだろう。

しかしながら、あの強さが初回限定とは思えない為……行くならば、メウラ辺りを連れて行った方が無難に終わるはずだ。


「あー……詳細の確認もしないとか」


すっかり忘れていたものの、元々しようと思っていた確認作業も出来ていない。

ボスに挑むならば、何より先にそれらを確認すべきだろう。

適当に椅子に腰掛けつつ、私は紫煙外装の詳細を呼び出し、


「……え、何これ。強くない?」


少しだけ引いてしまった。


――――――――――

『外装二式 - 亜器型一種』

等級:弐

形状:手斧


通常駆動:投擲時自動回収1s

     分裂効果コスト消費

     制限:分裂数は(等級×等級)/2を超える事はない


紫煙駆動:紫煙による手斧の複製

     制限:複製数は等級を超える事はない

     紫電の発生、放出ST別途消費

――――――――――


私が新たなる可能性とやらを選んだ結果だろうか。

今までの簡素だった能力に色々と突っ込みたい部分が追加されている。


「えぇっと、まず分裂機能って試せるのかなコレ……」


手斧を呼び出し、分裂機能を使ってみようとするものの。

思考操作では上手くいかないようで、分裂する事はなかった。

……これ、マイスペース内じゃ無理かな?紫煙駆動は……やったら修復するの大変そうだし。

とりあえず、という事で。

私は素材回収も兼ねて、【峡谷の追跡者】の1層へと移動し、セーフティエリア内で色々試してみる事にした。


「うん、強いは強い」


そうして分かった事は、分裂機能は使い処さえ間違えなければ強い代物だ、という事だ。

使い方は単純で、意匠だと思っていた鷲の羽根を千切る事で効果が発動。

投擲時限定で分裂し、分裂した手斧は何かに当たるか一定距離を進んだら紫煙となって霧散する。

手斧が戻ってきたら効果終了で、再びコストを使わない限りは分裂しない。

鷲の羽根の回復速度は分からないものの、10分程度では回復していない事から、あまり気軽に使えるものではないだろう。

しかしながら、


「【複製】だとダメだった耐久面はクリア出来てるね」


今まで考えていたものの、コストと耐久面から出来なかった手斧の大量投擲が現実的なものになってきた。

等級が上がればその分だけ出来る事が増え、尚且つ大量展開も出来るようになっていくと考えれば……将来性は十分だろう。


そして紫煙駆動。

こちらは分かりやすく、起動時に発生する紫煙の斧の数が等級と同じ数……2つに増えてくれた。

当然【魔煙操作】での操作は有効で、近接用、投擲用と分ける事が出来るようになったのは大きいだろう。

更に、追加された能力として、


「紫電の発生は思考操作で良い、と。うん、便利」


STの消費によって、紫煙の斧から紫電が発生するようになった。

消費量は全体の1割程度ではあるものの、私のスタイル的には少し厳しい量でもある。

だが、その分使う意味はしっかりある。


『『『ガゥッ!』』』

「お、丁度良い。ほいほいっと」


こちらを遠くから発見したのであろう狼達に向けて、紫電を纏った紫煙の斧を投げつける。

すると、だ。

紫煙の斧が1体の頭部に命中すると同時、纏っていた紫電が周囲に居た狼達へと伝播するように放出され、その身を黒く焦がした。


「欲しかった能力だね、範囲殲滅」


どれくらいの距離に作用するかは分からないものの……紫電を使う事で今まで以上に広範囲の敵を倒す事が出来る。

STの消費を考えても十二分すぎるくらいには強力で便利な能力と言えるだろう。

確かにコレがあれば『切裂者』に対してもある程度余裕を持って戦えるかもしれない……が、かもしれないで突撃するほど私はバカではない。そこに好奇心に変わるものは今のところ見つかっていないのだから、慎重に行くべきだ。


「……何にせよ、一旦ルプスに相談してから『四重者』かな」


一番影響が出るとすれば、今や殆どの消耗品を生産してくれている従者関係だろう。

次点で【簡易菜園】関係の『解体者』だろうか。

どちらにしても、一度ルプスに相談し指輪を失った場合どうなるかの確認をしてから挑むべきだ。


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