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Episode12 - C1&M1


「よしやろう」


煙草製作用のすり鉢に近付き手を翳す。

すると、『硝子の煙草』を作った時のようにUIが出現――、


「あれ?何これ」


――しなかった。

そこに出現したのは、新たな初見のウィンドウであり、書かれている文字を読んだ私は困惑する。


【フィルターの加工用素材を確認しました】

【フィルター加工には別途生産施設が必要となります】

【要必用:『フィルター加工机初級』】


「フィルターまでカスタマイズ出来るんだ、このゲーム……」


思えば、元々現実でも自作のフィルターを製作する人も中には居る。

それに寄せた結果なのだろうが……何が原因でこの表示が出てきたのかが問題だ。


「えぇっと……前回と今回で違う点があるとすれば……」


パッと思いつくのは、【峡谷の追跡者】の素材の入手と、メウラと知り合った時に買ったブーツ程度。

だが、流石にブーツがフィルターの素材として認識されるとは思えない為、やはり【峡谷の追跡者】で手に入れたいずれかの素材が原因なのだろう。


「まぁ、どれがっていうか……思いつくのは1つしかないんだけどさ」


インベントリ内からある素材を……魔結晶を取り出す。

他の素材……狼や鹿の素材とは毛色が違い、これだけは他のゲームに在ってもおかしくはない。

しかしながら、このゲームでは話が違う。


考えても仕方がないため、メニューからフィルター加工机を購入し設置してみる。

すると、だ。


「……煙草製作のとほぼ変わらないじゃん」


出てきたのは、木製の机とその上に乗ったすり鉢。

ローラーがあるのかないのか程度の違いであり、正直ほぼこれだけでも煙草を作れるんじゃないだろうか。


机の前に立ち、すり鉢へと手を翳す。

すると、先程求めていた画面……素材選択画面が出現した。

といっても、選択できるのは魔結晶のみなのだが。


【フィルター加工チュートリアルを開始します】

【指示に従って作業を行ってください】


加工手順は意外と簡単だった。

というのも、元となるフィルターは用意されていたからだ。

魔結晶をすり鉢で丁寧に粉状になるまですり潰した後、それを液体……今回は水を使ってペースト状に。

ペースト状となった魔結晶を、フィルターに塗りたくり暫く放置。


「えぇっと……この後は、ペーストが完全に乾いて、中からフィルターを取り出したら完成?本当に小学生の工作レベルだねぇ……」


数分後。完全に乾ききったソレを軽く叩く事で砕いてみると。

中から出てきたのは、完全に紫色の結晶となったフィルターだったものだった。


【フィルターの加工が完了しました:『魔結晶のフィルター』×1】

【スキルを発現しました:【フィルター加工】】


「スキルまで……いや、確か掲示板だと生産系のスキルはラーニングの確率が他より高いんだっけ?」


『魔結晶のフィルター』を持ってみると、その見た目に反して意外と柔らかい。

ほぼ普通の煙草のフィルターとあまり変わらない固さだろう。


――――――――――

『魔結晶のフィルター』

種別:素材

品質:D-

説明:魔結晶でコーティングされたフィルター

   このフィルターには魔の力が込められており、通して吸った煙に魔の力を生じさせる

――――――――――


「……ほう?」


どう見てもコーティングとかいうレベルではない事については置いておいて。

気になったのはその後の説明文の内容だ。

……魔の力を……って具体的にどういう事なんだろう。

具体的な事が書かれていないのはゲーム的に良いとして、問題は使い道だろう。

また同じものを作る事は出来る。しかしながら魔結晶の数的に量を用意する事は出来ない。

ならば、


「仕方ない。仕方ないなぁこれは。うんうん、本当に仕方がない。私的には狼とか使いたいんだけどなぁーすぐ用意出来て安価っていうとどうしても薬草になっちゃうよねー仕方ないなぁー」


薬草を使うしかないだろう。

……普通なら絶対使わない。やらない。けどこれは検証の為だから!ちょっと良い感じの煙草が出来たとしても普段使いするわけじゃないし!

心の中で、誰に向かってかは分からないが言い訳をしながら。

私は鼻歌雑じりに煙草の製作を開始した。


「ふんふふーん……おっと、ここでインベントリ内から選択するわけだね」


基本的な作業は『硝子の煙草』を作った時と変わらない。

唯一変わるのは、『魔結晶のフィルター』をインベントリ内から素材として指定するという工程が挟まった程度だろう。

そうして出来上がった煙草は――何故か巻紙の部分に緑色の幾何学模様が描かれているモノだった。


【煙草を製作しました:『具現 - 薬草の煙草』×1】

【オンラインヘルプが更新されました:魔煙術】


「……いやいや、色々新情報が一気に来すぎだって」


どうやら、また何か新しいコンテンツに触れていたようで。

少しだけ遠い目をしながらも、私はオンラインヘルプへと目を通す事にした。

願うは、ややこしいものではないコンテンツではなければ良いな、と。

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