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第七十二話

学園長から一週間待ってほしいといわれたので、それまで暇になってしまった。


せっかくだから王都の冒険者ギルドにいって仕事を受けてもいいが、

ブロンズランクになったばかりに自分にできることがあるのかわからないので一旦保留。


鍛冶屋を見て回るのも楽しそうだけど、どこにあるのかわからないから保留。


初日少しだけ街の様子をみて回ったが王都は広い、後からミスティさんに教えてもらったのことだが、

王都には東西南北で区画が分かれていて、初日にルーネと一緒に回ったのは西区画でその中でも区画が細分化されているようで門付近の区画に当たるらしい、

同じところをもう一度回るか別の区画に行ってみるか迷うところではあるが、一週間も余裕があるし、ミスティさんたちを放っておくわけにはいかないので

西区画を回ろう。


さっそくミスティさん達に相談しましょうそうしましょ。


「ミスティさんちょっと「少年!街に出るぞ!」」

ミスティさんが興奮気味に話し始める。


「あ、はい、僕もそのつもりで声を掛けました」


「おっ、心の繋がり感じるな、なら早速用意するからすまないが少しロビーで待っていてくれ」


「わかりました!ルーネ行こ!」

寝転がっていたルーネにアルージェが呼びかけるとすかさず「バウ!」と返事して、立ち上がりアルージェに追従する。


「今日はあの遊びしないからね!この前みんなに見られて恥ずかしかったし」

その言葉を聞いてルーネは悲しそうに「クゥン・・・」と鳴く。


「ちょっと!ちょっと!そんなかわいい声出したこと初めて聞いたよ!?秘密結社らびっといあーに感化されない?そんな可愛い声出したってしないからね!」


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「うぅ、結局だよ結局、うぅ」

ミスティ達がロビーに来るまでルーネと遊んでいたが、

白熱してしまい、ミスティが来た時には「ち〇ちん」と連呼していた。


「バウッ!」

アルージェの落ち込みとは反比例してルーネは遊んでもらえてかなり上機嫌で、満足そうである。


「まだ少年だし、気にする必要はないさ、なぁマイア?」

ミスティが何度も聞いたようなフォローを入れてマイアに話を振る。


「気にする必要はないかと、きっとロビーにいた人達元も気な子供にしか見えてないと思いますよ」


「そ、そうですよね、子供ですもんね」

アルージェはマイアの言葉を聞いて無理やり納得する。


「それで、少年、今日はどこに行きたいとか予定はあるのか?」


「いやー、実は何も決めてなくて、はじめは仕事をしようかとも思ったんですが、僕まだブロンズランクでして、しかもほとんど運搬作業しかしてないんですよね、だから討伐とかそういう仕事できるかわからなくてちょっと考えてるのと、あとは鍛冶屋ですね、見に行きたいんですが、どこにあるかもわからないので、どうしたものかと思いまして」

ミスティさん達にも一緒に考えてもらえないかと考えていたことを伝える。


「ふむ、なら冒険者ギルドでどれくらいの仕事があるのか見に行ってもいいかもしれないな、

ブロンズランクとは言えここは王都だからな仕事はなんでもあると思うぞ、ついでに鍛冶屋の場所なんかも聞けてちょうどいいじゃないか、

まぁ王都にくるまで1月以上かかっているから仕事せずに1週間休みを取るでもいいとは思うがな、魔法学校に行ったら勉強漬けで休む間なんてほぼない可能性もあるしな、

何をするかはアルージェに任せる、どうしてもというなら決めてやってもいいが」


「なら、皆さんもお疲れだと思うので1週間休みにしましょう!せっかくの王都見て回りたいですし!」


「フフフ、アルージェならそう言ってくれると思ったよ、そこで一つ提案なのだが、休みの間、一人一人が行きたいところ出して、皆でついていくというのはどうだろう」


「おぉ、なんか楽しそうですね!いいですよ!」


「バウ!」


「お嬢様のおっしゃる通りに」


皆ミスティの提案に同意する。


「マイアも他人事のように言っているが、しっかり行きたいところ考えておくようにな」


「うっ、かしこまりました、検討しておきます」


「どこに行きたいかなぁ、やっぱり鍛冶屋とかかなぁ考えておかないと」


「バウ!」


「そうだね、ルーネも考えておいてね」


「それじゃあ、今日は私の行きたいところについてきてもらおうか」


「おー!」「バウ!」「かしこまりました」


「マイア硬いぞ、今週くらいはもう少しほぐしてもいいんじゃないか」


「・・・かしこまりました、お嬢様の命令とあれば、それでは」

マイアは「コホン」と咳払いして、「おー」と恥ずかしそうに片腕を天に掲げる。


アルージェとルーネがマイアの顔を見ると

マイアは照れを隠すようにアルージェとルーネに

「そんな顔でみるな!!」と声を荒げる。


「ははは、やればできるじゃないか、マイア」

マイアを少し褒めてから「さぁ私の行きたいとこだが、すでに気づいたかもしれないが王都では魔道具の使用が非常に活発なんだ、見てたら私も魔道具が欲しくなってな、ということで今日は魔道具店巡りをしたいと思う、

アルージェは付与魔法に興味があるのだろう?きっといい刺激になると思うぞ」


「なるほど、確かにそうですね、あの街灯なんかも魔道具なんですか?」


「あぁ、そうだ、魔道具は人々の暮らしを豊かにするんだ、アルージェが技術を学び領に持ち帰れば、父に少しは恩返しが出来るだろう」


「お嬢様・・・」

マイアはミスティからそのような言葉が出るとは思っていなかった。


あの時、あの場所でアルージェとの戦いに敗れてから、ミスティの状況はいい方向に向かっている。

誰とでも明るく人と話すようになった。

家族と和解、弟とはまだ距離があったがそれでも確実に前進している。

そして一番大きなこと対等に意見を言い合える頼れる人との出会い

私はただ、寄り添うことしかできなかったが、アルージェという存在が出来たことで、何か心境の変化がでたのだろうと安易に想像できる。


きっとあそこでアルージェに負けていなければ、村の人達を一人でも殺めていたら、アルージェが村の人たちに真実を話していたら、きっと今のような平和な道は歩めていなかっただろう。


「アルージェ様に感謝ですね」

マイアが誰にも聞こえないほど小さく呟く。


ルーネにはしっかりと聞こえていて、一瞬マイアに目線を向けるが、すぐに前を歩くアルージェ達のほうを向き聞かなかったことにした。

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