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第10話

「結局、あんたの変換機の能力ってなんなのさ?」

 リオは特警庁のリビングで、ソファに座ったユウキに振り返った。

 彼女も例に漏れず、ペーパーヴィジョンのニュースを見ていたところだった。

「ああ? なんで手の内を見せなきゃなんないんだよ」

「良いじゃん、別に。クロト動かしたり、オキタに何かしたりと気になるじゃん」

 ユウキは多少迷った風な顔をしたが、やがて口を開いた。

「……過去の未解決事件の犯人に仕立て上げる能力だよ」 

「うわぁ……」

 リオは驚きと気持ち悪さを隠しもしなかった。

「……なるほど。それで、クロトを脅したわけだ。で、オキタのニュースでの事件も、全部あんたがでっち上げたってことか。えげつねぇなぁ」

「うるせぇよ」

「ねぇねぇ、ねぇやん、良い事教えてあげようか?」

「ん?」

 事件が終わったと言うのにまだ居座っているマユミだった。

「なになに?」

「にぃやんの秘密」

「ほー、聞きたいねぇ」

「おい、マユミ、やめろ!」

 ユウキは本気っぽく彼女を止める。

「えー、なんでー? いい話じゃないかー?」

「なんでもだよ」

「ふーん。別に本人が言いたくないなら、良いんじゃね?」

 リオはあまり興味もなさそうだった。 

「良いのー? そっかぁ、いいのかぁー……」 残念そうであり、また嬉しそうでもある複雑な表情を見せて、マユミは黙った。

「ちょっと、行ってくるな」

 リオは立ち上がって、リビングから出て行った。

「どこいくの、ねぇやん?」

「昔の知人のところ」

「そっかぁ。いってらっしゃい」

 リオが部屋から姿を消すと、マユミはユウキの隣に座ってきて、悪戯っぽい笑みを浮かべた。

「にぃやんは、どうしてねぇやんにホントのこと言わないの?」

「……アサトの奴か」

 マユミはキラキラとした瞳で頷いた。

「人間とイマジロイドは、相成れないんだよ。臧目と東京のようにな。これでいいんだ」

「あたしは関係無いと思うけどなぁ」

「世間様が許さんよ」

「そんなもの気にしてたら、何も出来ないよ?」

「リオの経歴に汚点が着くだろう。あいつは、この自治区を守る特別な存在でいてほしいんだ、俺は」

「へぇ。やっぱ好きなんだね」

「うるせぇよ、ませガキめ」

「ガキじゃないもーん!」

「ガキはガキだ」

 ユウキは人体変換機で生まれ変わった過去を持っていた。

 彼の以前の名前は、イタバシ・イザマ。今、リオが向かった墓に眠っているはずの青年だった。

  了


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