『あーあー、テステス。聞こえてるー?運営の遠野でーす!参加者はコロッセオに移動してー!見学者はその場で大丈夫!』
メウラと世間話をしていると。
突然、空に女性が浮かび上がった。言葉からして、今回のイベントの進行を務めてくれる運営の方だろう。
何故か上下共にジャージではあるのだが。
「よーし、頑張りますか」
「レラはどれくらい目指す予定なんだ?俺は適度に……それこそ、バトロワ越えられたら良いなってくらいだが」
「私もそんなもんだよ。そもそも私、対集団戦得意じゃないし?」
案内に従ってコロッセオの中へと移動してみると。
私達よりも先に入っていたプレイヤーが数多くいるのにも関わらず、以前スペースが余っている程度には広い空間が広がっていた。
……外から見た時はそこまで広そうに見えなかったんだけど……空間でも弄ってるのかな。
あまりメウラ以外のプレイヤーと関わりを持ってこなかった為に、今目の前に広がっている光景は新鮮その物だ。
初期装備を着ている者から、紫煙外装の効果なのか巨人のようになっている者。
バニーガールや、何故か多くの鳥の止まり木のようになっている者まで居る。
どうしてそんな姿をしているのか聞きたくなってしまうものの……私も私で赤ずきんのような姿をしているのだ。どっこいどっこいだろう。
『よーし、これで全部かな?スムーズに移動してくれてありがとうー!――それでは、【紫煙奇譚・壱 ~マヨヒガへの旅~】の第2部、PvPイベントを開始していくぜ』
歓声が上がる。
事前説明の通り、まず最初にバトルロイヤルにて生き残りを決め。
その後に、その生き残り達によるトーナメント戦が行われる。
『――って、訳なんだけど。まずまずとして、バトロワの方は16ブロックに分かれて戦ってもらう事になったよ。今回の参加者がえーっと……おぉ、1755人?多いねぇ。だから大体110人くらいずつに分かれて戦ってもらう事になるね』
「……多いなぁ」
事実、多い。110人……自身も含めた数ではあるが、その数が一斉に戦うとなれば……かなり面倒な事にはなるだろう。
それこそ、紫煙外装なんてものをその110人がそれぞれ持っている。
110の異なる紫煙駆動によって齎される被害の規模は中々な物になるはずだ。
『時間短縮用に、一応各ブロック毎に別々のマップに
遠野が指をパチンと鳴らす。
すると、空中に煙が集まっていき……1つのスクリーンを象った。
『口頭でも説明するけど、一応こっちにもスクリーンで出しとくぜ。さ、じゃあ本題。バトロワの仕様だけど――』
今回のバトロワは、過去に流行っていたゲームなどを参考にしたルールを採用しているらしく。
・時間経過によって生存可能エリアの収縮が行われる
・マップ上にはバトロワ限定の物資や武器がまばらに設置されている
・使う事で他のプレイヤーに居場所を知られてしまうものの、有利な効果を得ることが出来る施設が存在する
主にこの3点はどこのマップでも変わらないらしい。
マップ毎に異なる点といえば、森や砂漠などのエリア的な特徴程度の様だ。
その為、少しばかりは有利不利があるかもしれないが……そこは時の運として諦めてほしい、との事。
『よぉーし、説明は大丈夫かな?大丈夫だね?じゃあ早速ブロック分けをしていこう!手元に皆自分の紫煙外装を取り出して?……あぁ、身体に埋め込まれてるタイプの子は自分の手の甲を見ておいておくれ』
言われた通り、私は手斧を取り出してみると何やら見慣れないウィンドウが表示されていた。
……抽選中、か。
ウィンドウの中には、デフォルメされたスロットマシーンが今も動き続けている。
時折見える絵柄がチェリーなどではなくアルファベットになっているが。
『出したね?次回からは別の抽選方法にするとは思うけど、今回は紫煙外装の演算システムを……って言っても面倒だよね。簡単に言えば、今それが君らの名札になってるわけ。その名札を元にプレイヤーを検索、そして抽選をしてるんだけど……オーケィ?よし、抽選が終わったみたいだ』
ウィンドウのスロットマシーンが独りでに止まる。
当たったのは、アルファベットのCが3つ。つまるところ、私はCブロックに割り振られたのだろう。
「メウラくん、そっちは?」
「俺はFだな。レラは……Cか」
「本戦じゃないと戦えないねぇ」
「予選でも戦いたくはなかったがな」
互いに笑いながら言うものの。
互いに負ける気はないのだろう。
兎にも角にも、バトルロイヤルを勝ち残らねば話は始まらない。
『ではでは、皆さん。お待たせしました。本日のメインイベント……バトルロイヤルのマップへとご招待致します。――良き
「「は?」」
瞬間、私達は落ちた。