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第七十八話

「さて、アルージェとか言ったか、何を学びにこの学校に来たんだ?」

学園長がいなくなった後、コルクスから声を掛けてきた。


「えと、付与魔法を学びに来ました!」


「付与魔法、人の生活を豊かにしたいとかそんなところか」


「違います!僕は鍛冶が好きで自作した武器を使って冒険者もしてるんですけど、一度すごく強い人と戦ったことがあるんです、その時は何とか相手の弱みが分かって何とか勝てましたが、

弱みが見つけられなかった場合、今の僕では到底太刀打ちできないんです。

だから、作った武器に付与魔法を施して、すこしでも戦力を高めれたらと思いました」


「自分の力不足を魔法で補いたいということか、まぁきっかけは何だっていい」

コルクスは少し考えてから、


「まず俺は、今ない魔法を作り出す研究をしている、つまり新魔法の開発だ。

論文を出したりして国にも認められているが、付与魔法に特化しているわけではない。

だが付与魔法師として食っていくくらいには教えることはできる、だからそこまでは教えてやるが、

それ以降は自分で学べ」


「わかりました!」

アルージェは元気よく答える。


「だが何するにしても、魔力の操作ができないことには始まらない、はじめは魔力操作ができるようになってもらう。

時間は有限だ無駄にするわけにはいかないから俺が考案した方法でやらせてもらう。

魔力操作ができるようになれば魔法というものが何なのか知識をつけてもらう。

だが俺がお前に教えることは俺の研究内容に沿って教える。

つまり、既存の魔法とは少し違う考え方だということを理解しろ」


「わかりました!」


「返事がいくら良くても、魔法がうまくなるわけではない、俺の信用を勝ち取りたければ行動で示せ」

突き放した発言をしているが、コルクスはにやりと笑いこれからのアルージェがどう成長か楽しみにしているようだった。


「魔力操作だが、俺が考案したやり方で身に着けてもらう、何痛いのははじめだけだ、行くぞ」

そういうとコルクスの周りに何かが集まっていくのが本能的にわかる。


「これだけあればいいか、おい狼、お前の主をしっかり押さえろ」

コルクスがルーネに指示を出し、とりあえずルーネは素直に従う。


アルージェが全く動けなくなるように狼にしては大きな体で地面に押さえつける。


「先生これは一体・・・?」


「お前が垂れ流しにしてくれているおかげこの部屋は魔力が充満している、放出口を俺の魔力で止めて全部お前の体に返す」


「えっと、つまり・・・?」


コルクスはルーネが押さえつけているアルージェの前に移動して、手をアルージェの頭に置く。

グルグルと体の内側をかき回される感覚が始まる。

「体を魔力で覆う、放出口を遮断、魔力を注ぐ」


コスクスから何かがアルージェの体に無理やり入ってくる。

「アルージェ、何かが体の中に入ってきている感覚がわかるか?」


「はい、内側で勝手に動いてなんだか気持ち悪い感覚です」


「よし、ならそれをコントロールして、俺がお前の体を覆っている魔力を突き破って体外に放出しろ」


「突き破る、突き破る」

意識するがどうすればいいのかわからないのでなかなか止めることができない。


「できなければ、魔力過多になって肉体が破裂するぞ」


「は、破裂!?やばい!やばい!、突き破る!突き破る!」

コルクスの言葉を聞き、さらに慌てるが、どうすればいいのか、全く分からない


「一点突破で突き破る、膜を切り裂く、ハチの巣にする、焼き尽くす、イメージはなんでもいい、魔力をイメージ通りに動かして、さっさと突き破れ」


「イメージ、イメージ」

アルージェは必死にイメージをして動いているものを操作しようとする。


「おい、早くしろ、そろそろ出るところない魔力が体内から無理やり出ようとして痛みが」


「いてぇぇぇぇぇぇ!」

コルクスがすべて言い切る前にアルージェの体に痛みが生じる。


「ほら、言わんこっちゃない痛みがある状態でもいいから早くイメージを固めろ」


「痛い、イメージ、痛い、痛い、イメージ、痛い、痛い、痛い」

イメージを固めようとするが、痛みのせいで集中力が途切れる。


痛みで暴れようとするが、ルーネに押さえつけられているため動くこともできない。


「くそっ、動けない」


「突き破ることでしか助からない、もう肉体にはここにあった魔力すべてと、俺の魔力を注いている、おそらくそろそろ許容範囲を超えるだろう、何でもいいから魔力を体外に出さなければ死ぬぞ」


「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”」

ミチミチと体からも悲鳴が上がり始める。

痛みで気が狂いそうになり、叫ぶとルーネが心配そうにアルージュ見つめて、コルクスとアルージェ交互に視線を移す。


「今日はここまでか」

そういってコルクスが魔力を注ぐのをやめようとした時、バチンとアルージェの体の周りを纏っていた魔力が弾ける音がして、

アルージェから魔力が放出されて、魔力の奔流が起こる。


体を押さえていたルーネ、魔力を注いでいたコルクスが吹き飛ばされるが、

ルーネは吹き飛ばされた後すぐに体勢を立て直して、壁に着地して勢いを殺して、そのまま床に着地する。


コルクスは詠唱せずに「浮遊フライ空気障壁エア・ウォール」と呟くと持っていた杖が光りを放ち、浮遊の魔法が発動し、空気の壁でアルージェから放たれる魔力の衝撃を和らげる。

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