タムとベアーグラスは、
中央噴水から、清流通り三番街にやってきた。
いつものように住人が行きかいしている。
池のふち二巻きまで行けばアジトだが、
タムはふと、二人組みの男に気がついた。
背の高い、体格のいい男が二人。
清流通り三番街の掃除をしている。
地味なつなぎを着て、目立たない。
二人組みの腕には、腕章がある。
タムはそれを見ようと、二人組みに近づいていった。
二人組みは、掃除をしている。
水をまき、通りをごしごし洗い、埃を流し、通りはきれいなものになる。
それを何度も繰り返す。
タムは近くまで来て、腕章を確認した。
「ドラセナ清掃屋?」
タムは読み上げる。
二人組みの一人がタムに気がついた。
「掃除は珍しいか?」
きりっとした好青年だ。
灰色のつなぎに緑の帽子。遠目で見たときよりも体格がよく見えた。
「ええ、通りを掃除する人なんて始めて見ました」
タムは素直に答える。
清掃屋の男は、にんまり笑った。
タムの後ろから、はぐれたことに気がついた、ベアーグラスがやってくる。
「タム」
「あ、ごめん」
「ごめんじゃないわよ」
「お掃除している人がいたから、気になって」
「へぇ、お掃除?」
清掃屋の相方が顔を上げた。
相方はたれ目だが、体格は悪くない。
やはり地味な、灰色のつなぎを着ている。
「僕たちはドラセナ清掃屋といいまして、通りのあちこちをお掃除しています」
タムとベアーグラスは、清掃屋に感心した。
「さぁ、この通りもお掃除するから、悪いやつが来る前に…」
「悪いやつ?」
タムが聞き返したそのとき。
「…ちっ、きやがったな」
「どうする?」
「掃除するしかないだろう」
「だね」
ドラセナ清掃屋の二人が、低く会話する。
そして、たれ目のほうが、タムとベアーグラスに声をかける。
「動いちゃだめだよ、ちょっと大掃除だ」
にっこり笑われ、タムとベアーグラスはうなずいた。
清掃屋は、とおりの一角を見る。
何か、よどんでいるような、湧いているような。
ゆがみのようなものがある。
「あれはカビだよ。僕たちが」
「掃除するものだ」
清掃屋はそう言うと、右手を上に掲げた。
「よどみを流れに!」
「流れを力に!」
「清き流れで平和を守り!」
「明日を担う命を守り!」
ズシャア!っと効果音つきで、二人は、ポーズを決める。
「「変身!」」
彼らは腕章を握り、腕章のマークを手に取り、再び右手を太陽に掲げる。
右手から彼らの姿に変化が起きる。
鎧とも、全身タイツともつかないスーツに、つなぎが変わっていく。
顔は仮面で覆われる。
変身を終えると、彼らはまた、ポーズを決めた。
「ドラセナ・コンシンナ!」
体格のいいほうが名乗りを上げる。緑の鎧に赤のラインが入ってる。
「ドラセナ・サンゼリアーナ!」
たれ目だったほうが、名乗りを上げる。黄緑に深緑のラインが入っている。
「我ら、ドラセナ。よどみを掃除するもの!」
ジャキーン!
彼らは一通り、変身の過程を終えて、ポーズした。
よどみが、何かの塊になって、ドラセナたちに襲い掛かる。
「あれは…カビ…」
ベアーグラスが、震えた。
記憶ではカビでやられているのだ。
タムは、ベアーグラスの手を握った。
「あの人たちが何とかしてくれるよ」
ベアーグラスはうなずいた。
コンシンナが、右手を振る。
振ると、右手に、水の流れる刀らしいものが現れた。
「流れ、殺菌薬」
左手で、何かの塊を刀につける。
刀は少しだけ色を帯びた気がした。
「滅菌ソード!」
コンシンナがよどみに向かって、刀を振る。
刀は鋭い流れになり、よどみは真っ二つになり、カビの色が薄れた。
サンゼリアーナが右手を振る。
振ると右手に、水の塊の槍が現れた。
「流れ、渦」
両手で槍を持つと、槍は渦を描き、水を巻きはじめた。
「浄化スピア!」
サンゼリアーナの槍は、激流の水を放ち、
滅菌されたよどみは、清流通りに消えていった。
カビもよどみも掃除され、彼らはドラセナ清掃屋のつなぎの姿に戻った。
「三番街は、しばらく大丈夫かな」
「しかし、変身も疲れるな」
「うん、だけどそれがお仕事だから」
「そうだな」
ドラセナ清掃屋は、タムとベアーグラスに向き直る。
「怪我はない?」
ベアーグラスはうなずいた。
それを認めると、ドラセナ清掃屋は、親指を立てたポーズをした。
「ミッション・クリアー!」
みんな、なんだか笑顔になった。
なんだかすがすがしい気持ちで、
タムとベアーグラスはアジトに戻っていった。