目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第六十三話

辺境伯との決闘を行った翌日、王都にあるルミアス魔法学校へ出発するために門へ向かうと、

朝そこそこ早くだったにも関わらず、見送りにフィーネさんとスビア商会のラベックさんと従業員数人とラベックさんの娘リリィさんも居た。

「アル君!ついたら手紙絶対お願いね」

フィーネがアルージェに初めに声をかける。



リリィさんもそれに対抗して近づいてきて

「アルージェ様、私にも手紙を頂けませんか?」と言われた。



「えぇ?まぁ構わないですが・・・」アルージェはいきなりのお願いに困惑するが手紙くらいなら良いかとすぐに承諾する。

「ありがとうございます、アルージェ様!お手紙待ってますね!」

リリィはなぜか上機嫌であった。



(リリィさんラベックさんに言われて来たのかなもう王都に行ったら会えるかもわからないのに、わざわざこんな時間に来てすごい徹底した、色仕掛けだなぁ)

と意識の高さに感心する。



「すまんなアルージェ、別にリリィに言うつもりは無かったんだがどこからか情報を仕入れたみたいで俺とこいつらで見送りにいくのを待ち構えてたんだ」

ラベックは頭を掻きながら話す。



「アルージェ!王都での活躍期待してるぜ!」

「俺はいつか戻ってきてくれるって信じてるぜ!」

「うらやましい!なんでアルージェばかりモテるんだ!」



ご飯を何度もおごってくれた、スビア商会の従業員たちが各々激励?をくれる。



「ははは、ありがとうございます。それじゃあ僕たちは出発しますラベックさん本当にお世話になりました」



「おいおいおい、これで最後みたいな言い方だな、俺たちはお前を諦めてないぜ、そうだ」

ラベックは何か思い出したように腰につけていたアイテムボックスを漁り始める。



「ついでに仕事うけねぇか?この手紙をルミアス魔法学校のコルクスっていう先生へ配達するだけの簡単な仕事だ、受けるなら報酬は先払いで今渡すぜ」



「受けます!」



「なら、頼んだ」

そういって手紙をアルージェに渡す。



「報酬はこれだ」

アイテムボックスから金貨を一枚取り出しアルージェに渡す。



「なんだ、報酬高すぎないかっていう顔だな、これは妥当な金額だ、今更自分たちのの希少性が分かったか」

ニヤリとラベックが笑う。



「ルーネと僕だけなら王都まで半分の15日あれば余裕で行ける。郵便物だけでこの値段なら普通に荷物を運べば、アイテムボックスがあるから何個もまとめて受注できる」

ブツブツとアルージェは金勘定を始めるが、ルーネに頭を小突かれて意識を戻す。



「はっ!僕は何を」





「ははは、まぁ王都でもがんばれや!いつでも待ってからよ」





「はい!それでは!」

アルージェ頭を下げてからルーネに跨り、マイアが御者を務めているミスティの馬車へと近づいていく。



「お待たせしました。それじゃあ王都に出発しましょう」



アルージェは振り返り、未だに手を振ってくれている。フィーネさん達に手を振り返して、王都に向けて出発した。



「アルージェ様は人気者なのですね」

馬車を操作しながら並走するマイアからアルージェに話しかけてくる。



「たまたまですよ、巡り合わせが良かっただけです」



「たまたまだけではないと思いますよ、アルージェ様の人柄もあると思います」



「そうですか~? それだと嬉しいです」



「赤の他人だったミスティお嬢様の心配ができるほどにはお人良しですので」



「えっ、なんか言い方が褒められてるようには思えないんですけど」



「褒めております」



「それならいいですけど・・・」

アルージェはそれ以上追及しないことにした。



ルーネは二人の会話を聞き、冷めた目でマイアを見るがすぐに前を向き移動を続ける。



フォルスタから出てすぐということもあり、魔獣と遭遇すること無く順調に進み、野宿ができそうな開けた場所を見つけたので、野宿の用意を始める。



ミスティさん達もテキパキと用意するので、野宿慣れているのだろう。



食事はマイアさんが用意してくれるらしいので、ミスティさんとルーネと一緒に火を囲んで待つことにした。



「そういえば、これ」といって腰につけているアイテムボックスから本を取り出す。



「遺跡で光柱の中にあったものです、これのために人生かけてたんですよね?」

そういってアルージェは本をミスティへ渡そうとするが、「その本は私にはもう必要ないんだ、そのままアルージェが持っていてくれ」と断られる。



「ミスティさんがそういうなら預かっておきますが、あんな仰々しい光柱の中にあったんだから、きっとただの本ではないですよね?」

ペラペラと本の中身を確認するが、全ページ白紙で何も書かれていない。



「うむ、ただの本ではない聞いていたのだが・・・」

アルージェが本をペラペラとめくる様子をミスティは見ているが、何も起こらないので、

「言葉巧みに騙されていたのかもしれないな」と落胆する。



「アルージェは魔獣と話す男もしくはスラム生まれのポーちゃんという童話を知っているか?」



「んーどちらも聞いたことないですね」



「珍しいな、だれでも一度は聞いたことあると思っていた」



「どんな話なんですか?」



「どちらも話自体は対して面白くはないよ、特に魔獣と話す男はね」

そういってミスティさんは内容を話し始める。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?