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第五十六話

「疲れたー、最近ずっと武器触ってたから体から金属の匂いしてない?」

ルーネに念のため確認すると、鼻をスンスンと動かしアルージェの匂いを嗅ぐ。


ンガッと息を詰まらせたような反応が返ってくる、そしてそのままアルージェから離れていく。


「えぇ!?普通に傷つく反応なんだけど!」

そう言ってルーネに近づくとルーネもアルージェが近づいた分離れていく。


「せ、せめてどんな匂いなのか教えてくれぇ!頼むぅ!」

と全力近づくが、華麗にアルージェを飛び越えそのまま鍛冶スペースから出ていく。


「うぅ、酷い、酷すぎる、匂い袋とかで匂い誤魔化せないかな」

アイテムボックスから、少し良い匂いのする匂い玉を取り出し体に擦り付けようとしたところで、ルーネが戻ってくる。


「ワウッ!」とアルージェに近づいてきて、周りをクルクルと周り始める。

どうやら冗談だったらしい。


「いつの間にそんな技術覚えたんだ、ルーネ、なんて恐ろしい子」

ルーネが人間ぽく成長していることに少し、恐怖を覚えたが、

それは置いといて、最近ずっと鍛冶場に篭りきりだったので、人間としてまともな生活ができていなかったような気がする。

少し情勢についても把握しておきたい。


「ということで今日は久しぶりに町を周ろう!いいかな?」

ルーネに確認を取ると元気よく「バウッ」と返事をもらえた。


「よし!ならまずはこの店に売ってる商品の確認かな!」

ルーネが立っていたところ辺りで大きな音が聞こえたがきっと問題ないだろう。


鍛冶場から表にでるとロランドさんがこちらに気づき、近づいてくる。

「アルージェ様、いかがなされましたか?素材が不足しておりましたでしょうか」


「あ、いえ、おかげさまで、手持ちのもの全て補修できまして、町を周ろうと思ったんですけど、そういえばここで売ってるもの見てないなぁと思って、見させてもらえないかと思ったんですけどいいですか?」


「なるほど、問題ないですよ」

ロランドは店を見渡して、手が空いている人物に声をかけ、アルージェの案内をするように告げる。


「後はこのユーロに任せますので、何かあればユーロに確認していただければと存じます、それではごゆっくり」


そういって定位置にもどっていくロランド。


「できる男やぁ」

ロランドの対応に出来る男を感じながらユーロに挨拶して、武器を見てまわる。

ルーネも後ろからトボトボとついてくる。


「武器って手にとって素振りしても問題ないですか?」

追従してくれているユーロに確認を取り、許可が出たので、目についた剣を手にとり素振りをする。


「やっぱり、ここの店主さん良いもの作るなぁ、ん?」

剣を見ていたが不意に目に入った、明らかに単価が違う武器が並んでいる一画を見る。


剣を棚に戻し、その一画に近づき、武器を手に取ろうとするとユーロから制止が入る。

「アルージェ様申し訳ございません、こちら付与魔法が掛かった武器となります、お手を触れるのはご勘弁願えますでしょうか」


「付与魔法??この一画の武器は付与魔法が掛かっているから値段が他と違うってことですか?」


「えぇ、おっしゃる通りです」


付与魔法、こちらに転生する前にゲームで聞いたことがある。

見た目は普通の武器だが、自分で好きな能力を後付けすることが出来る魔法で、

マジックアイテム程ユニークな能力は付いていないが汎用的なものを武器自身に付与できるので、切れ味強化や、攻撃力強化なんかがよくわかる例だろう。


「付与魔法って、武器に後付けで汎用的な能力をつける物で認識あってますか?」


「そうですね、大方ご認識の通りです、汎用的というのがいまいちピンときませんが、具体例でいうと切れ味が良くなったり、持つだけで体が強くなったりとさまざまな効果が付与されます」


ふむ、やっぱり認識している通りか、

「誰でも付与魔法って使えるんですか?」


「あまり詳しくは無いですが、王都にある魔法学校で使い方を教えているそうですよ、ただ学ぼうとする人は少ないようですが」


王都の魔法学校、以前ニツール村に来ていたアインさんのパーティにいたカレンさんが言ってたのを思い出し、アイテムボックスからキーホルダーを取り出す。


今のままではこれ以上に武器を強化する方法が思い浮かばない、

今以上に強い冒険者になるには武器の強化も必須だ。

武器作成なら他の人より上手くできると思うけど、それだけじゃいつか頭打ちすることが目に見えていた。

成長するには此処しかない、そう僕の鍛冶屋の血が騒いでいる。


「すいません、あまり土地勘がないのですが、王都ってここからどれくらいで着きますか?」


「そうですねぇ、私も実際に行ったことはないので、なんとも言えないですが、一月は最低でもかかると思いますよ、冒険者ギルドであればより詳しく聞けると思いますが・・・」


「ありがとうございます!」

そう言って、走って、店の奥にいる鍛冶場で店主を探す。


「店主さん!武器全部修理できました!ありがとうございます!ちょっと行きたいところできたので、今日は帰ります!」

鍛冶場に着くやいなや店主に対しての感謝を伝えてそのまま、店主からの言葉を待たずに店を出ていく。


「お、おう、ってもういねぇじゃねぇか、なんだ騒がしいやつだな」

店主がひとりごちるとロランドが現れる。


「リベック様、今よろしいでしょうか」


「おう、ロランドいい加減その堅苦しい口調どうにかならんか、まぁいい、どうした」


「口調は無理です、ビジネスマンですので、それよりリベック様に会わせろというお客様がいらっしゃるのですが、こちらにお通ししても宜しいでしょうか」


「ん?今日誰かくるって言ってたか?」


「いえ、アポイントは無いようなのですが、どうしてもと言われまして」


「ふむ、まぁ作業もキリがいいし、いいぜ、呼んできてくれ」

ロランドが店先に戻り、客人を呼びにいく。


少ししてから「こんにちわー!いきなりなんだけどちょっと聞きたいことあるんだよー!」と元気な少女の声が聞こえる。



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