「結局、あんたの変換機の能力ってなんなのさ?」
リオは特警庁のリビングで、ソファに座ったユウキに振り返った。
彼女も例に漏れず、ペーパーヴィジョンのニュースを見ていたところだった。
「ああ? なんで手の内を見せなきゃなんないんだよ」
「良いじゃん、別に。クロト動かしたり、オキタに何かしたりと気になるじゃん」
ユウキは多少迷った風な顔をしたが、やがて口を開いた。
「……過去の未解決事件の犯人に仕立て上げる能力だよ」
「うわぁ……」
リオは驚きと気持ち悪さを隠しもしなかった。
「……なるほど。それで、クロトを脅したわけだ。で、オキタのニュースでの事件も、全部あんたがでっち上げたってことか。えげつねぇなぁ」
「うるせぇよ」
「ねぇねぇ、ねぇやん、良い事教えてあげようか?」
「ん?」
事件が終わったと言うのにまだ居座っているマユミだった。
「なになに?」
「にぃやんの秘密」
「ほー、聞きたいねぇ」
「おい、マユミ、やめろ!」
ユウキは本気っぽく彼女を止める。
「えー、なんでー? いい話じゃないかー?」
「なんでもだよ」
「ふーん。別に本人が言いたくないなら、良いんじゃね?」
リオはあまり興味もなさそうだった。
「良いのー? そっかぁ、いいのかぁー……」 残念そうであり、また嬉しそうでもある複雑な表情を見せて、マユミは黙った。
「ちょっと、行ってくるな」
リオは立ち上がって、リビングから出て行った。
「どこいくの、ねぇやん?」
「昔の知人のところ」
「そっかぁ。いってらっしゃい」
リオが部屋から姿を消すと、マユミはユウキの隣に座ってきて、悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「にぃやんは、どうしてねぇやんにホントのこと言わないの?」
「……アサトの奴か」
マユミはキラキラとした瞳で頷いた。
「人間とイマジロイドは、相成れないんだよ。臧目と東京のようにな。これでいいんだ」
「あたしは関係無いと思うけどなぁ」
「世間様が許さんよ」
「そんなもの気にしてたら、何も出来ないよ?」
「リオの経歴に汚点が着くだろう。あいつは、この自治区を守る特別な存在でいてほしいんだ、俺は」
「へぇ。やっぱ好きなんだね」
「うるせぇよ、ませガキめ」
「ガキじゃないもーん!」
「ガキはガキだ」
ユウキは人体変換機で生まれ変わった過去を持っていた。
彼の以前の名前は、イタバシ・イザマ。今、リオが向かった墓に眠っているはずの青年だった。
了