--【峡谷の追跡者】1層
次の日。
新たに手に入れたスキルの効果の確認及び、魔結晶の補充も兼ねて峡谷で狼達を狩っていた。
「これは……まぁ想像通りかなぁ」
【背水の陣】、そして【斧の心得】。
影道化を延々狩り続けていた時にラーニングした2つのスキルだ。
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【背水の陣】
種別:戦闘
熟練度:1/100
制限:最大HPの1/5以下時のみ使用可能
戦闘時のみ使用可能
効果:全ステータス
修得スキルの
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【斧の心得】
種別:汎用
熟練度:27/100
効果:斧を用いた行動にボーナス(小)
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「【背水の陣】は流石に狙って出すのは難しいけど――」
スキル詳細を開きつつ、遠目に見えたHPバーに向けて適当に手斧を投げてみる。
すると、だ。狙いもちゃんと付けていないにも関わらず、吸い込まれていくように飛んでいき――、
「――よし、ヒット」
【マノレコを討伐しました】
【ドロップ:狼の毛皮×1】
【斧の心得】、その効果である『斧を用いた行動』に加え、【投擲】の効果である『投擲精度の上昇』が同時に動作した結果だろう。
現状【斧の心得】は勿論として、【投擲】に関しても熟練度による効果強化はされていない。
その状態でこれなのだ。
……スキル周りのコンボ、大事だねぇ。
「2つのスキルだけでここまで強いってのは中々だよねぇ。……今は【観察】だけだけど、視覚系のスキルを何個か重ねたら斧で狙撃とか出来そう」
煙草関係のコンテンツを用いない、純粋なプレイヤー個人の戦闘能力で戦う方法。
遊び方的には、どちらのコンテンツも使った上でダンジョンを攻略していくのが正攻法なのだろうが……それでも、どちらか片方に偏ったスタイルも選択できるだろう。
「ま、私はどっちも楽しんでいこう」
やれることが多い方が楽しいのだから。
そんな事を考えながら、私は峡谷の奥へと進んでいった。
此方へと向かって駆けてくる鹿の眉間に向けて手斧を投げる。
前と同じならば、角によって弾かれていただろう。しかし。
『レラ、今大丈夫か?』
「おぉ、メウラくんかな?これゲーム内通話?一応問題はないよ」
弾かれない。
ガキン、という音と共に角を破壊……までとは行かずとも、手斧は角へと突き刺さる形で命中した。
【斧の心得】による行動に対するボーナスだろう。
それによってか、それとも手斧の勢いに若干押されてか。
鹿はふらふらと身体を揺らしながら、私から少し離れた岩壁へと突っ込んで行ってしまう。
『フレンド同士のみの機能だな。頼まれてた防具が出来上がったから一旦見てもらいたいんだが』
「オーケィ、じゃあちょっと後に前集まった喫茶店に行くよ」
『了解した』
【観察】によって見えているHPバーはあまり減ってはいないものの、激突した為か、鹿はこちらへと向き直るのに時間が掛かっているようだった。
勿論、そんな大きな隙を見逃すほど甘くはない。
手斧を呼び戻し、その上で一気に距離を詰め。首筋へと向かって上から下に思いっきり振り下ろす。
何度も、何度もそれを繰り返し……やがて、鹿は動かなくなった。
【フュルを討伐しました】
【ドロップ:鹿の毛皮×1】
「ふぅ……よし、戻るとするか」
鹿相手も別段苦戦はしない……というか。
やはり【斧の心得】を手に入れた事で強化されたからか、基本的に
その状態で防具も揃ったら……本格的にダンジョン攻略へと足を進めても良い段階なのではないだろうか?
「とにかく、メウラくんがどんなのを作ってくれたか、だねぇ」
--紫煙駆動都市エデン・娯楽区
「おう、来たな」
「いやぁ、ごめんねぇ。少しダンジョンの奥の方に居たからさ。……で、出来たんでしょ?」
「あぁ。先に送るぞ」
メウラと合流後、すぐに私のインベントリに3つのアイテムが送られてきたのが分かった。
それらの詳細を開き、確認してみると。
「これはこれは……趣味?」
「ちげぇよ。複数種類はあったんだが、アンタのスタイルを詳しく聞いてはなかったからな。動きやすさ重視で考えたんだ」
「成程ねぇ」
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『ウルフジャケット』
作者:メウラ
耐久:100/100
種別:防具・上
品質:C+
効果:
説明:狼の革を用いたジャケット
白いシャツがセットになっている
狐と木の枝の刺繍がされている
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『ウルフショートパンツ』
作者:メウラ
耐久:100/100
種別:防具・下
品質:C+
効果:
説明:狼の革を用いたショートパンツ
革のベルトがセットになっている
狐と木の枝の刺繍がされている
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『ウルフグローブ』
作者:メウラ
耐久:100/100
種別:手袋
品質:C
効果:
説明:狼の革を用いたグローブ
狐と木の枝の刺繍がされている
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すぐに装備してみる。
彩色されているのか、ジャケットは黒を基調としたファー付きの革のジャケットとシャツが。
下は茶色のショートパンツが。
そして手には、赤銅色の革のグローブが出現した。
「おぉー。いいねこのジャケット。フード付きなんだ」
「革素材だからちょっと硬いけどな。着心地は問題ないか?」
「うん、十分だよ。ありがとう」
喫茶店から出て、その場で軽く飛び跳ねたりしてみても違和感はない。
煙草着火用の指輪も、グローブの内側からでも機能している。
十二分に良い装備だろう。
「これからもちょくちょくお願いすると思うよ」
「はは、お手柔らかにな」
メウラに多少の金銭と素材を渡した後。
私はマイスペースへと向かった。
ダンジョン攻略を開始する前の最後の準備……煙草の製作の時間だ。
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プレイヤー:レラ
・紫煙外装
『外装一式 - 器型一種』
・所有スキル
【煙草製作】、【投擲】、【観察】、【フィルター加工】、【背水の陣】、【斧の心得】
・装備
ウルフジャケット、ウルフショートパンツ、ウルフグローブ、イニティブーツ
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