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Episode2 - F


--紫煙駆動都市エデン・生産区


「ってことで、それぞれ布切れと金属片ね。一応骨とかもあるけど……要る?」

「要らん。そういうのはマジックユーザー寄りの連中を探して売ったりしろ」

「まぁどうしても装備って感じじゃないもんねぇ」


『信奉者』の素材をある程度集め終わった私は、その殆どと現装備をメウラに渡した。

ボスの素材でアップデートするのだ、少なくとも今まで以上には強化されるはずだ。


「で、金属片はアクセサリーとかにすれば良いんだっけか?」

「うん。とりあえず武器よりかはそっちの方がいいかな?最優先は防具に、余ったらアクセサリーで」

「了解。希望の形は?」

「んー……ピアスか指輪かな。ネックレスは狙いやすいのが分かったし」


私の様なスキル構成ならば、首から掛かっているネックレスは見えてさえいれば狙うことが出来る。

実際、素材集め中の『信奉者』戦で何度も命中させられたのだから。


「成程な。……あぁ、そうだ。一応デザインが変えられるがどうする?」

「デザイン、デザインかぁ……そうだね。メウラくんさ、赤ずきんの格好って分かる?」

「赤ずきん?赤色の頭巾被った、洋風か?」

「そうそうそんな感じ。ディアンドルとか言うんだけど」


ディアンドル。

ドイツの民族衣装だったりで目にするものであり、言ってしまえば完全に戦闘服ではない。


「……オッケー、調べた。確かに赤ずきんが着てそうな奴だな。でもこれだと動きにくいぞ?」

「まぁ最悪、上だけでも良いかな。下は今と同じショートパンツで構わないし」

「えぇっと……成程、ボディスって部分か。スカート部分と完全に分かれてる状態のモノで良いんだよな?」

「うん、それそれ。作れそう?」


完全に趣味の話ではあるが……ゲーム内でくらい、好きな服装をしてもバチは当たらないだろう。

誰に迷惑を掛けるわけでもなし。……作ってくれるメウラには迷惑が掛かっているかもしれないが。


「……いけるな。ただ流石に全部を全部『信奉者』の素材で作れるわけじゃないから、他の素材も引っ張ってくるぞ?」

「良いよ良いよ。どうせだったら足りない部分は獲ってくるし」

「よし、じゃあこれで。出来たら連絡するが……どうする?デザイン出来るまで装備は着けてても良いぞ?軽く1日仕事にはなりそうだしな」


現状の装備を手斧と『信奉者の指輪』以外渡してしまっている現状、あまり無茶な行動は出来ない。

メウラはそう思ってこう言ってくれているのだろうが……私はほぼこの状態で鹿の突進に耐えた女だ。

ボスに挑むまでは行かないものの、その直前……3層のセーフティエリアくらいまではこの状態でもなんとか辿り着く程度の攻略は出来るだろう。


「いや、大丈夫。ちょっと確かめたい事もあるしね」

「何を……ってあぁ。そりゃ何回もボス戦してたらそうなるか」

「うん。何個かのスキルの追加能力の確認、ちゃんとしてないからそっちの確認とか……後は消耗品の補充とかしないとね」


実際、余裕そうに狩っては来たが……その実、私のインベントリ内は悲惨な事になってしまっている。

例えば具現煙を用いた薬草周りの煙草は全てを使い切っているし、それ以外にもHP回復用のポーションなんかは度々買い足してからボス戦に挑んでいた。

昇華煙に関しても、足りないからと狼以外の鹿や鼠に手を出していたり……一度、影道化の素材を使ってみたりと限界には達しているのだ。

ここらで一度、しっかりアイテム補充をしておくべきだろう。


それに、スキル周りも確認が必要になっている。

【観察】、そして【投擲】に変わっている部分はないものの、他の何個かのスキルが戦闘中に熟練度が溜まって追加の能力を得ている……というログが出ていた。

どういう能力を得たのか、そしてそれに伴って私のスキル構成も少しは変えるべきだろう。

そろそろ素材を使ってのスキル修得もやってみたいし。


「じゃ、そういう事で。後はお願いね」

「おう。出来上がったら連絡する」



--マイスペース


メウラと別れ、マイスペースへと移動した私は最初に修得スキル一覧を出現させた。

このゲームにおいて、何かをする時に絶対関わってくるのがスキル。

その為、本当だったらボスの連戦とかする前に確認するべきだったのだが……殆ど影響がない範囲だろうと放置していたのだ。


「えっと、ログを見る限り……【煙草製作】、【斧の心得】、【回避】の3つか。他2つは分からないでもないけど、【回避】は早かったなぁ……」


恐らく、それほどまでに【回避】のスキル補正範疇となる行動をしていたのだろう。

私の装備……というより、手斧には防御能力のようなものはない為、回避主体になってしまうのは致し方ないのだが。


「よし、それじゃあ見ていこう」


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