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Episode3 - S2


「ルプス」

『何でしょうか』

「今修得したスキル試したいから、何でも良いからフィルター頂戴」


少しだけ困惑の表情を示しつつ、ルプスは『魔結晶のフィルター』を1つ手渡してくれる。

改めて見ても、私が加工した時と同じ様に加工されており……従者というシステムの便利さが伺える。

……っとと、今はスキルの試しだね。


気持ちを切り替え、私は手のひらの上に乗せたフィルターに意識を向け……新たに修得したスキルを発動させた。

すると、だ。


『これは……複製ですか?』

「うん。成功みたいだねぇ」


手のひらの上のフィルターが淡く光ると同時、2本になって再出現した。

【観察】によって細部に変わりがないかを確認して観ても、特に変化は感じられない。

成功だろう。


「名前はそのまんま【複製】。効果は見た通りだね」


――――――――――

【複製】

種別:汎用

熟練度:1/100

効果:STを消費し触れている物の劣化コピーを作り出す

   制限:触れていない状態が10秒続くと複製品は消滅する

――――――――――


『成程……素材には使えないのですか?』

「使っても消えちゃうから、多分加工とかしてる途中で消えちゃって失敗すると思うよ」


試しに1つ、薬草を複製し煙草を作ってみようとしてみたものの。

予想通り、粉砕途中で消えてしまい製作自体が中断されてしまった。

これが出来てしまうと、資材の無限化などが可能となってしまう為の制限だろう。


それに、そこまで燃費が良い訳でもない。

『魔結晶のフィルター』を複製した時には約2割、薬草を複製した時には約1割程度のSTが持っていかれているからだ。


「一応紫煙外装でも試してみるかな……っと、結構減ったな……」


試しに手斧で試してみると。

最大値の約半分、5割ほどが消費された状態で手斧が出現した。

しかも、だ。


「あー……うん、劣化コピーだねぇ」

『そうなのですか?』

「うん。ほら、手斧同士をぶつけただけで刃こぼれしてる」

『本当ですね……』


説明通りの劣化コピーなのか、本物よりも脆い。

これでは硬い相手に投擲しても、ダメージを与えられずに砕け散ってしまうだろう。

だが、これはこれで使い道はあるはずだ。

例えば、延々と複製品の手斧を投げ続けた後に本物を投擲することで……手斧の耐久力を舐めていた相手にダメージを与える、何てことも可能だろう。

当然、初見にのみ通用する手のため迂闊には使えないのだが。


それに、ここまで素材やら手斧の複製について考えてきたが……私が考えている使い道でならある程度は初見でなくても通用する……はずだ。

但しPvPや高度なAIを積んでいる相手に限るのだが。


「よし、じゃあ私はちょっと練度上げる為にダンジョンに潜ってくるよ」

『いってらっしゃいませ。その間、私はいつも通りに?』

「うん、消耗品の補充よろしく。ドゥオ、トレスも呼んでおくから、手分けして」

『畏まりました』


さて、ここからは時間との戦いだ。

バトルロイヤルまでにどれほどまで、自分の戦い方を突き詰められるかの勝負。

その為に、『人斬者』には付き合ってもらうとしよう。





--紫煙駆動都市マヨヒガ・娯楽区


そして、大会当日。

イベント日数にして6日目。

私はメウラと共に、マヨヒガの娯楽区に存在していた、コロッセオのような巨大な闘技場へと足を運んでいた。


「来たねぇ、大会当日」

「来たなぁ……一応、ピアスは間に合ったぞ」

「ありがとう。今受け取れる?」

「応」


大会の参加受付を済ませつつ、私はメウラから新たな装備……『人斬者』の刀から作られたピアスを受け取って装備する。

見た目は耳たぶから鞘に入れた刀を帯びているような形になるらしく……中々に収まりが良い。


――――――――――

『真斬のピアス』

作者:メウラ

耐久:100/100

種別:装飾品・ピアス

品質:C+

効果:一定レベルの集中状態時、危機察知能力微小付与

説明:刀の片を加工し直す事で作られたピアス

   怨念は未だ消えず、虎視眈々と首を狙っている

――――――――――


「……大丈夫?コレ」

「効果の範囲には表れていないから大丈夫じゃないか?……何かあったらすまん」

「いや、良いよ。私が使ってほしいって言ったんだから」


一応【観察】の使用を意識しつつ効果説明文を読んでみても、特に変な部分は今のところ観つける事は出来ない。

ピアスの方も一度装備から外し、観てみたものの特に変化は――、


「――あ」

「どうした?」

「ん、いや、大丈夫。ちょっと躓きそうになっただけ」


変化はあった。

本当に気を付けて観ていないと気が付かない程微かに、ピアスから『信奉者』や【峡谷】の敵性モブ達が纏っていたオーラのようなものが立ち昇ったのだ。

……これ、表に出てない効果もありそうだねぇ。


だが、付けないという選択肢は一切ない。

表に出てきている効果自体は私のスタイルと相性が良いモノだし、デザインも良いのだから。

赤ずきんモチーフの見た目に合っているかは……知らない。好きな物を付けていて何が悪いのか。


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