「オレハシネナイ。オレガシンダラダレガタミヲマモル」
鎧騎士が片言だが言葉を発し、闇の魔力を放出する。
揺らぎの無い水辺に石を落とした時のように、鎧騎士を中心に闇の魔力で衝撃波を起こす。
「『
アルージェは咄嗟に
「カレン教授!盾の後ろに!」
カレンはアルージェの言葉で咄嗟に動き、アルージェが出した盾の後ろに隠れる。
だがアルージェはカレンに盾を渡してしまったので、まともに衝撃波を食らってしまい、壁まで吹き飛ばされてしまう。
「アルージェ!」
カレンの悲鳴のような叫び響く。
カレンの叫び声を聞いても、闇の魔力に捕まってしまっているアインは完全に気を失っているのか、目を閉じていて微動だにしない。
鎧騎士は大剣を手に取り、カレンに一歩ずつ近づいてくる。
近づいてくる鎧騎士に対してカレンは魔法を行使しようとする。
だがカレンは短期間で大規模魔法を二度連続で行使している為、もう体内に残っている魔力が非常に少なく大した魔法を行使することが出来ない。
「敵を貫き、飛び散れ
カレンは体内にほとんど残っていない魔力を捻り出し、魔法を行使する。
カレンが行使した魔法を鎧騎士避ける事せず、ただ真っ直ぐ一歩ずつ進んでくる。
「オレハシネナイ。タミヲマモルタメ。ダレモココハトオサナイ」
カレンは後ろに下がりながら魔法を行使する。
「氷結せよ氷塊。放て
無理に魔法を行使したことで、体が限界を迎えてしまい足がもつれて転んでしまう。
もう立つことすらもまともにできない程に魔力を使ってしまった。
「魔力の供給は何処からよ」
残った魔力を目に集中して魔力の流れを見る。
壁・天井・鎧が初めにいた場所思い当たるところ全てを見たが、鎧騎士から溢れる闇の魔力のせいで何処から鎧に対して供給されているのか分からない。
「鎧騎士が倒れた時、間違いなく鎧には魔力を感じなかった。この目で確認したもの。それなら一体何処から」
鎧騎士は一歩ゆっくりと近づいて来て、カレンの目の前で立ち止まる。
そして、鎧騎士が大剣を振り上げる。
「ここまでか・・・」
カレンは視線を上げて、鎧騎士を睨みつける。
「もし次が有ったら、あなたを絶対後悔させてやるわ」
振り上げた大剣を見ると大剣から鎧の方へ魔力を流すためのパスが繋がっていて、鎧側へ魔力を供給してることに気付く。
「はぁ・・・。本体は剣だったって訳ね。こんな魔力量、ただの剣が持ってるなんて思わないじゃない」
カレンは自分の知識不足を嘲笑する。
「ココハオレガマモル」
鎧騎士が振り上げた大剣をカレン目掛けて叩きつける。
「っ!」
カレンは恐怖で目を瞑る。
目を瞑った後、すぐに聞き慣れた男の子の声がした。
「『
声がした後カレンの横をブワッと風が横切る。
刹那、金属と金属がぶつかる音が聞こえる。
目を開けると小柄で小さいのに何故か安心出来る、頼もしい男の子がいた。
カレンは泣きそうになりながら名前を呼ぶ。
「アルージェ!」
「教授、すいません。一瞬だけで気を失ってました。でも、もう大丈夫です。教授は僕が守りますから」
剣と剣をぶつけてお互いに隙が生まれたが身体強化の強度を高めて、無理矢理に位置を戻し肉薄する。
アルージェは
鎧騎士は大剣を盾に使ったり、
アルージェから有効打を加えることは出来ないが、アルージェの目論見通りカレンから距離を置くことに成功した。
アルージェはチラリと闇の魔力に囚われているアインへ視線を移す。
「アインさん。絶対助けますから、もう少しだけ頑張ってください」
アルージェが鎧騎士へ視線を移すと鎧騎士は咆哮し、アルージェには絶対に剣が届かないであろう位置で剣を振るう。
鎧騎士が剣を振るうと同時に闇の魔力が剣の軌道を形造り、アルージェへと飛来する。
「魔力を使って斬撃を飛ばせるって事ね」
アルージェは飛来する斬撃に
「僕にそれは効かないよ」
「オレノジャマヲスルナァァァァ」
鎧騎士は大剣を何度も振るい、斬撃を何度も何度も飛ばす。
アルージェは飛来する斬撃に即座にパスを繋ぎ、斬撃を消失させる。
「どんだけ魔力あるのさ!」
アルージェは斬撃が無くなった隙に鎧騎士に接敵し、鎧騎士に
だが、鎧から闇の魔力が溢れ出て、アルージェの攻撃を阻害する。
「魔力が溢れてクッションみたいになるのやりにくいなぁ」
鎧に対してパスを繋ぎ魔力を消失させようとするが、攻撃されそうな時にしか魔力を纏っていないようで不発に終わる。
アルージェは
魔力を吸収しすぎて、一番大きな状態である
「このままじゃジリ貧だ。あとどれだけ吸収できるか・・・」