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Episode14 - D3


用意していた紫煙の手斧達を、鏡へと殺到させてみるものの。

その全てが複製され、空中で相殺されてしまう。

私自身が近付き攻撃しようとしても、私のコピーらしきものが一瞬出現し、攻撃全てを同じ威力で受けられる。

ここまで直接ダメージは与えられていない。

しかしながら、


「減ってはいる、んだよねぇ」


【観察】によって出現しているHPゲージは、僅かに減っていた。

この時点で、私は鏡の能力……というよりは。鏡の攻略法に1つの仮説を立てた。

……ちょっと壊れてないランタンに影出現させて引っ張ってくるか。


鏡は動かない。

そもそも他と同じ様に意志があるのかも不明だ。

だからこそ一度この場を離れても問題ないと判断し、私は2層の残っているランタンを探し始めた。



数分後。

影を大量に引き連れている状態で私は戻ってきた。付かず離れず、攻撃が届かない速度で丁寧に誘導してきたのだ。


「よぉーし、物は試しってね。こういう試行錯誤も楽しいものさ」


これまでやってきた、地道に待って誘導などする必要はもうない。

私は周囲の紫煙を固形化させると共に、手の形へと変え影達の身体の一部を掴んだ上で、適当に鏡の方へと……影の身体の一部が映るような位置へと移動させていく。

すると、だ。


「おぉー増えてく増えてく」


一部でも映ったからか。

鏡からは影の複製達が湧き出るように出てきてはこちらへと走り出す。

すぐに消えない、というか。私の攻撃や投擲と言ったある程度の勢いを伴って近づいたわけでは無い為か、しっかりと複製もオリジナルもこちらを認識しているようだった。

その上で鏡のHPを観てみれば……削れてはいない。だが、それでいい。

ここまでは予想通りなのだから。


「……さぁって、頑張りますかぁ!」


インベントリ内から新たに数本の煙草を取り出しながら、私は紫煙駆動を起動させ。

広域へと攻撃が出来るように僅かな時間を使って準備を重ねていく。


私が立てた鏡の攻略法の仮説は、言ってしまえば凄く簡単ではあるものの……実行するとなればかなり面倒なものだ。

そもそもとして、私の攻撃や紫煙の手斧が相殺されていたのにも関わらず、鏡のHPは僅かに削れていた。

これは、鏡の能力が単純な複製ではなくHPを伴う制限があると考えられるものだ。


……ただ、再現なく複製してたら鏡のHPはすぐになくなってしまう。

だからこそ、影というランタンを潰さない限りは幾らでも湧き出て、尚且つ私しか襲わない相手を用意した。

後はHP消費のトリガーがどこにあるのか確かめるだけだ。


「一発目ェ!」


手斧と共に、紫煙の斧が影達の群れへと着弾し。

その多くを吹き飛ばしていく中、私は鏡のHPを確認して笑みを浮かべた。

先程まで削れていなかった鏡のHPが、三分の一程度減っているのだ。


「ビーンゴ」


鏡による影の複製は止まらない。

既にどれがオリジナルか複製なのかは私には分からないものの……近づいてきた影の全てを相手にすれば、その分だけ鏡のHPが減っていくのだから、いつかは終わる戦闘だ。

ならば、試したいと思っていた事を試し尽くしていこう。

紫煙を操りながら、手斧を振るいながら、紫煙の斧を躍らせながら。

私は影達との戦闘を開始した。




戦い初めて数分後。

空間内に突如、鏡の割れる甲高い音が響いた。

その瞬間、私の目の前で武器を振るおうとしていた影は消え……それ以外の影達も、約半数近くが消えていくのが見えた。


【シラーを討伐しました】

【ドロップ:鏡の破片×1】


「よし、最適解では絶対ないけど合ってはいたみたいだねぇ」


ログが流れたのを確認し、私は一息――つこうとして、まだ近くに影が残っているのを思い出す。

次相手をする時は、せめてもう少し数を少なく出来る相手を用意したほうがいいな、なんて事を思いつつ。

私は手斧を振るい続けた。


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