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第二百一話

教会に向かう道中、カレンの顔が険しくなっていく。

「こんな魔力。いえ、ありえないわ」

カレンは何かを呟きながら教会への道を進む。

教会へ向かう道には逃げ出そうとしていたのか、人が何人も倒れ込んでいた。


アルージェは唇を噛みながら、倒れている人達の横を通り過ぎていく。

「アルージェ。君のせいじゃない。まだみんなまだ息が有る。適切な処置をすれば助かるはずだ」


「でも、これがもしも聖国からの攻撃なのであれば僕のせいなんです」


「大丈夫。まだそうと決まった訳じゃ無い。とりあえず先に進んで何が起きてるか確認するのが先決だよ」


「そうですね・・・」

アルージェは念でルーネを語りかける。


(ルーネ。廃教会までの道中人が何人も倒れてるんだ。可能な限りラーニャさんの元に連れて行ってほしい)


(ウォフ)

ひとまずはルーネに任せることができたので安心だろう。


倒れている人達を横目に進み、ようやく廃教会にたどり着く。


「なんなのよ。これ・・・」

異変に気付いているのはカレンだけでは無い。


「なんだか魔力がベッタリと張り付くような感じがして気持ち悪いです」

アルージェは廃教会の周りに溢れ出てきている魔力を見て呟く。


「魔力のことはあまり分からないけど、確かにちょっと嫌な感じだね」

アインも魔力の流れが見えなくとも近づいてはいけない場所だと感じ取っているようだ。


「そうね。この感じ・・・」

カレンは目を瞑り、魔力の根源を探る。


「教会中から闇の魔力が溢れてるわ。マナスポットでも無いのにどうなってるのかしら?とりあえず中に入りましょう」

アインとアルージェはカレンの言葉に頷き、教会の扉の前に立つ。


「何があるか分からないから慎重に頼むわ」

カレンは杖を取り出し、構える。


アインもアイテムボックスから鎧を取り出し装着する。

そして盾と剣を構えて完全武装する。


可変式片手半剣トツカノツルギを取り出してからアルージェはアインに目線を送り、タイミングを合わせて扉を開け放つ。

ドロっとしたような重くねっとりとしたような魔力が流れ出す。


教会の中に入ると更に闇の魔力が一層濃くなったのを感じる。

中を見渡すと逃げ遅れたのだろうか。

三十以上の人達が倒れている。


アルージェは近くに倒れていた人に駆け寄り、声を掛ける。

「大丈夫ですか!?」

話しかけた人は意識が朦朧としているしているが、死んではいないみたいだ。


「大量の闇の魔力が急に溢れてきたんだったら、魔力に耐えきれず魔力酔いの可能性が有るわね。外に出すわよ!外も大概だけど室内よりはマシでしょう」

カレンの指示でアルージェとアインは中で倒れていた人を外に出す。


誰も様子を見る人が居ないので、アルージェがルーネに念を送る。

(ルーネ。教会の中にいた人達を外に出してるんだけど、できればこっちの人達もラーニャさんに見せてほしい)


(バウッ!)

どうやら近くにいるらしいので、こっちに来てくれるらしい。


「ワウッ!」

背中にラーニャを乗せたルーネが到着する。


「なるほど、確かに一人一人辺境伯邸に連れて行くより、ラーニャさんに来てもらった方が早いね。よし!なら、手分けしてササっと中にいる人たちを救出しよう」


「バウッ」

ルーネは頷き吠える。


アルージェとアインとルーネで救助したので、救助はあっという間に終わった。


「あれ?ライナがいない?」

だが教会の中に倒れていた人を全員の救助したにも関わらず、ライナの姿が無いことに気付く。


「もしかしたら、もう逃げた後かもしれないね。考えても仕方ない。一旦置いといて、本題の方を進めちゃおうか」


「そうですね」

アイン、カレン、アルージェの三人は救助した人達をラーニャとルーネに任せて、もう一度教会の中に入る。


カレンが入り口からひとしきり見渡すが、魔力を放っていそうなものは発見できない。

「教会内に魔力の根源らしきものは無いわね」


「カレン教授、救助してる時にみつけたんですけど、ここの竪穴から魔力溢れてきていませんか?」

アルージェが梯子付きの竪穴に案内する。


「なるほど、確かにそうね。ここから流れてきてる。間違いないわ」


「なら何かあってもすぐ対応出来そうな僕から行かせてもらうとするかな」

アインが先陣を切って、闇の魔力が溢れている竪穴を降りていく。


「なら、次僕が行きますね」

次にアルージェが梯子を降りていく。


アルージェはカレンが大丈夫か気になり、チラリと上を見上げる。


そこには絶景が広がっていた。

アルージェはサッと顔を下に向ける。


「そうだ。あんた今上見たら、どうなるか分かってるでしょうね?」

カレンからありがたい言葉を頂いた。


「は、はい!それは勿論です!」

もう見てしまったことは墓場まで持って行くことにしよう。


例え神様にお願いされたとしても、もう絶対に上は見ないと誓う。


だが、欲望とは簡単に抑えるのが、難しい。

何度か見たくなる欲望を必死に抑えて下に降りていく。

もう一度見てしまったら歯止めが効かなくなってしまうに違いない。


カレンを怒らせてしまったら学校に戻った時、何をさせられるか分かったもんじゃない。

それなら大人しく読み手ライブラリアンと戦う方がいいに決まっている。


アルージェはこの梯子の素材はなんだろう考えながら、気を紛らわせてただ必死に梯子を降りた。


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