目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
Episode12 - A&D1


次の日。

現実での仕事を終わらせた後、マイスペースへとログインした私が最初にしたのはアップデートの確認だった。

と言うのも、リアルの日中に行われたPvPイベントの本戦の後に予定されていた大型アップデートの内容が、思ったよりも多かったからだ。


「えぇっと……色々あるなぁ……」


私に関係のある部分は、大まかに分けて2つ。

1つは、前もって予定されていたスキル関係の追加や修正だ。

……ん、熟練度の表示バグってたのか。


丁度いいので、説明文も短い【状態変化】を確認してみれば。

パッと見ただけでもそれなりに変わっている事が分かる。

昨日までの表示は、


――――――――――

【状態変化】

種別:汎用

熟練度:41/100

効果:触れた物の状態を変化させる

――――――――――


だったのに対し、今現在のアップデートによって、


――――――――――

【状態変化】

種別:汎用

段階:1

熟練度:41/100

効果:触れた物の状態を変化させる

――――――――――


となっている。

他の【投擲】や【魔煙操作】など、既に追加の能力を得ているスキルに関しては段階の部分が2となっており、熟練度の部分もそれに伴って百の位が修正された数値になっている様だ。


「見にくいなぁとは薄々思ってたんだ」


修正された上、現在の段階まで分かるようになってくれたのは素直にありがたい。

そして追加は、以前から予定されていたスキルの削除等が行える様になったとの事だが……こちらは後で確かめれば良いだろう。

正直、今ハウジング関係を始めてしまうと時間が取られ過ぎてしまうし、エデンの方に設置されているものを使いたい理由もない為だ。


「えぇっと、次が……ダンジョンに関しての変更、追加」


そしてもう1つの関係のある所と言えば……ダンジョンについてだ。

私に関係のない所だと……広域殲滅系の紫煙駆動によってダンジョンを構成する壁なども壊れてしまっていた事などの修正が入っている。

私の全力の攻撃でも壊れるまでは行かなかったものを壊せるプレイヤーがいると考えると……上は見上げてもキリがないと再認識してしまう。

そして私に関係あるのは修正の方ではなく、


「うん、こっちは便利だ。『攻略済みの階層に直接アクセスする機能を追加』。有難いねぇ」


攻略済み階層に直接アクセスできる、という事は。

今まで頑張って走っていた【峡谷】や、道化師達をなぁなぁで対処しながら進んでいた【地下室】の大部分をカットしてボスマラソンが出来るという事だ。

これが出来るか出来ないかで、今後の素材の収集効率がかなり変わるだろう。

それこそ、今後挑むダンジョンで私の装備に使えるボス素材も発見できる可能性だってないわけではないのだから。


「確認終了ー。他の部分は関係するようになったら見ればいいし……行こうか」


消耗品が補充されている事を確認して、私はマイスペースから外へと出た。




--【墓荒らしの愛した都市】1層


「よぉーし、やるぞ」


私はセーフティエリア内で早速、『昇華 - 狼皮の煙草』を吸った後。

その紫煙を足へと集め、意識して【過集中】を発動させてから、クラウチングスタートのように両手を肩下へとくるように地面へとついた。

……申し訳ないけど、止まる気は全く無いんだよね。

1層は既に何が出てきて、そしてどんな階層なのかは知っている。但し、知っているだけできちんと攻略出来たわけでもない。

だが、ここまで来て素直に1層の攻略なんてやってられないのだ。


余った紫煙を手の形へと変え、私に触れさせる事で【状態変化】によって固体と変え……私の代わりに、セーフティエリアの扉を開かせて。

外が見えた瞬間、私は勢いよくその場から駆けだした。


周囲の景色が流れていくように過ぎていく。

当然、その中にはランタンやテーブル、本棚がこちらを認識した上で追いかけてこようとしたり、行く手を阻むように立ちはだかったりもするものの。


「邪魔だよ」


相手にならない。

ランタンの呼び出した影の私は、そもそも私に追いつけず。

テーブルや本棚は、その硬さから加速をするための足場として使われる。

個体によってはその時の衝撃によって消滅していくものもいた。


以前ならば、本棚を1体倒すのに紫煙駆動を使っていたのだ。

それを考えると……移動するだけである程度の敵性モブならば倒せるようになってしまっている現状は、確かに成長しているのだなと感じられた。

だが、ここで満足してはいられない。


「首待ってろよ禍羅魔くん」


打倒、禍羅魔。

出来るならば、あの時居たプロゲーマーらしき巨人のプレイヤーも。

これまでとは違い、明確な目的とゴールが見えた今……足を止める理由はなかった。




「うん、見つけた見つけた……まさか走り回って10分以上も掛かるとは思わなかったけど」


前途多難、かもしれない。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?