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第二百十九話

コンコン。

アルージェはジェスに教えてもらったスべン団長の執務室の扉をノックする。


ノックの音に間髪いれずにスベン団長の声が聞こえてくる。

「入れ」


「失礼します!」

アルージェは扉を開ける。


スベンは入ってきたアルージェの方へ視線を向ける。

「おっ、アルージェか。体調はどうだ?」


「おかげさまでもうバッチリですよ!」


「それは良かった。若いから回復が早いな」

団長はガハガハと笑いながら話す。


「いやぁ、僕がっていうよりもラーニャさんの回復魔法のお陰ですよ。あれが無かったらきっと今もまだベッドの上で寝転ばされてたと思います」

アルージェは後頭部をさする。


「そうかそうか。それで用件はあれかな?」

スベンが壁に立てかけている二本の剣に視線をやる。


可変式片手半剣トツカノツルギちゃん!!はぁ、もう離さないよ!」

アルージェは可変式片手半剣トツカノツルギへ一目散に近づき抱き付き、刀身に頬をすりすりと擦り付ける。


流石のスベンもアルージェの言動に笑顔が若干引き攣る。


「ありがとうございます!怪我の具合が良くなってきたので、手始めに鍛冶をしようと思ったんですけどね。アイテムボックスをどれだけ探しても可変式片手半剣トツカノツルギが入ってなかったので、本当に血の気が引きました」

さっきまでのアルージェは何処に行ったのか、いつものアルージェに戻り団長に頭を下げる。


「お、おう。まぁ、なんだ。アルージェのそばに落ちてたから念のため持ってきたんだ」


「はい!本当ありがとうございます!僕は可変式片手半剣トツカノツルギの状態を見ますので!失礼しました!」

アルージェは可変式片手半剣トツカノツルギを抱えて颯爽と鍛冶場に戻っていく。


「強いからつい忘れちまうが、あいつ本当に鍛冶屋なんだな」

アルージェの背中を見送り、団長は執務に戻る。


鍛冶場に着いたアルージェは可変式片手半剣トツカノツルギを台の上に置き、状態を確認する。


「あれ?思ったより痛んで無いなぁ?無茶苦茶な変形したからすごく痛んでると思ったんだけどなぁ」

細かいところまで確認するが、可変式片手半剣トツカノツルギは殆ど痛んでいない。


通常通りの使用感といったところだった。


「あの形態ってまた出来るのかな?」

アルージェは可変式片手半剣トツカノツルギを手に取り、意識を集中する。


可変式片手半剣トツカノツルギ参式タイプ・スリー闇過剰吸収形態アビスエクセプション= 隠陽影刃イワトガクレ

アルージェの言葉に呼応して、可変式片手半剣トツカノツルギが変形する。


「お?おぉぉぉぉ!まさか、この形状、記憶しちゃった!?ルーネ!ルーネ見て!ほら!」

アルージェは興奮で近くで寝ていたルーネを無理矢理起こす。


ルーネは片目だけ開けて、嬉しそうなアルージェを見てやれやれと立ち上がる。

そして、アルージェが嬉しそうに見せてくる剣を適当にワウワウと相槌を入れて返す。


「まさか、こんな形で可変式片手半剣トツカノツルギに新しい形態が増えるなんて想像できなかったよ!鍛冶と付与。なんて奥深いんだ!」

アルージェは楽しそうに可変式片手半剣トツカノツルギを掲げる。


「そういえば、団長が使ってた大剣もあるんだった。ん?スベン団長と鎧騎士団長どちらも団長か・・・。ややこしいな。鎧騎士団長って呼ぶかな。さてこれどうしようかな?中に鎧騎士団長の魂が入っている訳だし」

顎に手をやりアルージェは考える。


「鎧騎士団長が使ってた大剣はちょっと別で使いたいんだよなぁ。なら鎧騎士団長の魂はどうしよう?大剣から魂を引き抜くなんて出来るんだろうか?いや、もしも引き抜けたとして器どうしよう?」


アルージェは自分のアイテムボックスを漁り無極流転槍アメノヌボコを取りだす。


「ねぇ、ルーネ。この武器ってデータベースみたいに経験を蓄積していくんだけどさ、今はまだかなり受け身なんだよね。実際に使われないと蓄積されないしさ。もしもこの蓄積されていくだけの武器に思考力を加えたらどうなると思う・・・?」

アルージェは、ニヤニヤと子供がする顔ではない笑いを見せて付与魔法、刻印魔法に必要なものをアイテムボックスから取りだす。


ルーネはあぁ、また始まったよと端っこに戻って猫のように丸まり眠りに着く。


案の定、アルージェは鍛冶場と別館を行き来する生活が始まった。

ミスティ達も部屋に戻ってくるようになっただけマシだと思い、特に咎めることはしなかった。


アルージェが必死に新しい武器の試行を重ねている間も刻一刻と聖国では開戦に向けての準備が行われていた。


「ユーキ。これが次の標的だ」

豪華な椅子に座った老人は黒髪黒目の青年に孫を見るような優しい視線を送り、手配書を見せる。

そこには赤髪青目のアルージェの顔が描かれていた。


「聖国が戦争を仕掛ける。おそらく戦場にこやつも出てくるはずじゃ。見つけ出して、仕留めるんじゃ。準備は出来ておるか?」


「あぁ、お前に心配されなくとも準備は出来ている」

ユーキと呼ばれた黒髪の青年は老人を睨みつける。


「おぉ、怖いのぉ。いつまで怒っておるのじゃ。あれはお前の心を楽にするためだと何度も説明しただろう?」

口では怖がっているフリをしているが老人は青年に怯えた様子は全く無い。


ユーキは舌打ちをする。


老人はピクリと眉を動かし、「絞めろ」と呟く。


老人の言葉でユーキの首に巻かれていた首輪がユーキの首を絞める。


「カハッ・・・」

ユーキは首輪に首を絞められて苦しそうに首輪を取ろうと地面に這いつくばり足掻く。


老人は豪華な椅子から立ち上がり、ユーキの方に移動する。

「誰のおかげで今の生活が出来ておるのかしっかりと考えるのじゃ。儂は仕事が出来るやつには優しいが、態度を改めるんじゃぞ?限度があるからのぉ?」

首を締め付けられて苦しそうなユーキを老人が見下ろす。

老人は手配書をユーキの前に落とし、そのまま扉から出ていくと、ユーキの首を絞めていた首輪が緩まる。


ユーキは生きるために必死に空気を吸う。


そして老人が落としていった手配書を見る。

「どう見たってまだ小学生くらいだろ。こんな小さいガキが標的だと?お前らはどれだけ腐ってやがるんだよ!」

ユーキは地面に拳を叩きつける。



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