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Episode5 - PT2


「まず、紫煙技術について説明しましょう」


受付がそう言うと共に、私の目の前にウィンドウが出現する。

そこに書かれていた内容は、これまで何度か体験してきた事だった。


「そこに書かれているように、紫煙技術というのは紫煙の持つエネルギーを使い、変化をもたらす事が可能な技術の事を指します。煙草製作で言えば、素材の持つ有害な要素を変化させ人体に無害な状態にする……などですね」


このゲームにおいて、紫煙には様々な力が込められている事は既に分かっている。

例えば、魔煙術。

かなりの多用をしているが、身体の外見も、ステータスも変化するような力が紫煙に含まれている現実ではあり得ない代物だ。……こちらで使い過ぎて現実の仕事中に頭の耳を動かそうとした事もある。

これだって、紫煙技術の1つと言えばそうなのだろう。

何せ、身体に『変化』をもたらす事でステータスに作用するものなのだから。


他にも、最近設置した【簡易菜園】なんかもその筈だ。

灯りなんて碌に設置していない部屋の中で、問題なく成長する植物達。

これも、植物に『変化』をもたらす事で光などの細かい所は関係なく成長するようになっていると思われる。

……改めて思い返すと、詳細を知らないだけで結構使ってはいるんだなぁ。紫煙技術。


「さて、恐らく心当たりが何個かあると思いますが、今後はそれを自由に扱えるようにする為の許可証を発行します」

「許可証?……試験とか行うのかな?」

「いえ、これも紫煙外装が二式に至った人には無条件で配布、適用されるものです。そも、紫煙技術は未だ未知が多い技術ですので……」

「あぁ、知識を試す程、成熟していないのか。世界が」

「そういう事です」


受付の申し訳なさそうな顔に笑いかけながら。

私は少しだけ肩を落とす。

……ここじゃ、紫煙技術については満足に知る事が出来ない、と。

好奇心に身を任せ、他の用事を置いてこちらに来た私が落胆するのは少し違うと思うものの。それでも、目的がほぼ達成できない状態で帰る事になるとは思わなかった。


「はい、ではこちら……『紫煙技術使用許可証』となります。これがあれば、マイスペース内で紫煙技術用のクラフト台が購入、設置できるようになりますので」


受付のその一言で、心の中の種こうきしんが復活するのを感じた。

我ながら単純というか、中々分かりやすい性格をしているものだ。


「あぁ、さっき言ってたガスマスクを作ればいいわけだね?」

「えぇ。お手数ですが、ガスマスク製作が終わり次第、こちらにまた来ていただけると幸いです。確認次第、レラ様が調査依頼を受注、外に出て活動出来るようにしますので」


その後、受付に気になった事……許可証がない状態で紫煙技術を使ったらどうなるのか等を聞いた後、私はその場を後にした。

足早に、というと受付には悪い気もしないでもないが、それでも気になるものは気になるのだ。

何せ、今まで気になっていた技術が今後はマイスペースで扱えるようになったのだから。



--マイスペース


『お帰りなさいませ、ご主人様』

「うん、ちょっとマイスペース改造するから、ドゥオやトレス、あとウヌスも戻ってもらえる?作業中?」

『いえ、問題ありません。では、また』

「はい、また」


ルプスを戻した後、私はマイスペース内にまた1つ部屋を増設した。

作業部屋から新たに繋がるように設置されたその部屋は、1つの特殊なクラフト台が置かれているだけの小さい正方形の部屋だ。

飾りっ気も何もないものの、今はそれでいい。


「紫煙技術の方が重要だしね」


私にとって、現状重要なのはそちらなのだから。

新たな作業部屋に設置したクラフト台……『紫煙技術用初級クラフト台』と名のついた、何やらボンベのようなものが左右に付いている鉄製の作業台に触れてみる。すると、


【紫煙技用初級クラフト台を起動します】

【ユーザー認証……完了。プレイヤー名:レラ】

【該当スキルを獲得していない為、製作成功率及び効能が著しく低下します:【紫煙技術】】


「あーちゃちゃ、これもスキル持ってた方が良い類か」


許可証があるから大丈夫かと思ったが、そうでもなかったようで。

やはり生産系に関してはかなりスキルに依っているゲームらしい。

スキル修得用のメニューを開き、【紫煙技術】というそのままの名前のスキルを探してみると……確かに修得可能スキルの中に存在していた。


「あー……マジか。そういう事ね」


だがしかし、その修得に必要なアイテムを見た所で色々な意図が分かってしまった。

そこに書かれていたのは、


「各種、ボスの指輪……かぁ……」


色んな意味で、今すぐには使えないものだった。


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