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Episode11 - RR


「お、戻ってきたか」

「ん……あぁ、メウラくん。負けちゃったよ」

「まぁしゃあねぇだろ。……俺らが【四道化】マラソンしてる間に、色々あったみたいだしな」


観客席に戻された後。

バトロワの内容を思い返していると、同じく敗退したらしきメウラがこちらを見つけて話しかけてきてくれた。

彼も凡そ私と似た様な負け方をしたらしい。


「あれ、紫煙外装の強化とかだよね?」

「そうだろうな。確実に俺らの紫煙駆動とは違った動き方だったからな」

「だよねぇー……」


強化の為の手筈、というか。

道のり自体はバトロワ中に考えた通りで良いだろう。

だからこそ、イベント後……私達にとってはこの予選が終わった後の動きは決まった様なものだった。


「ダンジョン、クリアしよっか」

「あぁ……でも、ソロでだな」

「そうだね」


ここから先は、またソロで。

パーティを組む事自体は悪くないし、別にしてもいいとは思う。

しかし、お互いにいつも予定が合うわけでも、戦闘能力が無いわけでもない。

私は手斧を用いた方法で、メウラには紫煙外装と素材を用いた方法で攻略する手筈はあるのだから。


……あとは、ちょっと調べないといけない事もあるしね。

そっと、耳元に着けられた『真斬のピアス』に触れる。

バトロワではこれの危機察知能力に助けられた場面も何度かあったが……フレーバーテキストに書かれていた内容と、装備する前に立ち昇ったオーラが気にならないわけではない。

下手に使い続けて、明記されていないデメリットが生じた場合……不利益を被るのは私だけではなく、その時にパーティを組んでいた他のプレイヤーなのだ。


「レラは次何処を攻略するんだ?」

「んー……【墓荒らし】かな。一番最初に入ったのに結局後回しにしてるから」

「成程な……じゃあ暫く装備の更新は無さそうだな」


【墓荒らし】に出てくる敵性モブは、現状分かっている限り、家具を模したモノしか居ない。

木製の装備を使っているわけでも、好んでいる訳でもない私にとって、装備を更新するような素材が手に入る場所ではないだろう。

ボスについては……対峙してから考える事にしよう。それがいつも通りなのだから。


『あー、テステス。……よぉーし、全員戻ってきたね?これにて予選は終了!生き残った16人のプレイヤーは明日の本戦も頑張って!そして惜しくも敗退しちゃったプレイヤー達は、応援なり自分のいつもの活動なり……残った時間でイベントダンジョンの攻略なりを頑張ってくれ!』

「終わったみたいだねぇ」

「ま、一定時間で死亡エリアが広がってく仕様だったしな……うわ、プロゲーマーも何人かいるじゃねぇか、本戦」


勝利したプレイヤーの中には、私を倒したライオンの鬣のような髪型のプレイヤーもいた。

どうやら巨人の方のプレイヤーはやられてしまった様だ。

……名前は……禍羅魔からまか。うん、覚えておこう。

次はよろしくと言ってしまったのだ。ならば、好奇心云々抜きにして彼を満足させられるようなプレイヤーにはなりたい。

だからこそ、


「ん、もう行くのか。明日の本戦やらはどうする?」

「ごめんだけど、私はパスで。……やらなきゃいけない事が増えちゃったからねぇ」

「成程……じゃあ結果は後で送っとくわ」

「ありがと」


明日の本戦を観ずに、先に攻略を優先する。

私の先に居るプレイヤー同士の戦いは、それこそ戦闘スタイルの参考になったり、勉強になる事も多いだろう。

しかしながら、立っている位置が違い過ぎると勉強する以前の問題になってしまう。

それが、今だ。


……いやぁ、少し自惚れてたのが良く分かるなぁ。

弱いからこそ、努力して追いつかねばならない。

負けたからこそ、次戦った時には勝たねばならない。

殺されたからこそ、好奇心を持ち続けねばならない。

それらが分かったからこそ……私は前へと進む為の一歩を踏み出さねばならない。


メウラに別れを告げ、マヨヒガからマイスペースへと移動し……私はすぐに消耗品類を補充し、【墓荒らしの愛した都市】攻略用の準備を進める。


『ご主人様』

「なんだい?」

『……いえ、楽しそうだなと。何か手伝える事は?』

「あは、そう見える?ありがとう。……じゃあこっちの素材で煙草を作っておいて」

『畏まりました』


どうやらルプスから見ると、私は楽しそうだったらしい。

私の頭の中には、今も後悔が浮かんでは消えていっているのだが……頭の良い彼女からそう見えたのであれば。

……まだまだ、私は頑張れるって事だろうねぇ。

負けて、その先に進もうと楽しむ事が出来る。大抵はここで折れてしまう人間は多い。


「私も、まだ捨てたもんじゃないみたいだ」


適当に余っていた素材で作った、『硝子の煙草』を口に咥え火を点す。

酷い味だ。吸えたものではない臭いだ。

だが……今は、それも悪くないとそう思えた。




――――――――――

プレイヤー:レラ

状態:魔煙術後遺症軽度:昇華煙


・紫煙外装

『外装一式 - 器型一種』


・所有スキル

【煙草製作】、【投擲】、【観察】、【フィルター加工】、【背水の陣】、【斧の心得】、【回避】、【過集中】、【魔煙操作】、【隠蔽工作】、【複製】、【状態変化】


・装備

赤き信仰のボディス、赤き信仰のドレススカート、赤き信仰のグローブ、赤き信仰のロングブーツ、赤き愉悦の外套、『信奉者の指輪』、『四重者の指輪』、『真斬のピアス』

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