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第12話 おまけの中身

タムとポトスと、タムの肩に乗ったリュウノヒゲは、

命の水取引商の店を後にし、

また、底あり沼一巻の路地もあとにした。

見送るように、命の水を意味する看板が、そこかしこにぶら下がったり貼られていたりした。

ポトスは大きな包みを肩の上に乗せている。

タムは両手で包みを持っている。

重くはないが、大事な気がしたからだ。

清流通り二番街に出て、裏側の世界の住人が行きかいするなか、

雨恵の町の噴水を目指し、

そこから、清流通り三番街へと入る。

タムはその間、歩きながら、ポトスのあとを追いながら、包みの中身を気にするという、

変に器用なことをやってのけていた。


やがて、清流通り三番街、池のふち二巻にやってくる。

路地に入り、奥の扉を目指す。

ポトスが扉をゴンゴンと叩く。

「帰ったでござる」

ポトスはいつもの調子で宣言した。

ネフロスのときと同じように、

キリキリキリキリと、ドアの内側でかすかに、歯車やギミックの動く音がする。

チーンと、安っぽい金属の音がして、

ドアノブが動いた。

ポトスは扉を開けて中に入り、タムが続いた。

「まずは、アイビーに報告でござる」

ポトスはタムにそう言うと、

一階の、グラスルーツ管理室を目指した。


先にたったポトスが、グラスルーツ管理室の扉を叩く。

「どうぞ」

いつもの静かなアイビーの声だ。

ポトスは包みを片手で肩に上げたまま、片手で扉を開けた。

「アイビー、いつものでござる」

言いながら、ポトスは自分の大きな包みを下ろした。

それを見計らったように、リュウノヒゲがタムの肩から、ポトスの肩へと飛び移った。

ぴょんと飛び跳ねる。

どうやら、肩幅のあるポトスの肩の方が、乗り心地がよいらしい。

「ご苦労様。グラスルーツで報告がきてるわ。タムにお土産があるみたいね」

「おまけのようでござる」

タムは自分の小さな包みを見た。

どうしたものだろう。

「とりあえず、タムにはその包みをあげる」

アイビーにそう言われ、タムはうれしくなった。

しかし、

「包みを開けてもいいわ。でも、口にしてはいけない。それだけは、まだ、守って」

アイビーは、静かにタムに言い聞かせた。

「まだ?」

タムはそこだけひっかった。

「そう、まだ。いつかわかるときもくるわ」

タムは素直にうなずいた。

アイビーは微笑むと、

「次のおつかい。ネフロスを呼んできて。いつものが届いた、と」

と、タムにおつかいを言いつけた。


タムは小さな包みを持ったまま、アジトの階段と上り坂を駆け上がった。

ネフロスの部屋は、タムの部屋の隣。

それだけは覚えている。

息もつかせず、大事に包みを持ちながら、

タムは駆け上がって、

自分の部屋の隣の部屋の扉前までやってきた。

ネフロレピス。

確かにそう書いてある。

タムはノックした。

「タムか」

中からネフロスの声がした。

「今開ける。アイビーから連絡は来ていた」

部屋の扉が開いた。

「タムにおつかいさせるとか。そんな連絡だ、で、なんなんだ?」

「いつものが届いた、と、伝えてと」

タムは鋭い目つきのネフロスを見上げながら、伝言を口にした。

ネフロスは、にやりと笑った。

「なるほど、いつものか…って、おいこら」

ネフロスの視線が、一点に定まり、不機嫌なものになる。

「もう、そんなもんもらってるのか?」

「え?え?」

タムはおろおろとする。

「それだ、その包み」

「え、あ」

タムは気がついたが、隠すわけにもいかず、どうしていいかまごついた。

「おつかい先でおまけでもらいました。えと…」

タムはネフロスに小さな包みを差し出した。

「おまけあげますから、怒らないでください!」

ネフロスはきょとんとしたが、次の瞬間笑い出した。

「おこってねーよ」

「怖い顔をしていました」

「そうじゃない」

ネフロスは一通り笑った後、タムにやんわり包みを返した。

「おまけでもらったならいいけど、その中身は、まだ口にするな」

「どうして…」

「まだ早いってことだ。じゃ、俺はいってくるぜ」

ネフロスは、タムをどけると、部屋をあとにした。


タムは、おまけの中身が怖いような気もしたが、

中身を見たい誘惑と一緒くたになりつつ、

とりあえず部屋に戻った。

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