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Episode15 - D2


さて、違和感の正体を確かめるのには色々な方法が存在する。


これが幻術などの類ならば、私が違和感があると認識している時点でデバフとしてアイコンが出現している事だろう。故に、今回のコレに関しては違うと断言できる。


何者かによって周囲の風景を誤認させられているのであれば、その何者かを倒してしまえば良いだけの事。

【観察】ですら見つけられていない時点でこの可能性も低いとは思うが……それでも、もしそうならば。

紫煙駆動によって周囲を薙ぎ払ってしまえば、運が良ければ当たるはずだ。


そしてダンジョンの性質上の話ならば……何かしらの対策装備くらいはエデンの方で売っていたり、作るためのヒントが図書館辺りにあるはず。


「ってぇ、ことで」


つまるところ、私が今取れる方法はただ1つのみ。

手斧をしっかりと握りしめ、紫煙駆動を作動させると共に、私は『硝子の煙草』を1本口に咥えた。

火を点け、ゆっくりと吸って吐く。


きちんと防御力上昇効果が発動したのを確認した上で、


「脳筋ってのは、時に全てを解決するんだよ!」


その場で駒の様に回転した。

瞬間、私のその動きに追従する様に煙の斧がダンジョンの壁を削りながら周囲全てを薙ぎ払い始める。


ダンジョンの壁の破片が幾つか私の身体に当たってダメージを受けるものの、防御力を上げてあるからか、初期装備であってもほぼHPは削れていない。


『ギャァ!?』

「あは」


そんな中。

1つの壁が鳴いた・・・

否、それは壁ではなかった。周囲とほぼ同じ色、形、質感をした壁のハリボテを持った、土色の道化師の様な姿をした人型の敵性モブ。

その身体には、【峡谷】で見た様に緑色のオーラを纏っていた。


【壁道化を討伐しました】

【ドロップ:壁の破片×1】


「……ん、でも弱いねぇ」


だが、それだけだ。

見つけたと同時、煙の斧によって胴体を上下に断たれる事で消えていく。

それと共に、ゲーム調であった周囲の景色が元の……VRMMOよろしく、リアルな物へと戻っていくのが見えた。


「道化師。道化師かぁ」


ダンジョン名にもなっている道化。

そして先ほど倒した敵性モブが道化師だった。

ならば……安直ではあるが、残り3種類ほど別種類の道化師が居ると考えた方がいいだろう。


……索敵能力、やっぱり素材消費でもいいから外付けしたほうがいいなぁ。

恐らく、さっきの壁道化も索敵系のスキルがあればすぐに気が付く事が出来ただろう。

【墓荒らし】のように奇襲特化な敵性モブだったら……まず間違いなく、私は何も分からずに死に戻りしていたはずだ。


「うーん、でも縁結晶は欲しいよね。……デスマラソンになりそうだけど、進むしかないか」


あわよくば、行動によって索敵スキルが生えてくれる事を願おう。

そんな事を考えながら、私はダンジョンの奥へと足を進めていった。




「よぉーし!1体!あとは!?」

『『『フェッフェッフェ……』』』

「だぁああ!こんなん序盤から出すな運営!」


結論から言えば、私は帰るべきだった。

先程までの通路のような場所ではなく、大きく開けた広場のような場所。

その中心に近い場所で、私は道化師に囲まれていた。


「ピエロ恐怖症の人は無理だろうなぁコレ……!」


黒色の道化師達が、笑いながら私に向かって襲い掛かってくる。

手に持っているものは様々だ。ナイフ、空き瓶、ハンマーや松明。

それ以外にも凡そ武器としては約に立たないであろう、掃除用のはたき・・・やら、個体によっては水風船なんかも持っている。


相手の名前は、影道化。

最初に見つけた時はただただナイフをもって襲い掛かって来ていただけだったのが、時間が経つ事に増えていき……今では部屋を埋め尽くす勢いで増殖していっている。

……増殖元を叩かないといけないランタンパターンかな……!


既に持ってきていた『具現 - 薬草の煙草』は使い切り、その上で現在の私のHPは半分以下。

紫煙駆動も既に起動しており、STゲージも同じように半分以下だ。

何度も煙の斧によって薙ぎ払っているのにも関わらず、倒せない。

完全に手数というか、攻撃範囲が足りていないのだ。


「ギミック色が強いっちゃ強いけど、さぁ……!」


救済措置と言うべきか、10体程度を倒す度にドロップ品を得られている点だけ見れば稼ぎとしては良い狩場だ。

倒し切る事が出来なくても回復手段さえしっかり用意していれば、影道化の素材は延々集める事が出来るだろう。


【スキルを発現しました:【背水の陣】】

【スキルを発現しました:【斧の心得】】

【スキルの熟練度上限が解放されました:【観察】】

【スキル:【観察】の新たな能力が解放されました】


それに戦闘経験という意味でも美味しい。

現に新しいスキルを2つラーニング出来ているし、【観察】のスキル熟練度も上がり切った。


「良いね【観察】……でもそれは無理だぁ……」


【観察】の新たな能力は詳細を見るまでもなく、視界内に現れている。

影道化達の頭上に、先程までは見えていなかったHPゲージが出現しているのだ。

だが、一瞬それに気を取られたその瞬間。私の身体に無数のナイフが突き刺さり、残りのHPを全て削り取られてしまった。

目的である緑結晶は手に入っているし、次はもっと上手く出来る……はずだ。


【死亡しました】

【デスペナルティ1h:全ステータス制限


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