後ろで大きな音が鳴りアルージェは振り向く。
「さっきの音はなんだ?ルーネは・・・・・・」
アルージェは目を瞑り、ルーネの気配を探す。
「いつもより、存在感がないけどルーネの存在は感じるから大丈夫だろう、それよりも僕は」
前を向きピラミッドの頂上にあるであろう光の柱を目指すために走り出す。
光の柱にたどり着くとミスティが手を広げて、
「ようやく、ようやくだ」と呟いているのが聞こえた。
アルージェは止めるようにお願いするために近づいていくと光の柱の中に一冊の本が浮いているのが見えた。
何かとは思ったが、そんなことよりこの光の柱を止めないとという気持ちが強く。
ミスティに声をかける。
腰に携えている剣を抜き、
「ミスティさん、光の柱を止めてください」と声をかける。
ミスティは振り向き、あの悲しげな目でアルージェを向け
「誰かと思えば、あの優しい少年か」といい周りをみる。
「メイドが居ただろう、どうした?」
どうやらメイドを探していたようだ、
「メイドならルーネに任せたので僕は知りません、とりあえず、光の柱を止めてもらえないですか?」
「殺したのか?」
ミスティから強い殺気が放たれる。
悲しく、全てを拒絶するような鋭さのあった
負けじと今の状況を説明する。
「ルーネは人を殺すような子じゃないですだから生きてると思います、それより近くの村では地震が起きたせいで、村の畑などはほぼ壊滅状態で、きっと門や村の囲いは地震を想定していないので弱くなっていると考えられます、そこに地震で慌てた魔物が攻めてきたら大変なことになります、光の柱、止めてください」
メイドの死んでいないことに少しホッとした表情をしたが、また無表情に戻り、
「止めることは絶対にない」
その言葉に強い意志を感じる。
「ミスティさんは辺境伯の娘さんなんですよね、領民のことを思うのも「私を悪魔呼ばわりした領民など知ったことか!!!」」
アルージェが全て言い切る前にミスティが叫ぶ。
「この世界に未練など無い、剣を抜いているのだ止めたければ力づくで止めればいい」
ミスティは懐から不気味な雰囲気の短剣を取り出し、構える。
刀身は黒で刃は鮮やかなライムグリーンで柄には不気味さを際立たせる深い赤色の小さな宝玉がはまっている。
短剣を直視したアルージェは発狂しそうになったがなんとか踏みとどまる。
(なんだ、あの禍々しい短剣は、素材は何だ?全くわからない)
直感だがあの短剣は絶対危険だと脳内で警鐘が鳴り響く。
「少年、私には夢があるから光の柱を起こした、もう後には戻れない」
ミスティの体が揺れる。
そして、アルージェの認識から外れ、突然目の前に現れ、アルージェに蹴りをいれる。
蹴り自体に大して威力はなかったが、速さに驚く。
「なっ!?」
不意な一撃に尻餅をついていたアルージェに短剣を向けて
「止めたくば、本気で止めに来い少年」
こちらに向けられて短剣を剣で弾き、ゆっくりと立ち上がり「殺す気で来いと言うことですか」と確認をするがミスティからの反応はない。
「僕は村の人達を守りたいです、あの優しい人達が蹂躙されていいとは思わない、だけどミスティさんを殺す気もない、けど絶対止めさせてもらいます」
アルージェは剣を強く握り、久々の強敵に武者震いをして、ニィと口元を緩める。
初めはただの貴族の娘さんだと思っていたが、もう油断はしない、初撃を蹴りではなく短剣で攻撃されていたら確実に死んでいた。
どんな過去があって何故この光の柱を発生させたのかは知らないけど、ただ、それをしなかったのはミスティさんもきっと本当は誰も殺したくなどないんだと、
そんな心が表れているんじゃないかと思った。
ミスティはただその様子を見ていたが、先ほどと同じ速さアルージェに切り掛かる。
アルージェはこの速度で来るとわかっていたので、ミスティから繰り出される攻撃全て剣を使い弾き返す。
ミスティは弾き返されることなど想定済みで、蹴り等の体術を織り交ぜてアルージェに隙を作らせるように動き、少しでも隙ができれば的確に短剣で急所を貫こうとする。
急所を狙えるほど近くまで寄られているのに剣を振るうのは悪手だ、アルージェも体術で応戦し、剣を使える距離まで距離を取ろうとするが、
そうはさせないとミスティはどんどん踏み込み攻撃を繰り出す。
ただ、何度もそんなことをしていたのでアルージェは攻撃速度に慣れて来る。
決して反応できない速度ではない。
先ほどまでは防戦一方だったが、
ミスティの蹴りをかわしてカウンターを入れて、剣を使える距離を取り、次はアルージェから仕掛ける。
ミスティはアルージェの攻撃をかわしたり、短剣を使い剣の軌道をずらすが、剣の距離だと、アルージェの方が上手だとミスティも焦りを覚える。
アルージェの剣での攻撃は確実に鋭くなっていきミスティの服を掠り始める。
アルージェは服を掠ったことにこの距離なら押し切れると判断し、さらに手数を増やす。
ミスティはなんとか応戦するが、手数が増えて反応が徐々に鈍る。
ここだとアルージェは距離を詰める。
「しまっ!」
アルージェから渾身の体当たりをくらいミスティは尻餅をつく、
顔を上げるとアルージェが剣をミスティに向けている。
「僕の勝ちです、もう抵抗しないでください」そこで区切り
「僕はミスティさんを殺したくないです!」と必死に訴えるが、ミスティの口は笑っていた。
「少年がこんなに強いとは思ってもいなかった、私は本当にこの世界に嫌われているのだな」
そういうと短剣が強く光りを放つ。
アルージェは阻止しなければならないと分かっていたが、反応が遅れた。
「