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第七十話

学園長室のフカフカのソファーにアルージェとミスティが腰かける。

アルージェの横にはルーネがお座りして、ミスティの後ろにマイアが待機する。


「さて、まずは自己紹介をさせてもらおうかの、儂はこの学園の学園長をやっておる、ルミアスじゃ」


「あ、よろしくお願いします、僕はアルージェといいます、隣にいる大きな狼は僕の相棒ルーネです」

アルージェがルーネの頭を撫でると、「ワウ!」と元気良く吠える。


「おぉ、これはお利口さんじゃな、それにお互い信頼しあってるのがしっかりわかる、素晴らしいのぉ」

ルミアスはにこやかにルーネとアルージェを見る。


ミスティはソファーから立ち上がり

「すでにご存じではあるかと存じますが、私はミスティ・ブレイブラインです」


「ミスティかレインズが好きそうな名前じゃわいそれでそちらのメイドのお嬢さんは?」


「ミスティ様の側付きをしております、マイアです」


「マイア、いい名前じゃな、それにしても不思議じゃな、マイアから全くと言っていいほど魔力が放出されておらぬ、いったいどういう仕組みじゃ?魔術師を暗殺するための特殊な訓練でも受けたのか?」

ルミアスが少しプレッシャーを放つ。


「い、いえ、幼い時より放出する器官に欠陥がありまして、魔力を放出できないのです」

マイアはルミアスから放たれるプレッシャーに委縮する。


「なんと!それでその年まで生きておるのか!」

ルミアスが立ち上がりマイアに素早く近付く、すでに先ほどまでのプレッシャーがなくなり好好爺の雰囲気に戻っていた。


「治療法を見つけたのか?それとも何か特別なものか?副作用はあるのか?」

ルミアスが食いついてくるのでマイアは困惑気味に「い、いえ」と答える。


「放出する必要がないほどの魔力消費を体内だけで行っているということか?マイアよ、お主、他の人と比べて体が丈夫であったり、力が強かったりせぬか?」


「えぇ、鉄程度の強度であれば握りつぶすことができます」


「常時、身体強化魔法を使用しているような状態で魔力を使用し続けているのか、ただ身体強化魔法での消費魔力は少ないはずじゃが、ふむ」

ルミアスがあごひげを触りながら少し考え込む。


「ルミアス学園長?」

アルージェが声をかけるとルミアスは思考を止めてこちらを向く。


「あぁ、すまんの、年寄りの悪い癖じゃ、マイアのことは分かったが次はお主じゃアルージェ、なんじゃその垂れ流しの魔力量は」


「えっ?」

ルミアスに指摘され、カレンが言っていたことを思い出す。



”まぁ、魔法使えるならそんな馬鹿みたいに常に魔力出しっぱなしにはしてないか”



「昔カレンさんあったときに言われたことがあるんですが、馬鹿みたいに魔力を放出しているって」


「あぁ、そうじゃ魔法の心得がある子供なんかがお主のことをみたらお主の魔力で酔ってしまって失神してしまうぞ」


「それは一体どういう」

魔法の心得がないアルージェは学園長に言われてもしっくり来ていない。


「なるほど、魔力についての知識が全くないんじゃな、ここはひとつ儂が講義してやるかの」

ルミアスは立ちあがり、近くにあったペンサイズの短めの棒に魔力を通すと、棒は宙にぷかぷかと浮かんだ状態になる。



ルミアスが話始めると、魔力を通した棒がルミアスの横の何もない空間にルミアスが話した内容を転記する。


魔力というのは本来この世界のどこにでも存在する。

ただ、場所によっては少ないところあったり、逆に多いところもある。

魔力の多いところはマナスポットと呼ばれ、いまだに見つかっていない場所もあるが、見つかっているところは大体が曰くつきだったり、神聖視されていたり、禁足地として入ることを禁止している。

辺境伯の領地内であればヴァプンコヌングル遺跡がマナスポットになるらしい。


そして魔力は場所だけじゃなくどんな生物の中にも当たり前のように存在している。


自身の中に存在する魔力をコントロールして放出したりするのが魔法である。


人間の体内に存在する魔力は親から子に受け継がれると言われており、

親の親の魔力が多ければ多いほど子供も比例して多くなるといわれている。


実際に両親の魔力が高ければ高いほど子供の魔力総量は多くなる。

まれに突然変異的に魔力がほとんどない両親から魔力総量の多い子供が生まれてくる場合もあるが、

親よりも明らかに多いというだけで、もともと魔力を持った両親から生まれてくる子供とは雲泥の差である。


そして魔力の教養がある親から生まれた子供は親が魔力操作の方法を教えるので垂れ流しにすると教育も施せない家庭だと嘲笑われることになるので、

うまく体内で循環させていざ魔法を使用するときに、質のいい魔力を使用して魔法を行使できるよう教育される。


アルージェの場合、垂れ流しになっている魔力が他の人とは比べ物にならない量だったため、

他人を近づかせないようにワザとそういう風にしているのだといいように誤解されただけだと教えてもらう。


「とまぁ、基礎知識としてはこんな感じじゃ」

宙に浮いていた棒は机の上に戻り、それからぴくりとも動かなくなった。

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