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Episode7 - B1


--【四道化の地下室】3層


【どうやらここはセーフティエリアのようだ……】

【扉の奥から強大な存在の力を感じる……】


階段を進んだ先は、今までとは打って変わり。

まるで俳優などの控え室のような場所だった。

但し、廃墟と化した状態ではあるのだが。


「……うーん。ここに来て一気に変わったね」


だが、臭いは変わらない。

ボスとの戦闘エリアでも、2層でもないセーフティエリアのはずなのにも関わらず、濃い血の臭いは残ったままだ。

一応、警戒はしておいて損は無いだろう。

そもそもこの先にボスが居る時点で警戒はしているのだが。


「手斧良し、HPST良し。消耗品は……具現が割と残ってるから大丈夫か。即死以外は何とかなりそう」


具現煙を始めとした回復アイテムはほぼ手をつけておらず、昇華煙に関してもまだ10本以上は残っている。

問題があるとすれば、防具が初期装備だという事だが……まぁ何とかはなると信じてやっていこう。


「よし、侵入!」





――――――――――――――――――――


レディースアーンドジェントルメーンンン!

今宵は我がサーカス団の公演へとお越し頂きまっこと感謝致します!


さて、今宵の演目はいつもよりも少しバイオレンスに、スプラッタに、そしてスモーキーに!

この演目の為だけに足を運んでくれたゲストを、我々サーカス団の団員とこの私めが切り刻み、腹開き、晒し者にする殺人遊戯で御座います!

尚、ゲストの命は保証しませんので悪しからず。


おぉ世界けつえきよ!私に娯楽を!

わらいを晴らす力を!


……ンン?

何やらイカレ神父の臭いがしますが、それはそれ。


――――――――――――――――――――


そこは、巨大なサーカスのテントの中だった。

中央に1人の大きく、そして丸いピエロがマイクを握って何かを喋っていた。

そのピエロの胸には緑、黒、そして赤色の装飾が輝いている。

私の身体は制御が効かず、そんなピエロへと向かって歩き出す。

表情は何故か笑顔に固定されていて……ピエロの目の前まで来た所で、身体の制御が戻ると同時、


「まっずい……ッ!?」


ピエロが緑色の煙幕を吹き出しながら、消えてしまった。

一応体勢を低く、そして緑色の煙幕を吸わないようにしているものの……特に何かしらのデバフを喰らう様子はない。


【『四重者キラークラウン』との戦闘が開始されます:参加プレイヤー数1】


このタイミングでログが流れ、HPバーも表示されたのだが……何やら、私の視界の上に表示されている。

まるでひと昔前のボス戦のような表示の仕方だ。


消えてしまっていた手斧を呼び出しつつも、私は口に『昇華 - 狼皮の煙草』を咥え火を点ける。

ゆっくりと肺に煙が入っていく感覚を味わいつつも、強化されていく五感を用いて周囲の索敵も同時に行っていくと。


「あー……そういう?」


嗅いだ事のある臭いが私を囲むように出現していっているのが感じ取れた。

咄嗟に紫煙駆動を起動させ、煙幕を払うと共に……しっかりと臭いの元が私の目に入る。

……面倒だな、この手のタイプは。

そこに居たのは、数十体以上の壁道化。最初に居た、推定『四重者』の姿は見えなかった。


この時点で、『四重者』との戦いはギミック色が強いもの、もしくは特定の順序に沿って行われるものだと察しつつ。

私は適当に狙いを付けた上で、手斧を投擲した。


『ギッギッギ……』

『ギギッ』

『ギッィッ?!』

『『!?』』

「囲んだ程度で笑い出すなんて嘗めすぎだよ」


壁道化が数体巻き込まれると同時、少しだけ『四重者』のHPが減ったのを確認できた。

その事実に頬を緩めつつも、一度大きく煙草を吸ってから、ふかすようにして一気に煙を吐く。

軽く煙を左手に集めつつ、手斧を呼び戻す。

まだ私の視界は白黒へは変わっていかない。


「ま、予想だとこれよりもが滅茶苦茶きついだろうなぁ……」


まだテンションが上がっていかないのを感じつつ、意図して集中しようと気合を入れる。


「じゃ行こうか」


一息。

左手の煙を……昇華の煙を足に集め、地を蹴った。

瞬間、間抜け顔をした壁道化が私の目の前に来て――その頭に手斧を叩きつける。

血飛沫が舞い、周囲の壁道化達が動こうとするものの。


「遅い遅いよっと!」


手斧と、煙の斧によって動く前に薙ぎ払われる。

まるで無双ゲーのように壁道化達が弾き飛ばされていくものの……HPバーの減り方自体はそこまで多くはない。

……ピエロ恐怖症じゃなくて良かったなぁ。

そんな事を思いつつ、私は更に手斧を振るい続けていく。





「あーもう楽しくない!」


壁道化を倒し続け、約数分。

HPバーは着実に減っているものの、正直攻略の仕方を間違えているのではないか?と思うくらいには減っていない。

別段脅威となるわけでもない壁道化が相手なのもあって、私の集中力はスキルを発動させるまでは至っていないのも現状の問題ではあるだろう。

……でも、流石に探さないとか。


ここから考えられるのは2つほど。

1つは、開発側が何を考えているのか分からないが……これが正攻法の場合。

正直考えたくないし、もし本当にそうであった場合は私は純粋な気持ちを開発へとメールにしたためて送る事になるだろう。

そして2つ目。それは、


「核が居るパターン、だね」


この状況を作り出している存在が、壁道化達の中に紛れている場合だ。

その存在さえ倒せばいい。それだけで済むのだから人によってはポンポン攻略できるだろう。

問題は、何度も煙の斧で何十体も薙ぎ払っている私がそれを見つけられていない所なのだが……しっかりと探していなかったというのもある。


何せ、倒せばHPバーは少ないながらも減ってはいくのだ。

最初はこんなものかと思いつつ、キルスピードか範囲殲滅辺りの能力が求められているのかと考えても仕方ないだろう。

しっかりと考えていなかったとも言えるのだが。


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