目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第五十四話

宿屋に入るとカティさんがこちらに気付き少し口元が緩んだような気がしたが、

すぐにいつもの無表情に戻った。


「おかえりなさいませ、無事帰ってきて頂き、ホッとしました」

そういうと相変わらずの丁寧なお辞儀をする。


「お二人ともお疲れだとは存じますが、店主へ報告へ行かせていただいてもよろしいでしょうか?」


「全然大丈夫ですよ!今日はもう部屋でのんびり過ごすつもりなので用事も無いですし」


「ありがとうございます」カティさんはそういって頭を下げ、厨房にいる店主へ報告へ向かった。


厨房の入り口に注目して2分ほどで厨房の入り口から店主の握り拳が出てきた。

手の甲を上に向けていた拳を手の甲が下になるようにくるっと回して、

そのまま勢いよく上に上げ拳を解くと紙吹雪がパラパラと舞っていた。


そしてカティさんが出てきて、「店主もアルージェ様が戻られたこと喜んでいるようです」


「ありがとうございます!」

アルージェは厨房の方へ叫ぶと、

いつも通り、拳を作り、親指だけ上げてそのまま戻っていった。


カティさんは店主が出した紙吹雪を箒で履きちりとりに集めて

ゴミ箱に入れて入れてすぐこちらに戻ってきた。


「では、こちらお部屋の鍵でございます、お部屋は綺麗にはさせていたきましたが、荷物などはそのままにしております」

そういい部屋の鍵を渡してくれる。


「では、ごゆっくり」


「はい!行こ!ルーネ!」

「バウッ!」


その日は疲れていたので、ルーネと一緒にダラダラと過ごして1日が終わった。


——————————————————————————————



翌日もルーネとダラダラ過ごそうかと思ったが、

手持ちの武器が全部傷んでいたことを思い出した。


「ルーネ!武器の補修しないと!」


ルーネを撫でていたが急に立ち上がったのでルーネは「ワウッ!?」と驚き、立ち上がり

アルージェを前足でガシガシと攻撃する。


「あぁ、驚かせちゃって、ごめんよ」

そういって、アイテムボックスの中を確認する。


「やっぱり、ほとんど傷んでるや」

アイテムボックスからひょいひょいと部屋の中に武器を出していき、

グレンデが誕生日に作ってくれた武器とシェリーの為に作られた武器を取り出し武器の状態を確認する。


「やっぱり師匠はすごいや、ミスティさんの触手あんだけ切ったのに、ほとんど傷んで無い」


色々なかくどから武器を眺める。


「ここまで実用性があるのに、作りも繊細で、芸術的価値もありそうだもんね、どこまで高みに上がればここまでのものを作れるんだろ、自信なくなっちゃうよ」

ため息をつくとルーネが武器を踏まないように近づいてきて頬をペロリと舐める。


「んー?慰めてくれてるの?ありがとね」

ルーネの頭を撫でる。


「さて、落ち込んでないで僕も師匠に追いつくためにまずは補修作業しに行こうかな!前、短剣作らせてもらった鍛冶屋さん今日空いてるかなぁ、まぁ行ったらわかるか、ルーネはどうする?」

念のためルーネに確認取るが、どうやら疲労もかいふくして元気みたいだ

「バウッ!」と元気よく返事して、扉の方へ向かう。


「よっしゃあ!師匠に追いつくぞぉ!!!」


そんな風に思っていた時期もありました。



どうしてでしょう、鍛冶屋さんってそんな簡単に無くなるんでしょうか。




前にきてから一月位しか経って無いと思うんですよね、

何故か店がないんです。

えぇ、そうです、一月前には確かに此処にあった鍛冶屋が無くなってるんです。


「ルーネ、この町には鍛冶屋って需要ないのかな・・・・??」

「クゥン・・・・」

ルーネも悲しそうな声を出す。


「まだ若いのにそんなところで膝なんてついてどうしたのよ」

通りかかった近所のおばさまが不憫に思い話しかけてきてくれた。


「いえ、少し鍛冶屋の在り方について考えていただけです、すいません」


はぁ、とため息をつき念のため

「一月くらい前に此処に鍛冶屋あったんですけど知らないですか?」

と確認する。


「あぁ、確かにあったよ」


「やっぱりありましたよねぇ!僕の記憶が間違ってるのかと思いました」


「私も知人から聞いただけなんだけどねぇ、売ってた武器がたまたま武器の修理に来た騎士様の目に止まって、そのまま王様の元に話がいって、お店自体を表通りに移動したらしいわよ、信じられないでしょ、まぁあくまでも噂だからねぇ、確かに最近表通りの方に新しく鍛冶屋が出来たのよねぇ、私鍛冶屋に用なんてないから中に入ったことないし、どんな人がやってたかも知らないんだけどねぇ」


「えぇ私は騎士団じゃなくて、有名な冒険者って聞きましたよー」

そういい近所の奥様が話に入ってきた。


「えぇそうなのー!有名な王様へ面識がある冒険者なんだったら相当ランクが高そうねぇ、それにきっとかなり顔がいいんじゃないのぉ、やだぁ」


それから別の奥様も話に入ってきて、井戸端会議になっていた、

会話の中でちょくちょく話を振られるので、抜け出すタイミングを失ってしまった。

完全にやっちまったぜ。


「そうそうそれでねぇ・・・・・・・・・・・・・・あらやだ、もうこんな時間じゃない、もう嫌ねぇ家に帰って亭主のために料理作らないとダメだわ」

そういうとそそくさと家におばさまは帰って行った。


鍛冶屋の話を聞きたかっただけなのに、その後も話は続いて近所に引っ越してきた若い夫婦の夜がすごいってところまで話が飛んで、もう中のほう何の話してたかも覚えてないです。


「ま、まぁ表通りにできた鍛冶屋ってのが気になるし行こうか」

ルーネの方を見ると話に飽きて丸まって寝ていた。


「ちょっと!ルーネ起きて!」

体をユサユサと揺らすと、もう終わった?と顔を上げあくびをして立ち上がる。


「表通りの方に新しい鍛冶屋ができたんだってさ、そっちに行ってみよう」

「アァァウ」

ルーネはあくびをしながら返事をしたので、変な声で返事が帰ってきた。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?