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第六十九話

「類まれなる魔力総量!誰も近づけまいと放たれる獣のような荒々しさの魔力!まさに逸材!是非とも!歴史と伝統ある攻撃魔法研究会へ所属し小生らと魔術の深淵を覗いてみないか」

まるで、劇でも見ているかのかと錯覚する。


それほどまでに動きが大きかった。

それをみてアルージェ一行は動きが止まる。


だが学生たちはそうはいかなかった。

攻撃魔法研究会の学生を皮切りに、周りの学生が自身の研究会に参加してほしいと押しかけてくる。


「何、抜け駆けしてるんだ!是非うちのゴーレム研究会へ!」

「いや!何を!君みたいなタイプきっと使役魔法同好会のほうが向いてるよ!」

「召喚魔法!どうだい?」

「ホムンクルス!ホムンクルス!」


「うわぁぁぁぁぁぁぁ」

アルージェは学生たちにもみくちゃにされる。


「少年はどうしてここまで人気なんだ、マイアなにかわかるか?」


「いえ、見当もつきません」


「ふむ、やはりそうか、ルーネはどうだ?」


ルーネは首を横に振り「バウ」と返事をする。


「ルーネにもわからんとなると魔術を使うものにのみわかる何かがあるんだろうな」


ルーネ、ミスティ、マイアはもみくちゃにされる前に退避して雑談に興じる。


学生に声をかけられてから少ししか時間は経っていないのにアルージェの周りには人が集まり、

何故かアルージェは胴上げされている。


「助けてぇ!ルーネぇ!助けてぇ!」と胴上げされる度にアルージェが叫ぶ。


それを聞いたルーネはやれやれと立ち上がり助けに行こうとしたが、

強い気配の人間が複数こちらに向かってきているのを察知して、やめる。


「これは何の騒ぎじゃ!誰か説明せい!」

白いひげを蓄えた老齢の魔法使いが自身の声を魔法で増幅し、説明を求める。


その後ろには教官?だろうか五人の魔法使いが各々魔法を使用するための触媒を構えて立っている。

ほとんどの学生達は魔法使いの姿を見て散り散りに撤収する。


一番初めに話しかけてきた学生は残り、

「先生、申し訳ありません、この類まれなる才能の持ち主を我が攻撃魔法研究会へ勧誘しておりました」と説明をする。


老齢の魔法使いがアルージェを見て、目を見開く。


「なるほど、状況は分かった、お主は攻撃魔法研究会のディビックじゃな」


「はい、学園長!覚えていていただき光栄です!」

ディビックと呼ばれた青年は感極まっている。


「とりあえず今日のところは下がりなさい」


「わかりました、いずれまた会おう!」

そういってアルージェにウインクして、ディビックはその場を離れていく。


学園長と呼ばれた老齢の男性がディビックの背中を少し目で追ってからアルージェのほうを向く

「さて、お主のことは見たことがないな、この学園の生徒ではないじゃろ?確かカレン女士の知り合いに先ほど入場許可を出したってドルン先生が言っていた気がするがお主ことか?」


「昔カレンさんに魔法に興味があればここに行ったらと言われたので、来ました!」


「そうかそうか、ならとりあえず儂が直々に話そうかの、先生達も一緒に来てくれてありがとう、助かりましたわい」

後ろにいる先生達にお礼を言うと先生たちは各々の学部の建物に戻っていった。


「では、学園長室に直通じゃ」

そういうとアルージェ一行の足元に魔法陣が現れて、フッとアルージェたちの姿が消えて、そのまま学園長室に転移する。


転移後地面に着地して体制を整えてからアルージェが「魔法ってすごい!」叫ぶ。


「転移魔法は私も初めて経験したが魔法使いはだれでもこれができるのか?」


「フォッフォッフォ、転移魔法が使えるのはこの世界でもかなり限られておるよ、ブレイブライン家のお嬢さん」


「!?」

ミスティは名前を知られていること驚き、顔に出てしまう。


「何そんなに驚くことでもなかろうて、お主の父はレインズ・ブレイブラインもこの学院の出なんじゃから」


「父は魔法学校を出ていたのか、知らなかった」


「レインズは頭脳明晰で高速詠唱に秀でておったな魔法戦は無詠唱に近い速度で魔法を放つ高速詠唱を武器に相手のやりたい事させない戦い方がだったな、卒業してからは来ておらんが爵位を賜ったと聞いたのぉ」


「そんなにすごい人だったのか・・・」

アルージェも学園長の言葉を聞いて驚く。


「まぁ、そんなわけで少し知っているわけじゃよ」

学園長がアルージェ達を見渡す。


「とりあえず、そこのそふぁにでも座りなさい、今お茶を用意してもらうからの」

そういうと部屋の奥からキュッキュッキュと子供靴で歩いた時のような音が聞こえて、


うさぎ、パンダ、トラ、サメ、先ほどのパンダより小さいパンダ、後はティラノサウルス!?のぬいぐるみが忙しそうにお茶を用意し始める。


なんだこの可愛い生物はとアルージェ達は釘付けになる。


「あの、学園長、この子達は?」


「そやつらは秘密結社らびっといあーという名前のアーティファクトじゃ、生き物と言うわけではないが感情はあるらしくてな喜怒哀楽をしっかり体で表現してくれるぞ、ただどういう原理で動いているのかは解明されていないからの、研究させてもらっておる、研究以外の時は、ぷりちーじゃからここで応接係をしてもらっとるんじゃ、一人でも欠けると動けなくなるらしくてな、ここに居れば、そう言う心配もないからの」

学園長が説明してくれると、それに合わせて皆でバラバラに決めポーズを取るらびっといあー達。


「個体名は無くて皆んなで一つのアーティファクトなんですね」


「あぁ、そうじゃ、本人たちがそう名乗っておるからな」


「それにしても、みんなぴょこぴょこ動いて、可愛いですね、見てて癒されます」

アルージェが、らびっといあーを見つめていると、全員が嬉しそうにアルージェにじゃれつき始める。


「うわぁぁぁぁぁぁ」

六匹?全員で来たのでアルージェは抵抗できず、らびっといあーが満足するまで、もみくちゃにされる。


「フォフォフォ、早速懐かれておるな、どうやら皆もお主を気に入ったようじゃ」

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